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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第十三話「変わる」

「くそ!数が多い!!」


 剣を振る。

 血が飛ぶ。

 目の前のゴブリンが崩れ落ちる。


 だが終わらない。


 次が来る。

 その次も。

 そのまた次も。


 広場へ続く道は魔物で埋め尽くされていた。


 息を吸う。

 肺が痛い。

 熱い。

 街中が燃えている。


 崩れた民家から火の粉が舞い上がり、焦げ臭い煙が空を覆っていた。


 耳を塞ぎたくなる。

 悲鳴が、泣き声が、助けを求める声が。


 聞こえる。


「ソラ!!」


 聞き慣れた声。


 振り返る。


 エキナだった。


 服はボロボロ。

 肩から血を流している。

 それでも剣を握っていた。


「後ろ!」


「っ!」


 反射的に身を屈める。

 頭上を石が通過した。


 そのまま振り抜き、踏み込む。


 石を投げたゴブリンの胸を切り裂く。


「ありがとう!」


「お礼は後!」


 エキナが笑う。


 こんな状況なのに。

 それでも笑っている。


 だから。


 まだ大丈夫だと思ってしまう。


 まだ終わっていないと。


「ギギィ!!」


 ゴブリンが飛び掛かってくる。


 一体。


 二体。


 三体。


 振る。


 受ける。


 弾く。


 切る。


 苦しい。


 腕が重い。


 それでも訓練した。

 ゴルドに叩き込まれた。

 何度も何度も木剣を振った。


 だから戦える。


 少なくとも逃げるだけじゃない。


「はぁっ!!」


 振り下ろす。

 ゴブリンが倒れる。


 広場の端で子供が泣いていた。


 魔物が近付いている。

 考えるより先に体が動いた。


「こっちだ!!」


 駆け出し、間に割って入る。


 ゴブリンは跳躍し飛びかかってくる。

 剣で受け、壁に蹴り飛ばす。


 強い衝撃を受けてぐったりと倒れた隙に。


「早く逃げろ!」


 子供に逃げるよう促す。


 生きている。

 助けられた。


 前はできなかった。

 なのに今回はできた。


「がはははは!!」


 豪快な笑い声が響く。


 ゴルドだ。


 巨大な剣が唸る。

 ゴブリンがまとめて吹き飛ぶ。


「やるじゃねぇかソラ!」


「ゴルド!」


「死ぬなよぉ!!」


「そっちこそ!」


 思わず笑う。

 こんな状況なのに。

 だが不思議と安心した。


 ゴルドがいる。


 エキナがいる。


 ならきっと大丈夫だ。


 そう思った。

 その瞬間だった。


 ドォンッ!!


 地面が揺れた。


 いや。

 揺れたなんてものじゃない。


 何かが落ちた。


 そう思うほどの衝撃。


 誰もが動きを止める。


 ゴブリンですら。


「……なんだ」


 視線が広場の中央へ向く。


 そこにいた。


 見上げるほど大きなゴブリン。

 普通じゃない。


 そんなことは一目で分かった。


 額には赤い宝石。

 全身には派手な装飾品。

 肩には丸太のような棍棒。


 そして。


 周囲のゴブリン達がそいつを見ていた。


 崇めるように。

 恐れるように。


 まるで。


 王を見るみたいに。


「なんだよ……」


 嫌な汗が流れる。

 本能が叫んでいる。


 逃げろと。


 近付くなと。


 関わるなと。


「……」


 そいつが動く。


 ただ一歩。

 前へ出ただけ。


 それだけなのに空気が変わった。


 重い。


 息がしづらい。

 足が震える。


「ゴルド……」


「見りゃ分かる」


 ゴルドが剣を握り直す。


 笑っていない。


 初めて見る顔だった。


「エキナ」


「うん」


 エキナも真剣な顔をしている。


「ソラ」


 呼ばれる。


 振り向く。


「無理だと思ったら逃げて」


「……」


 返事ができない。


 逃げる?

 誰を置いて?

 この街を?

 二人を?


 できるわけがない。


「行くぞ」


 ゴルドが言う。


 地面を蹴る。

 エキナが続く。


 ソラも走る。


 三人で同時に飛び出した。


「おおおおおっ!!」


 ゴルドの剣が振り下ろされる。


 エキナの剣が閃く。


 ソラも横から切り込む。


 完璧だった。

 そう思った。


 だが。


 見えない。

 何が起きたか分からない。

 気付けばゴルドが吹き飛んでいた。


 建物へ叩きつけられる。

 エキナも弾かれる。


 石畳を転がる。


「は……?」


 理解できない。


 強いとかじゃない。


 そんな次元じゃない。


「ソラ!!」


 エキナの叫び声。

 視界が真っ黒になる。


 巨大な棍棒。


 避ける。


 間に合わない。


 考えるより先に体が動く。

 地面を転がるようにかろうじて避けれた。


 石畳が砕ける。


 さっきまで立っていた場所が消し飛んだ。

 冷や汗が流れる。


 今ので死んでいた。

 確実に。


「くそぉぉぉ!!」


 叫ぶ。


 恐怖を振り払うように。


 走る。


「ソラ!!待って!!」


 剣を握る。


 振る。


 届く。

 そう思った。


 だが。


 硬い。浅い。

 血は出た。


 なのに、

 そいつは何も感じていなかった。


 まるで虫に刺されたみたいに。


「嘘だろ……」


 心が折れそうになる。


 それでも戦う。戦うしかない。

 守りたい。助けたい。

 生きてほしい。


 だから。


 だから――


 巨大な影が目の前を覆った。


 見上げる。

 赤い宝石。

 振り下ろされる棍棒。


 避けられない。

 間に合わない。

 死ぬ。


 そう思った瞬間。


 世界が砕けた。


「っ!!」


 飛び起きる。

 荒い呼吸。


 汗で服が張り付いている。


 心臓がうるさい。

 窓の外から朝日が差し込んでいた。


 見慣れた部屋。

 聞こえる鳥の鳴き声。


 平和な朝。


 夢だ。

 また。

 あの夢だ。


「はぁ……はぁ……」


 だが同じ夢ではなかった。


「似てる....でも...変わった?...」


 なんの意味を示すのか。

 何が起こって変わったのか。


 今はわからない事柄だけど、

 剣を持って戦っていた。

 少ないけれど救ってた。


 これは、大きな意味を持つ。

 そんな気がした。


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