第二十二話「届いた」
「っぶない!!」
足を止めて後方に飛ぶ。
それと同時に大蛇の口が閉じる。
(落ち着け!落ち着け落ち着け落ち着け!!)
大蛇は首を持ち上げ、元いた位置に戻る。
尻尾でもあり大蛇でもある。
それは大きな脅威になる。
(焦りはよくない、今ので死んでた...くそ...)
平静を保ち、冷静に状況を整理する。
キングは訝しげにこちらを見る。
弱者だったものに傷をつけられた。
それがこいつにとっては不思議でならない。
(この剣なら切れる、そしてスキルも発動している)
幾度となく見えた死の未来。
今にも何かを戻しそうな気分だが、
それは勝った後でいくらでも戻してやる。
見て、避けて、見て、避けて、見て、避ける。
確かに戦えている。否、戦いではない。
ただの時間稼ぎにしかなっていない。
(一撃くらい喰らわさないと、2人のために...)
前を向く、決意に満ちた目で。
(自分を信じろ、俺はソラだ。前を向け、前進しろ)
剣を構え、キングに向かって走り出す。
キングは口を大きく開き、ソラの方を向く。
口の前に赤い光が集まり始める。
その光は徐々に形を成し、一つの炎と変わる。
「!」
(魔法か!)
一塊の炎は、走り出したソラに向かって飛んでいく。
だが、
ソラは止まらない。
炎の中に突進していく。
ギャギャギャ!!
血迷ったかと言わんばかりにキングは笑い出す。
「熱い!!」
ギャ?!
キングの笑いと裏腹にソラは炎の中から飛びだす。
服の一部は焦げているがソラの体に異変はない。
燃えた体は急速に治りきっていた。
(よし、未来が見えないってことは死なない!)
意表を突かれたキングは慌てて体勢を整え直す。
ソラはキングの右側に向かって一歩踏み出す。
未来。
腕の振り抜きにより身体の大部分損傷、死亡。
体を捻り左に向き直し二歩踏み出す。
未来。
大蛇に噛み砕かれ死亡。
(!)
未来を見ても、ソラは向きを変えず左に抜ける。
剣を構え、未来で見た位置に置くイメージ。
大蛇が首を伸ばし噛みつきに来る場所へ。
位置が来る。その時へ。
ザシュッ
「よし!」
大蛇の首を刎ねる。否、刎ねられに来た。
未来で見た蛇の動きに合わせ剣を構えたことで、
蛇の首を刎ねることに成功する。
ギャァァァ!!!
キングが叫び声を上げる。
独立して動いていたとは言え己の尾。
痛覚はあるのだろう。
(未来は変えられる!)
そのままソラはキングの背後に回り込む。
脳裏にゴルドの言葉がよぎる。
『戦いの時、敵に背後は見せるな。背後は常に守るべきものに向けておけ。』
向き直し、キングの背を見る。
(でかいな...でも、守るべき背してるゴルドよりは小さい。)
キングが振り向き出すより先にソラは駆ける。
二撃目を喰らわすために。
未来。
振り向きの裏拳で頭部破壊、死亡。
大勢は低く、足を狙う。
蛇の攻撃はもう無い。
「っら!!」
キングの右足を滑り込みながら切り掛かる。
低い大勢により切断まではいかないが、
切り傷を与え、行動阻害にはなるだろう。
「よし、?!」
だがそこで目の前が真っ暗になる。
息もし辛く感じる。
それもそのはずだった。
キングに頭部を掴まれていた。
「くそ!離せ!!離せ!!!!」
当然離すわけもなく。
ギチギチと締められる。
呼吸困難、視界不良。
どんな人間でもパニックに陥る。
(怖い!怖い!!!くそ!離せ!!)
振り回され、体が思うように動かない。
周りが見えるようになった時には投げられている。
地面に落ちる時、頭を打ち流血。
「........」
意識はあるが、体が動かない。
頭に入るダメージは想像以上だ。
傷が治ろうと、脳の揺れは治らない。
未来。
頭部を踏みつけられ、死亡。
(ここ....まで.......か)
その時だった。
「よぉ、よく時間を稼いだじゃねぇか。」
聞き覚えのある声が聞こえた。
知ってる手が、ソラの肩を掴んだ。
(間に合った...)
「おまたせ!!あとは任せて!」
落ちてゆく瞼の隙間から。
赤い髪が走っていくのが見えた。
そこで、意識は消えた。




