表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
14/32

第十四話「王」

 朝だった。


 最近は早くに起きてしまう。


 理由は簡単だ。

 夢を見るから。


「……」


 天井を見上げる。


 また見た。

 燃える街。

 悲鳴。

 血。

 そして大量のゴブリン。


 内容は同じだった。


 だが少し違う。


 前は逃げるだけだった。

 今回は剣を持って戦っていた。


 人を助けていた。

 それでも最後は死んだ。


「嫌な夢だな……」


 小さく呟き、ベッドから降りる。

 顔を洗い、着替えを済ませて食堂へ向かった。


 食堂には既にエキナとゴルドがいた。


 エキナはパンを頬張っている。

 ゴルドは朝から肉の塊を食べていた。


 相変わらずだ。


「おはよう」


「おはよー」


「おう!」


 席に座る。

 スープを一口飲む。

 温かい。

 それだけで少しだけ気持ちが落ち着いた。


「また夢?」


 エキナが聞いた。

 最近は隠していない。


 何度も見ているからだ。


「あぁ」


 頷く。


「またかぁ……」


「今度はどうだった?」


 ゴルドが聞く。

 俺は少し考えた。


「内容が変わった」


 二人が顔を上げる。


「変わった?」


「前は逃げて死ぬだけだった」


 スープを見つめる。

 夢の光景が頭を過る。


「今回は剣を持って戦ってた」


「戦ってた?」


「あぁ」


 エキナが少し驚いた顔をした。


「人も助けてた」


「へぇ」


「でも結局死んだ」


 静かになる。


 重い空気ではない。


 ただ考えている。


 そんな沈黙だった。


「夢の中の魔物は?」


 ゴルドが聞く。


「多かった」


 即答だった。


「森で見たゴブリンなんて比べ物にならない」


 思い出すだけで寒気がする。


「街中が埋まるくらい」


「……」


 ゴルドが腕を組んだ。


「なぁ」


 ぽつりと呟く。


「最近の話と少し似てるな」


「最近の話?」


 俺が聞く。


 エキナも首を傾げた。


 ゴルドは少し考えてから言った。


「魔物だ」


 食堂の空気が変わる。


「増えてるんだろ?」


「あぁ」


「それにゴブリンも消えてる」


 それはこの前聞いた話だった。


 巣にいるはずのゴブリンがいない。


 数だけが減っている。


「……」


 ゴルドはしばらく黙り込む。


 そして。


「ゴブリンキングかもしれねぇな」


 その言葉に。

 エキナが勢いよく立ち上がった。


「まさか!」


 椅子がガタッと鳴る。


「そんなの本当にいるの!?」


「俺も見たことはねぇ」


 ゴルドが答える。


「だが話だけは聞いたことがある」


 俺は二人を見た。


 話についていけない。


「なんだそれ」


 エキナも座り直した。

 表情は真面目だ。


 ゴルドは腕を組んだまま話し始める。


「ゴブリンロードってのは知ってるな?」


「あぁ」


 群れを率いる上位種だ。

 本にも載っていた。


「だがさらに上がいるって話だ」


「上?」


「王だ」


 短い言葉だった。

 だが妙に重かった。


「ゴブリンキング」


 ゴルドが続ける。


「生まれながらにして全てのゴブリンを従える個体」


「全て?」


「全部だ」


 食堂が静かになる。


「群れの垣根も関係ねぇ」


「縄張りも関係ねぇ」


「王が現れれば集まる」


 その言葉に。

 ふと森の話を思い出した。


 ゴブリンが消えた。

 巣からいなくなった。


 それがもし。

 集まっているだけだとしたら。


「……」


 嫌な想像だった。


 エキナも同じことを考えたのか顔をしかめている。


「でもそんなの伝承みたいな話じゃん」


「そうだ」


 ゴルドは頷く。


「だから外れててほしい」


 本心だった。


 それが伝わってくる。


「だが説明はつく」


 窓の外を見る。

 朝の街は平和だった。


 商人が店を開き。

 子供達が走り回っている。

 何も起きていない。


 だからこそ。

 余計に不安になる。


「確認してくる」


 ゴルドが立ち上がった。


 するとエキナも立つ。


「私が行く」


「ん?」


「足跡追ったり調べたりするなら私の方が得意だよ」


 ゴルドは数秒考えた。

 それから笑う。


「違ぇねぇ」


「でしょ?」


 胸を張るエキナ。


「気を付けろよ」


「任せて!」


 そう言うとエキナは食事をかき込んだ。

 急いで準備するつもりらしい。


 俺はその様子を見ながら窓の外へ目を向けた。

 平和な街だった。


 夢とは違う。


 燃えてもいない。

 悲鳴もない。


 それなのに。


 胸の奥に残る嫌な感覚だけは消えなかった。

 もし本当にゴブリンキングがいるのなら。


 もし夢が現実になるのなら。


 この平和は。


 いつまで続くのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最新話まで一気に読み進めました 悪夢に変化が表れて何かが変わり始めているのがドキドキしますね…… ラストの「この平和はいつまで続くのだろうか。」が意味深すぎる…… ☆とブクマも入れさせていただきました…
スラスラ頭に入るほど読みやすくて一気読みしてしまいました。悪夢を見て強くなろうと努力する主人公が素敵です。記憶喪失の主人公が何者なのか気になります。 それと一括字下げ機能があるのでそちらを使うと読みや…
結局一気に最新話まで読んでしまいました(-_-;)ブックマークして新しい話が投稿されるのを心待ちにさせてもらいます。この夢がどのように絡んてくるのか早く知りたいです。あと、評価も入れておきますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ