観察する2人の生者
「ちょっと、いいの? 龍人」
「ああ、いいだろ、BOSSとやれなかった気が紛れたし、サービスだ」
「ふ、ふざけないでですわッッ、
わたしはわたくしはッローラ・マルドゥクスなのですわッッ」
ローラ・マルドゥクスは槍に装備を変える。
そして『闇の衣の柱石』を使う、少し錯乱した様子だが、
腐ってもこの地獄テラ・グラウンドでおよそ百年以上生きる生者、
距離を詰め龍人を襲う、
「食らうがいいのですわッッローラ・マルドゥクス魂心の槍ッッッ」
「!?」
その間に旭が立ちはだかる、
「邪魔ですわっ朝凪 旭ッッ」
旭は低い姿勢から突き出された初撃の殺意の槍の上を
回るように左回転しながら躱す、
左足で着地した旭はそのままやりが引くのとほぼ同時に距離を詰める、
独自のモーションで繰り出されたロングソードは
ローラ・マルドゥクスの喉元で剣先を止める。
ローラの耳元に顔を持っていく旭、彼女は発言する。
「まだやる?」
「…ッッッ」
「『闇の衣の柱石』なんて生ぬるいよ、命を賭けて、カオスアニマを賭けて、戦おうよ」
「ッッッ」
その表情は本気、純度120%のローラの『馬鹿の勘』でわかるほどの本気、
「やめて、おきますわッッ…」
「懸命な判断ね、それじゃ」
「…イカれて、ますわ、あなた、
確か僅か一年も経ってないと聞いたことがありますッ」
「普通から見てイカれてなきゃ目指せ無いよ、『転生』なんて」
「私、本気なんだ」
旭は顔だけ発言中振り返りそう言い放つ、
ローラは槍を持つ手と反対側の左手を握り込む、痛いほどに、
屈辱、そして未熟さ、無知さに怒りを起こさざる得ない、
旭に、龍人に、自分自身に、唇を噛んで血すら流す、
そしてそれを遠目から眺める二人一組、アイテム『双眼鏡』、
アイテールについた時点でアイテムポケットに勝手に入っているアイテム、
遠くを観察するためのアイテムだが、
観光以外あまり使用しないアイテムでもある、
生者は皆平等に視力は高い上、
弓などの遠距離の場合同等の補助が入るのでモンスター相手なら使わない、
あまり使用されないため必要ないアイテムランキングベスト3に入るアイテムである。
一人は『フルフェイス野郎』イツキ・オーガである。
今はそのフルフェイスを透明にしているためその顔は隠されていない、
鎧も装備していない、
もう一人は長い黒髪の女性である。
「ひゅーやるねぇ、あの嬢ちゃんも、アイラとの戦いでもわかっちゃいたが、」
「私はアイラとの戦いは見れなかったけどあなたがそう言うなら厄介ね」
「ローラとその取り巻きは扱いやすくてありがたいぜ、
お陰でこうやってデータが取れる」
双眼鏡で眺めながら楽しそうに言うイツキ・オーガ、
「それにしても景邏、いいのか? あいつと敵対しても」
観察が終わったのか双眼鏡を外し、女性に視線をやる、
「…あの子はは強いわ、それに、あなたには私が必要でしょう?」
「そりゃそうだがよ、」
「運命には抗えないのよ、まさか死後こんな世界があって、
私は若返った姿でこの世界に来て、それもあなたと同時期に来た、
その運命に私は従うわ。」
「ちっそこで愛してるっとかねぇのかよ」
不満そうな顔でイツキ・オーガは舌打ちをしながらそう言った。
「あなたが特大なクソなのはあなたよりだいぶ長く生きて
十分に十二分に理解している、
体験も体感も客観的視点を得て観測すらしている、
そして、その部分に憧れもあったことも、
私とあなたは正反対、だから引き合う、私はそれでいいと思う」
「理屈屋の言うことはいまいちわかんねぇなぁ」
イツキ・オーガは右手で首筋を撫でながら
頭にクエスチョンマークを付けながら理屈屋はわからないと声音と言葉で言った、
「あなたが脳直すぎなんですよ。器用で悪知恵も働くのに、昔から」
「まぁともかくあれが龍人と旭ちゃんか、
底はまだ見れてねぇが、そこは調査を続けて、
ある程度想定して準備すればいいだろ、まぁゆっくり行こうや」
「はい、あなた、いやイツキ・オーガさん」
「…うるせっ」
一緒にいる女性に『あなた』と言われた人、
イツキ・オーガはにやけながら『うるせぇ』と楽しそうにその女性に言葉を投げた。




