報告
龍人と旭とジョージは『仄暗い野盗たちの楽園』に辿り着き、
野盗の王アイラに討伐報告する算段になった。
アイラは瓢箪型の部屋の奥、机の後ろの椅子に座っている。
「無事討伐したみたいだな」
「まあな、俺は何もしてないが」
龍人は大剣ヴォルファングを右手に、
肩に担ぎながら左の肘を曲げて左の手のひらを上に向け軽く上下させて
『何もしてないっす』とリアクションを交えて表現する。
「旭がやったのか」
やや驚いた声音でアイラが旭に訪ねる。
「まぁ、めちゃくちゃ強かったですけど、なんとか」
旭は左手で自身の頭を照れながら撫でる。
「…さすが脳筋の相棒といったところか」
アイラは座りながら少し肩を落として様々な感情が混じりながらそう言った。
「それよりアイラ、帰り際お前のところの赤髪巻き巻き跳ねっ返り女に絡まれたぞ、
しっかり教育しとけよな」
「赤髪で巻き巻き? …ああ、ローラか…、
まぁうちは組織を名乗ってはいるが、
動物を見つけたらアイテールに連れて行って保護する以外
あまりルールはないからな、
あるとすればローテーションを組んでいる見張りくらいなものだ。
ともかく野心を隠す気のないあいつだ、
お前を討ち取って名を挙げて次期トップにでもなろうと言う算段かな、
可愛いやつだな。はっはっはっ」
アイラは適当に笑う、
「笑いこっちゃねーぞ、まったく。襲われる身にもなれよ」
「で、殺ったのか?」
「いんや、『脳筋の恐ろしさ入門編』短期講座を強制的に受けさせといたよ」
「ふふふ、それは見たかったな、私もご教授願いたいくらいだ」
「まぁそれはもういいわ、それで最後に聞きたいことあるんだが」
「なんだ?」
「旭、」
「ああ、鍵ね、これなんですけど、心当たりありません?」
旭はからくりの鍵を取り出しアイラに手渡そうとしする、
「? 龍人がわからないことを私が知っているとは思えんがな」
アイラは旭からからくりの鍵を受け取る。
「鍵、か、…この世界にきて鍵なんてものは見たことがないがな、
『からくりの鍵』か…」
アイラは暫くからくりの鍵を眺め、口を開く、
「ノクティス、鍵に何か覚えはないか」
脳筋達の帰還を聞きつけ丁度歩いてきたノクティス・ディクタスにアイラが訪ねる、
「鍵…ですか…そうですね、そういえば、
ガルデアの塔の中腹の海側の地面に小さな穴がありましたね。
あれが鍵穴かと言われれば…いや記憶が確かではないですね申し訳ない」
「ガルデアの塔か…、十分すぎる情報だ、ありがとよノクティス、
だが普通そんなところまで地面見ないぞ、地面マニアか」
「いえ、この世界に来た頃はこのような世界にこれた嬉しさのあまり、
隅々まで目を凝らしてみていた時期がありまして、
いやぁまったく若気の至りでした、いや現世では戦争ばかりでしたからね、
この世界は意味タイマンですから。良い世界です。」
ノクティスは若干照れながら左手で自身の頭を撫でる、
「ノクティスは現代人じゃないのか?
(FF内から来たセフィ◯スみたいな髪型してコスプレなのかよ、
ってツッコみたい…)」
「まぁ適当に1000年から2000年の間と思ってください、個
人的にはあまり語ることでもないので」
「…なるほど、ともかく助かった、まぁまたなんかあったらよろしく頼むわ」
「はい、そうですね、役立ったなら光栄です」
「おまえに何かあってもしらんな、だが旭、
リベンジマッチならいつでも受けよう、時が経ったら来るといい」
「…それは、カオスアニマを賭けてってことですか?」
「……」
当たりが緊張感に包まれる、静寂、それはいやでも立ち込める、
「旭さん、それは、」
ノクティスが間に入ろうとするがアイラはそれを拒絶する。
「いい、…両方の意味だ、
勝つか負けるかギリギリの予感が出来たならこい、
少しは強くなったんだろうが、色んな意味でまだ私とやるには早い、
命は賭けて燃やそうとも時期を誤って適当に捨てるものではない」
「はい、その時は、よろしくお願いします。色々とありがとうございました、アイラさん」
旭は丁寧にお辞儀をする。
「じゃあな」
「アイラさらばだ」
龍人と龍人の左肩に乗るジョージもそれに合わせ龍人は左手、
ジョージは右の翼を上げてそう言った。
「ああ、ジョージ元気でな」
龍人達は去って行った。
野次馬の野盗達もそれぞれの想う場所へ散っていった。
残ったのはノクティスと、アイラ、
「…アイラさん」
ノクティスは心配そうにアイラに声を掛ける、
「…それも悪く無いと、思えてしまう今の自分が過去の私はきっと嫌いだよ」
そう言いながら目を瞑ったアイラ、
「……」
ノクティスは無言でアイラを見つめる、
「だが、負ける気はないさ」
アイラは笑う、その開いた眼光は、その笑みは凶悪、脳筋のそれに近い、
脳筋を想い、この2000年生きてきた生者、
野盗の王アイラ・ブルー・ノーズ、年数では測れない、
彼女の本当の実力を、まだ、誰も知らない。




