第十八話「始まる」
東、日差しのよく当たる畑。
収穫間際の作物たちが踏み荒らされる。
「おー、きたきた!」
大剣を担ぎ、大軍の前に立つ男が1人。
「街には一体も入れさせねぇぞ。」
ゴブリンの軍隊は100を簡単に越すほどの数。
だがその数には物怖じしない。
まさに一触即発の空気。
「こい!!!」
ゴルドの一声に気圧されたのか、ゴブリンは一歩も動かない。だが一歩も引かない。
しかし、一体として攻撃を仕掛けるものはいない。
(....あぁ?...こねぇな...こないなら、こっちの分析の時間だ)
警戒は怠らず軍隊を一体一体注意深く見る。
(ノーマルが大半だが、アーチャー...マジックもちらほらいやがるな....)
落ち着いて戦力を図り、戦略を立てる。
だが彼の戦い方は戦略なんて必要ないのである。
(いったいいくつ群れを取り込んでやがる...ロードが5体はいるな....キングは....西か...?)
西、農作業の途中での避難で農具が残っている。
農作物の無い畑の上に東同様の軍隊が立つ。
「.....なんで来ないの?」
さらに東と同じく、ゴブリンたちは一歩も動かない。
もちろんゴルドと違いエキナは声を荒げていない。
(....キングもいないし....どういうこと?東?)
東西ともに戦線硬直。
当然、どちらにもキングの姿はない。
現在に戻る
「なんで...あいつが...ここに.....」
割れた空間から現れた者。
まさに王、故にキング。
ギャオオオオオ!!!!
雄叫びをあげる。
「耳がッ...割れるッ‼︎」
避難途中の人々にも混乱と狂気が満ちる。
それを見てキングは笑みを浮かべる。
(ぐっ...いや、俺の仕事は....避難...誘導!)
自分の役目を思い出す。
恐怖に震える体を無理やり動かし、
「みなさん!!落ち着いてください!!!」
キングの咆哮よりも大きい声を出すつもりで、
皆に呼びかける。
「みなさんは別の道から避難所へ!僕はあいつの足止めをします!!小さいお子さんがいる方は抱えて!落ち着いて行動してください!!!」
ソラの呼びかけに少なくとも落ち着きを取り戻した人達がさらに周囲の人々を落ち着かせ、移動を始める。
「よし....死ぬ気でやろう....」
向き直し、キングと相対する。
お守り程度に持っていた剣を抜き構える。
「2人が...いや、2人には頼れない。これは俺の仕事だ。」
覚悟を決めろ。これは戦いだ。
同時刻、東西に分かれた2人。
ギャオオオオオ!!!!
雄叫びが轟く。その声が届いた時。
ゴブリンの軍隊が呼応する。
ギャァァ!!
グァァァァ!!
「「!!」」
ゴルドは目を見開き、エキナの表情が変わる。
そして、ゴブリン達が一斉に攻撃を始める。
走り出す者、矢を番える者、詠唱を始める者。
「いいじゃねぇか!なんだか知らねぇが相手してやる!!!」
ゴルドは豪快に笑い、大剣を振り上げる。
「今の雄叫びは?!まさか、キング!!でも、まずはこれを!!」
エキナも目の前の軍勢へ向き直る。
考えは違えど『街を守る』その気持ちは同じ。
三者三様の黄凰防衛戦が始まる。




