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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第十二話「見えたものと見えないもの」

「構えろ」


 訓練場に響くゴルドの声。


 俺は木剣を握り直した。


「こうか?」


「違う」


 即答だった。


「脇が甘ぇ」


「わからん」


「そこを覚えるのが訓練だ!」


 がはははは!


 朝から元気すぎる。


 俺は小さくため息を吐いた。


 騎士団支部の裏手にある訓練場。


 今日は朝から剣の訓練だった。


 理由は単純。


 夢だ。


 あの悪夢が頭から離れない。


 だから何か起きた時のために最低限戦えるようになりたい。


 そう思った。


 そして今。


 木剣を持ってボコボコにされている。


「来い!」


「おう!」


 地面を蹴る。


 木剣を振る。


 だが。


 ガンッ!


「うおっ!?」


 一瞬で弾かれた。


 体勢が崩れる。


 そのまま木剣が首元に止まった。


「死んだな」


「早すぎるだろ!」


「遅いんだお前が!」


 ぐうの音も出ない。


 ゴルドは木剣を肩に担ぐ。


「剣は振るだけじゃねぇ」


「……」


「足」


 俺を見る。


「目」


 木剣を向ける。


「呼吸」


 そして笑った。


「全部だ」


 なるほど。


 わからん。


「顔に出てるぞ」


「だってわからんし」


「がははは!」


 豪快な笑い声。


 すると横から声が飛んできた。


「頑張れー」


 エキナだった。


 木箱に座りながら見学している。


 完全に他人事である。


「お前も来い」


「やだ」


 即答だった。


「今日はお休みー」


「ずるくないか」


「訓練は見てるだけでも勉強になるんだよ?」


 絶対適当だ。


 ⸻


 それから一時間ほど。


 結果だけ言う。


 ボロボロだった。


「ふぅ……」


 木陰へ座り込む。


 腕が重い。


 足も重い。


 ゴルドは平然としていた。


 化け物か。


「ほれ」


 エキナが水を差し出してくる。


「ありがと」


 受け取って一気に飲む。


 生き返る。


「しかし急だったな」


 ゴルドが近くへ腰を下ろした。


「急?」


「訓練だよ」


 あぁ。


「まぁな」


 水筒を見つめる。


「夢のことか?」


 エキナが聞く。


「それもある」


 正確にはそれだけじゃない。


 少し迷った。


 だが話しておくべきな気もした。


「実はさ」


 二人がこちらを見る。


「夢以外にも気になってることがあるんだ」


 ⸻


 森でアーマードボアと戦った時の話をした。


 突進。


 死を覚悟した瞬間。


 その後に見えた光景。


「見えた?」


 エキナが首を傾げる。


「あぁ」


 俺は頷く。


「次にどう動くかが先に見えた気がした」


「気がした?」


「説明しづらいんだよ」


 言葉を探す。


「あらかじめ結果を知ってたみたいな感じだ」


 二人は黙って聞いていた。


「一回だけじゃない」


 俺は続ける。


「あの戦いで二回あった」


 偶然だと思っていた。


 ただの勘。


 運が良かっただけ。


 そう思っていた。


 だが。


 最近は違う気がしている。


 毎日見る夢。


 そしてあの感覚。


 全部が繋がっているような気がした。


「だから俺は」


 拳を握る。


「この夢、本当に起きるんじゃないかって思ってる」


 沈黙が落ちた。


 最初に口を開いたのはエキナだった。


「それってさ」


「ん?」


「スキルじゃない?」


 俺は瞬きをする。


「スキル?」


「うん」


 当然のように頷いた。


「未来を見るスキル」


「そんなのあるのか?」


 するとゴルドが腕を組む。


「あっても不思議じゃねぇな」


「本当に?」


「スキルなんざ何でもありだ」


 そう言われれば確かにそうだ。


 エキナのアクセルだって十分不思議である。


「速くなる奴もいる」


 ゴルドが指を折る。


「岩みてぇに硬くなるやつ」


「どこまでも遠くを見れるやつ」


「どんな怪我でも治しちまうやつ」


「色々だ」


「未来視があっても変じゃないってことか」


「おう」


 なるほど。


 確かに筋は通る。


 だが。


「でも証拠がない」


 俺は首を振った。


「夢だぞ?」


「まぁねぇ」


 エキナも苦笑する。


 未来を見ているのか。


 ただの悪夢なのか。


 今の段階では判断できない。


 すると。


 ゴルドが突然立ち上がった。


「なら試せばいい!」


「は?」


「未来視だろ?」


 当然のように言う。


「見えるなら避けられる!」


 意味はわかる。


「避けられるなら鍛えられる!」


 理屈もわかる。


「つまり訓練だ!」


 脳筋だった。


「結局それかよ」


「がはははは!」


 笑い飛ばされた。


 エキナまで納得した顔をしている。


「確かに」


「お前まで言うのか」


「だって見えるなら活かした方がいいじゃん」


 それはそうだ。


「本当に未来視ならだけどね」


「……」


 否定できない。


 でも。


 少しだけ気持ちは軽くなっていた。


 夢を見るたびに不安になっていた。


 何か起きる気がしていた。


 だが今は違う。


 もし本当に未来が見えているなら。


 何もできないわけじゃない。


 備えることができる。


「よし!」


 ゴルドが木剣を持ち上げる。


 嫌な予感がした。


「休憩終わりだ!」


 やっぱり。


「続きやるぞ!」


「今か?」


「今だ!」


「せめてあと五分」


「甘えるな!」


「横暴だろ!」


 エキナの笑い声が響く。


 空は青い。


 街も平和だ。


 夢の中のような地獄はどこにもない。


 だからこそ。


 俺は木剣を握り直した。


 何も起きないならそれでいい。


 でも。


 もし起きるなら。


 その時は――少しでも抗えるように。

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