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旭対獣の王



 『獣たちの怨嗟の魔境』後半、龍人と旭は突破していく、

 今戦っているのは『獣人魔獣 バーバリー』ヤギのような顔立ち、

 黒い瘴気の内側にあるのは茶色の毛、角は頭から2本くの字に伸びる立派な角、

 筋肉隆々で270センチはある巨体、

 大型のクラブを武器とする道中モンスター、

 過去には居なかったモンスター。それでも龍人も旭も対応し、攻略直前である。



「これでっ、終わりッッ」



 苦もなく旭は『獣人魔獣 バーバリー』2匹を討伐する。

 同時に龍人も『獣人魔獣 バーバリー』3匹を一掃する。

 そして辿り着くBOSSが待ち受ける部屋、白い霧、

 ここからでも感じるほどの、黒い瘴気が白い霧から溢れ出ているほどの、黒い瘴気、



「ここが、『獣たちの怨嗟の魔境』の最深部」



「ああ、くだんのカオスアニマを賭けて戦う、BOSSがいる」



「ジョージ、いいのか? お前もたぶん賭けることになるぞ」



「…構わない、私は知りたい、この『予感』の先を」



 龍人と旭と、そしてジョージはBOSSの部屋の前の霧に触れる、

 それは表示される。



〈このBOSSとの戦闘をするにはカオスアニマを賭ける必要があります〉

〈有資格者出ない場合はダメージを与えること、戦うことはできません、

 また戦闘中に帰還アイテム、帰還する飛鳥の羽を使うことはできません〉

〈以下のことを確認の上、戦いますか? YES/NO〉



 二人と一匹は迷いなく《YES》を選択する。



 その霧の果て、それは2000年前と変わらない、灰色の岩の地面、

 今にも溶岩が吹き出そうな赤と黄色の筋、三角錐のような岩のオブジェクト多数、



「龍人、私が、やっていいでしょ?」



「あっ? 遮断の指輪しろってか? どうしてだ」



「アイラさんも一人でやったんでしょ、なら私も一人でやらないと、

 もう一つくらい持ってるんでしょ」



 既にジョージは遮断の指輪を装備している、当然攻撃が向かないようにである。



「…まぁ持ってはいるが」



「それにヴァルディリス王のカオスアニマまで数えたなら、龍人のほうが多いでしょ」



 アイラへの対抗心、カオスアニマの数、旭の『勘』、龍人の『勘』、

 龍人は情報を整理し納得した顔で言う。



「……わかった、だが、俺の『予感』には、もうお前も含まれてる、

 こんなところでつまづくなよ」

「わかってる、でも、楽な戦いの『予感』はしてないから、

 …見てて欲しい、私の戦いを感じてて欲しい、それだけでもう少し頑張れるから」



「ああ、見てるよ、感じまくってる、色んな部分が、」



「…さいってぇ」



「緊張を解してやろうという俺の優しさだろうが、まぁともかく、旭、行って来い」



「旭、健闘を祈ります」



 旭は歩みを始める、あの日のアイラのように、

 装備はロングソード、そして鉄の小盾、このBOSSステージの中心に旭は到達する。



「!?」



 瘴気は集まる、それは顕現けんげんする、旭の眼前に、

 表示される名前は『淵獣王えんじゅうおうブラキエンド』

 

 『淵獣王ブラキグロウス』ではない、成長し、

 名前の通りの最終形態、その風体は多少の変化、

 四足獣、青黒い鎧と、薄青い肌、黄色い爪と角、

 肩口と肘の排気口のようなもの、変わった点は1つ、

 爪の大きさと刃のような尻尾が二本になっているという点である。

 黒い瘴気を纏い、瘴気の雷槌を最初から発生させている。



「「オオォォォォォォッッッ」」



 『淵獣王ブラキエンド』の咆哮は衝撃波を生み出し旭の栗色の髪の毛を後方に泳がせる



「ッッッ(すごい迫力)」



 淵獣王ブラキエンドはゆったりと旭を起点に右周りに歩く、

 4歩歩いたところで正面を向く、初撃、それは飛びつき攻撃、

 成長した爪の左右に連撃、一つ一つが瘴気の雷を込めた重く、速く、

 瘴気の雷が唸りを上げる攻撃、



「ッッッ(右っ左っ)」



 地面についた淵獣王ブラキエンドの左の爪は灰色の石の地面を掴み

 二本の尻尾の刃での攻撃体制に入る、地面をつかむ爪の先、左肩は前、

 その猛獣の左肩や腕の筋肉は瞬間的に膨れ上がる、



「ッッッ(ウソでしょっ)」



 次の瞬間旭は宙に舞っていた、痛みにまだ気づいていない、

 ただ、攻撃をもらったことだけはようやく認識した。



「がぁぁぁッッッ」



 旭は吹き飛び地面に叩きつけられる、



「ッッッ(あんなん初見殺しもいいところだ)」



「龍人、今のは、あまり良く見えなかったのだが」



「ああ、旭はもっと見えてなかっただろうな、

 左側の手でその反動に耐えれるだけの力を込め支えて、馬鹿げた筋力に物をいわせ しなった刃二本が気がついた時には同時に旭の身体に届いていた、来るのがわかっててもあそこまでのスピード、情報がなきゃどうしようもない、ありゃしょーがない、一発目は向こうの利、そういう攻撃だ。」



 淵獣王ブラキエンドは、攻撃をやめない、既に上空、

 回転斬りの反動で空高く舞い上がっている。空中回転尻尾の二連刃斬り、



「ッッッ」



 旭は倒れたまま横に転がって避ける、この攻撃はここまでがセット、

 無論無様に転がりながら躱さなければ攻撃は当たっていた。

 ダメージの後遺症で

 旭ですら人の所作で立ち上がることができないほどのダメージを追っていた。


 その二本の刃は地面を切り裂く、

 地面に這いつくばる旭はその衝撃音を間近で感じようやく旭は起き上がる、



「ふー、ふー、ふー(久しぶりの、命を賭けた戦い、私の望んだ戦いッ)」



 淵獣王ブラキエンドは口から瘴気の液体のようなものを旭と自身の間に吐き出す、

 それはまるで瘴気の壁、



「ッッッ(またッ尻尾??)」



 淵獣王ブラキエンドは右手で地面を掴み再びの回転尻尾切り、

 先程より距離のある攻撃、黒い瘴気を含んだ雷槌が視界を邪魔し、

 尻尾のリーチを伸ばし放たれる攻撃、それは高速、神速、

 しなりながら、突如迫る攻撃。同時に迫る二本の刃。


 その動きを旭は視覚で捉えることはできない、

 目の前は吐き出された瘴気の液体が地面から吹き出し

 即席の瘴気の壁になり続けるからである。

 だがブラキエンドの瞳がその瘴気の壁の先で

 赤く輝きを放ち続けているのは視認できる、



「(僅かに見える情報を感じろッ、音を、『感じ』を感じろッ、

 全てをもちいて恐怖を躱すッ)」



 闇の先にいるブラキエンドは瞳の色程度しか、僅かにしかわからない、

 旭はその場に留まる、移動しない、ただ、相手の攻撃に備える、



「ッッッ(今っ)」



 旭は回避に成功する、しかし表情に余裕はない、

 完全に回避に備え、全てを回避に賭けての成功、攻撃には移れない、

 それは彼女にとってもはや成功ではない。


 淵獣王ブラキエンドは肩口の排気口から、肘から瘴気の玉を作り出す、

 それを二本の尻尾でそれぞれ強打する、

 旭は淵獣王ブラキエンドに向かいながら瘴気の玉を躱しつつ前へ進む、

 間合いに入る寸前、淵獣王ブラキエンドは構える、それは回転尻尾切り、



「ッッッ(させぎるものがないなら、まだ余裕ッ食らっても意外性がないからッッ)」



 旭は回転尻尾切りを躱す、

 淵獣王ブラキエンドはその勢いそのままに高く飛び上がる、回転しながら、

 それは空中回転尻尾切り、速さと重さ、

 そして、地面に叩きつけられる尻尾の刃が奏でる音、衝撃、旭は躱す、

 それは攻撃のチャンス、



「シッッッ」



 ロングソードでの3連撃、旭は感触を知る、距離を取りつつ思考する、



「ふぅ…(こりゃ長くなりそう)」



 淵獣王ブラキエンドは口から瘴気のブレスを放つ、それ自体にダメージはない、



「(また、視界不良攻撃ッ)」



 あたり一面黒い瘴気に覆われる。頼れるのは『勘』と『音』、

 そして、眼光が発する赤い、いや紅い『瞳』、



「(いたっ)」



「「オオオォォォッッッ」」



 淵獣王ブラキエンドは吠える、

 再びその叫び声と衝撃波に似た何かが旭の髪をなびかせる、

 もはや、それは瘴気の中では視認することはほぼ困難な4本の爪から伸びる瘴気の剣、

 左右二本の初動が見えないの攻撃、



「ッッッ(見えるものは見える、それはもういい、

 大事なのは見えないモノを見えるように、感じられるように、

 求めること、求め続けることッ、僅かな兆しを見逃さないッッ)」



 立ち上がった淵獣王ブラキエンドの瘴気の剣、高速の連撃、

 二の腕と太ももは膨れ上がり、

 二本の尻尾は地面に突き刺さりバネの一分となる、背を反り、

 身体全てのバネを使用した、不可視の高速の、神速の連撃、

 例え視界良好だろうと初見ならば無条件でもらう、チート攻撃、

 カオスアニマを求める者への、試練、総てを掛けて、全てを賭けて、

 見えぬものも見えるものも掴みとる意志を確かめる試練。



「ッッッ(恐怖を、気配を、殺気を掴めッッッ)」



 旭はパリーを敢行する、しかし、それは成功しない、

 神速の二連撃、旭はダメージを追う、しかし、



「ギリッ」



 本来なら吹き飛ぶ、そういう攻撃、旭は踏み込む、強靭な意志力で、

 人としてのイメージ、所作と、この世界が起こす事象を捻じ曲げる、

 歯を食いしばりながら痛みを感じながらの一歩、

 力強く握りしめたロングソードの連撃、お返しと言わんばかりの二連撃、

 瘴気の霧が晴れ、単発の爪攻撃を躱しつつ旭は距離を取り、レピオス瓶での回復をする。



「ぷはぁっああぁッッッッいったいぃッッぃぃぃッ」



 旭は痛みを訴える、

 未だに残照として残る痛みを言葉にすることでごまかす、


 淵獣王ブラキエンドは、再び瘴気の霧を発生させる、

 それは、もう一度、視界不良の二連撃、



「ッッッ(いい、これくらいの無茶、ギリギリの成功と失敗の狭間、こいっ)」



 淵獣王ブラキエンドの瞳は紅く不気味に輝く、爪から伸びた瘴気の剣は放たれる、



「ッッッ(さっき知ったタイミング、そして恐怖を、気配を、殺気を掴めッッ)」



「ッッッがァァァァァッッ」



 旭は吹き飛ぶ、淵獣王ブラキエンドはまさかのフェイント攻撃を仕掛ける、

 確かに殺気は込められていた、旭はその気配が迫ることを確認していた。

 しかしそれは寸前で止まる、

 ゆえに旭の敢行したパリーは虚しく空を切る、

 そのパリーを出している間に、神速の二連撃が旭を襲ったのだ。

 まだ存在している瘴気の霧を吹き飛ぶことで離脱する。

 旭は当然地面に叩きつけられる。しかし旭は直ぐ立ち上がりアニマの雫を砕く。



「はぁっはぁっはぁっ(フェイント…独自…モーション、か、

 どおりでさっきより殺気が無かった、ギャクじゃないよ?))」



 独自モーション、それはほぼ現実と同じ、自身のステータス依存の攻撃、

 やや攻撃力は落ちるが、攻撃の単調さを無くす生者の特権、

 生者同士の戦いで主に使われる攻撃手段。

 しかし、淵獣王ブラキエンドは使った。

 雪原の果て、『腐り果てる前の亡者たちの箱庭』BOSSも

 独自モーション使用したが僅かであった。

 これはカオスアニマを賭けた戦い、『例外』ではないが、

 難易度は例外に等しい、ギャクを想う余裕がある旭も例外といえば例外、



「(こっちも独自モーションでやるしかない、

 通常モーションだろうと軌道を『なし』そらせば良いわけだし、

 だけどあのスピードは…どのみち簡単じゃない)」



 『往なし』

 

 通常モーションだろうと独自モーションだろうと、

 剣閃で攻撃を往なすことは可能、

 しかしそれは独自に行われる行為、失敗すればダメージを負い、

 下手をすれば連撃を貰いかねない、僅かなスタミナ消費を要する高等テクニック、



「ふぅぅぅぅぅっ……はぁぁぁぁぁぁっっ…ふぅぅぅぅぅ………」



 旭は深呼吸をする、それは『領域』に入りたい、彼女の意志、

 まだ入れたとしても僅かの、この世界が生む奇跡、

 名前のない第8魔術、己の存在を賭けて踏み込む生者の限界を引き出す領域。


 淵獣王ブラキエンドはそんな旭の準備が完遂するのを待つわけもなく攻撃は始まる。

 もはや隠す気はないのか、一度使い、

 なにかが解除されたかのように独特の感覚で爪の二連攻撃は起こる、旭は躱す、

 この程度なら彼女は躱せる、そして回転尻尾斬りからのジャンプ尻尾斬り攻撃、

 地上を這う回転尻尾切りは躱すが、

 その後の勢いを活かしたジャンプ尻尾切りは、真上からではない、軸が斜め、

 右斜め上からの回転尻尾切り、



「ッッッ」



 違う角度からの攻撃に驚きながらも躱す、

 そして出来た隙に攻撃、ロングソードの一撃、連撃ではない、

 もはやこのBOSSは何をしてくるかわからない。不用意な連撃は出来ない。


 淵獣王ブラキエンドは両方の爪から瘴気を伸ばし剣を作る、

 瘴気の霧を作らず攻撃は始まる、フェイントを織り交ぜながら始まる、



「ッッッ」



 旭はシステム回避行動では躱さない、上半身を反らしたり、かがんだり、

 もはやそれは、現実の実戦。



「(『領域』に、入れないっ、でもっやれるっ)」



「シッッ」



 旭のロングソードの攻撃が淵獣王ブラキエンドの巨躯を切り刻む、



「ガァァァァッッ」



 淵獣王ブラキエンドの攻撃を受けたことによる痛みの声と怯み、

 それを旭は見逃さない、ロングソードの3連撃、

 その攻撃の痛みを感じながら淵獣王ブラキエンドは瘴気の霧を作り出す。



「ッッッ(来るっ)」



 淵獣王ブラキエンドは移動する、直ぐには放たない、伺う、そして



「(どっち、僅かな違い、あるっ? わからない、フェイント? それともっ)」



「ッッッ(神速の攻撃なんて領域に入っても往なせるか、

 躱せるかどうかわからないッッ)」



 旭は目を閉じる、それはよくアニメなどである、

 心眼、荒唐無稽、あるのかもしれないし無いのかもしれない、



「(視覚情報を遮断して、耳と感触に神経を回す、

 ちょっと厨二っぽいけど、試してみる価値はある、

 どうせ今の体力なら死なない、やれることを試すだけ、

 さいってぇっ、笑っちゃうわ、本当にすっごい厨二的じゃないッ)」



 『淵獣王ブラキエンド』は踏み込む、その音は確実に知らせる、攻撃の合図、



「(恐怖の色でも匂いでも、なんでもいい、フェイントかそうでないか、

 どちらかわかる『なにか』)」



 『淵獣王ブラキエンド』は攻撃をためらう、この少女の異様さに、迷う。

 このBOSSも思考はする、違和感を感じる、恐怖を感じる、



「(これを知れたなら、届くはず、いや、背中が見えるはず、

 あいつの龍人の、背中程度は遠目に、この世界は、出来ない試練を用意しない、

 私は、それだけは確信がある、来なよ『淵獣王ブラキエンド』)」



 淵獣王ブラキエンドの攻撃は放たれる。二本の瘴気の剣は右から放たれた。



「ッッッ(って、わかるかァァァァァァッッッ)」



 旭はフェイントとして決め込み避ける、目を閉じたまま、

 適当なタイミングで、少し後ろに下がる、



「!?(フェイントだったッ)」



 風切り音が中途半端だったことでそれを判断する旭、



「ッッッ(2度目のフェイントはない、恐らく、そんな『感じ』がする)」



 襲いかかる左の瘴気の剣、全身の筋肉を膨れ上げさせ放つ高速の不可避の一撃、



「!?」



 返しの右の瘴気の剣、二つの攻撃をもらう、



 旭は吹き飛ぶ、笑いながら、吹き飛ぶ、彼女は地面を転がり、立ち上がる、その眼は、開く、



「……ふふふ」



 少女は、いや彼女は笑う、不敵に嗤う、



「(僅かだけど感じたよ、あんたの殺意の幅、)」



 旭は回復すらしない、ただ、立ち尽くす、

 もう一回打って来いと、

 ただ、小盾とロングソードを装備した両腕を構えることもなくただ、立ち尽くす、



「「オォォォォォォォォッッ」」



 淵獣王ブラキエンドは瘴気の霧を作り出す、旭の挑発に応える。

 そして瘴気の剣を作り直す、ありったけを込めて、

 それは先程よりも禍々しい瘴気、バチバチと瘴気の雷槌を纏う全力の瘴気の剣、

 旭は瘴気の霧を受け入れながら今度は瞳を開けたまま対応する、



「ッッッ(これはッッ間に合えッッ)」



 それは成される、初撃、フェイントではなかった一撃目、

 右の瘴気の剣の一撃、旭はこれをパリーする、

 尻餅をつく淵獣王ブラキエンド、当然の致命の一撃、



「「ゴアァァァァァァァッッ」」



 2.5倍の一撃、そのダメージによるBOSS悲鳴、

 『淵獣王ブラキエンド』は四本の足ではなく後ろ二本の足で立ち上がる、

 爪は既に瘴気の剣、こもる想いは怒り、そして僅かな恐怖、



「殺気を見極めるのは全然確実じゃない、なんどでも来てよッ」



「「オォォォォォォォッッッッ」」



 繰り返される瘴気の霧、もはや他の選択肢はない、意地、

 ここから幾度と無く繰り返される攻撃、失敗と成功を繰り返し、

 旭はその感覚を確実なものとしていく、

 龍人とジョージはただ黙ってその間瘴気の霧と旭とブラキエンドを見つめ続けた。


 しかし終わりは来る、淵獣王ブラキエンドの瘴気の剣の攻撃、左上からの打ち下ろし、



「ッッッそれはウソッ」



 移動しながら旭は言う、それはフェイクと、

 『淵獣王ブラキエンド』は右手の瘴気の剣を振るう、しかし、



「なるほどっ」



 それもフェイク、見破られる、完全に見切られている、戸惑い、

 BOSSにあるまじき行為、しかし、打てない、攻撃を放てない、



「どうしたのっ終わりっ?」



「「オォォォォォォォオオォォォッッッ」」



 『淵獣王ブラキエンド』は何かを振り切るように咆哮する、

 自ら、瘴気の剣で自らを切りつける、



「!?」



 あと僅かばかりで極限状態、自ら導き、本当の本気、決死、

 彼も、BOSSもまた、命を賭ける、プライドはある。



 『淵獣王ブラキエンド』の咆哮は風を生む、衝撃波を生む、

 旭は、涼しい顔でそれを受け止める。栗色の髪は美しく舞う、

 舞った髪が定位置に戻った時、彼女の顔に、余裕はなかった。

 瘴気の尻尾の刃、それは三本目の尻尾、二本の後ろ足は少し進化し、もはや人型、

 握りしめた手の甲から伸びる、瘴気の剣、

 すべての部位からほとばしる瘴気の雷槌、それを纏う獣人、

 旭の体格に合わせたのかその体格は縮む、足先から頭までの身長は2メートル。



「「「オォォォォォォォォォッッッ」」」



 仕切り直しの初手、淵獣王ブラキエンドの選択、

 それは自身から生える二本の尻尾の刃のリーチを大量の瘴気の雷槌で伸ばし纏わせ放つ、

 後転しながらの大地を切り裂く二つのクロスする瘴気の刃、

 刃が通りすぎた後もしばらく地面に波打ち高く瘴気の壁となる、

 旭はそれを前に行くことで躱す。彼女の足に迷いはない、

 淵獣王ブラキエンドは放った勢いそのままに空中で一回転した。

 彼は瘴気の雷槌で伸ばした形になった左右二本の自信の尻尾から伸びる瘴気の刃を

 空中から地面に突き刺す、



「(なにっ?)」

 淵獣王ブラキエンドは回転する、全て瘴気で作られた3本目の尻尾は伸び、

 地面をすり抜け斬り裂かず、突如として旭の走る地面から現れる。



「ッッッ」



 旭はステップで躱すが左足を斬られる、だが前へ向かう、

 強靭な意志力で吹き飛ばんとする左足を何事もなかったこのように走らせる、

 淵獣王ブラキエンドは地面に突き刺した尻尾共々大地を離れ遙か空に居る、

 勢いに任せて次の行動は既に開始されていた。


 ブラキエンド自身から生えている二つの尻尾の刃に宿る瘴気の刃の先端を伸ばし、

 空中から旭の左右後方の地面に突き刺す、

 瘴気のだけで作られた尻尾の刃は、

 淵獣王ブラキエンドの頭の上に配置されその先端を旭に向ける。


 『淵獣王ブラキエンド』は上空を向く、何かを出す仕草、

 過去のアイラとの戦いで見せた『あれ』、瘴気のビーム、

 それは着地とともに解き放たれる、

 それを発した者すらわからなぬ暴れ狂う高速のビーム攻撃、

 口と第3の尻尾から放たれる二つの荒れ狂う瘴気のビーム、



「ちッ」



「あわわっ」



 龍人はジョージを掴みそのビーム攻撃の巻き添えを避ける、



 旭はただ、前に進む、それしか知らぬ、後退のネジを外した閃光、

 躱しつつ間合いに到達する。



 旭はビームを吐き出し終わらない『淵獣王ブラキエンド』にロングソードを見舞う、

 旭の一撃が入る、



「!?」



 旭は距離を取る、

 『淵獣王ブラキエンド』の口からはもうビームは放たれていない、

 しかし、3本目の瘴気の尻尾の刃からはビームは放たれ続けている、

 それは、瘴気の壁、『淵獣王ブラキグロウス』も使用していた、

 直径18メートルの円の壁、しかし、今回は、

 『淵獣王ブラキエンド』の瘴気の壁はおよそ直径10メートル、

 明らかに狭い、壁の高さは5メートル、



「まったく見えんな、相変わらずここのBOSSは隠すのが好きだな、

 せっかく見に来たのに、残念だったなジョージ」



「そんなことはない、感じるよ、見えなくとも旭は戦っている。

 命をして、辿り着きたい未来の為に、

 まるで、太陽のような、近くにいるだけでなにかやれそうな気すらする、

 あの娘は、名前の通りの娘なのだな」



「ああ」



「だが、確かに直にみたいのも確かだ、

 なあ龍人、提案があるあそこに放り投げてもらえないだろうか」



「…食らったら即死だぞ、

 遮断の指輪をしている旭には別種族のお前の姿は見えないし旭の攻撃ですらお前には通る」



「私は悪運が強い、当たり判定も小さい、大丈夫だ。頼まれてくれないか、龍人、」



「……わかったよッ」



 龍人はジョージを掴み思いっきりその直径10メートルの円の

 5メートルの高さの黒い瘴気の壁の中に放り込んだ。




 『淵獣王ブラキエンド』は構える、両手を下に向けながら、

 瘴気の剣を灰色の石の地面に当てながら前かがみで走り出す、

 僅か10メートルしか無いこの瘴気の壁の闘技場は、即間合い、

 『淵獣王ブラキエンド』は先制攻撃を放つ、それは初手にして全て。

 両手の甲から生える瘴気の剣2本と、3本の尻尾の刃の波状攻撃、



「ッッッ」



 旭は躱す、しかし、7撃目、

 左下から来た高速の尻尾の刃を避けきれずもらう、

 それは意志力では抗えない衝撃、旭の許容範囲を超える攻撃、視覚外からの攻撃、



「あぁァァァッッッ」



 吹き飛び、瘴気の壁の追加ダメージをもらう、地面に叩きつけられ、

 それでも旭は立ち上がる、なんどでも立ち上がる、旭はレピオス瓶に手を伸ばす、



「ぷはぁっ待って、くれるんだ、優しいじゃない」



「はぁッはぁッはぁッ(あれは、入らないとダメだ、

 創りださないと、私の領域の果てに、辿り着かないといけないッッ)」



 旭の思考が終わると同時に淵獣王ブラキエンドは再び襲いかかる、



「(もっと速く、もっと疾く、)」



 高速の瘴気の剣、時折の回転尻尾切り、それは乱舞、

 フェイントも含む、BOSS『淵獣王ブラキエンド』の全て、

 スタミナが切れるまで延々と続く、不可避の攻撃、旭は繰り返す、

 領域に入るべく、回避と挑戦とダメージと回復、その何度目か、



「ハァッハァッハァッ」



「(私が、イメージするのはエレナが創りだした世界、あそこ。

 真っ白い、光の果て、瘴気の霧すら、漆黒の闇すら消し飛ばすなんの不純物もない、

 あの閃光の果ての世界、私の目指す場所)」



 『淵獣王ブラキエンド』は何度目かの乱舞、絶対的自信を持つ、存在を賭けた攻撃、

 その初撃、右上からの高速の瘴気の剣撃、旭はその刹那、その剣撃を躱しながら想う、




 

      私は、行くんだ

       龍人の隣に、

  それすら超えた その向こう側に




 

 旭は躱す、それは神速、不完全な足元だけの領域を超えた、領域、



「!?」



 『淵獣王ブラキエンド』は焦る、攻撃が当たらない、

 今、最後の尻尾攻撃が放たれ、全て躱される、それは初めてのこと、


 『淵獣王ブラキエンド』は異変に気づく、それは、白き世界、

 それは魔女『エレナ・ブラン・ヒート』が使った、名も無き第8魔術。

 旭は無自覚にもジョージも含むBOSS『淵獣王ブラキエンド』をこの領域に引きずり込む、


 『領域』、

 居た場所の位置情報は意味世界に保存されるが居た場所には、そこに居ない、

 取り込んだ対象以外は置いてけぼりになる、それが『領域』、

 生者の限界を引き出しやすくなる、生者の起こす奇跡、

 その色は発動した者の、性質により色を変える。

 龍人は黒、旭は白、対象的な純白、閃光の色、



「もう一度、来て」



 旭は言う、もう一度、躱してみせると、もっと全力で来いと、



「「「オォォォォォォォォォッッッッッ」」」



 淵獣王ブラキエンドは全力で咆哮する、先ほど躱されたことを忘れるために、

 今に集中するために、旭に応えるために、旭の髪は揺れる、なびく、ただ、旭は言う、



「ありがとう」



 そして、放たれる、全力の乱舞、間合いを詰めて初撃は右下から、

 白き地面を削りながらの振り上げ攻撃、旭は躱す、左足を後ろに身体を横に、

 その剣閃を眺めながら、躱す、左上からの打ち下ろし、

 後ろにやった左足を起点に旭は舞う、回る、左回りにただ、流れに逆らわない、

 その勢いそのままにロングソードで乱舞中の『淵獣王ブラキエンド』に攻撃を与える、

 苦痛に顔を歪ませる、いや、

 乱舞中での攻撃に驚愕したのか、それでも乱舞は終わらない、


 小さいジャンプ、小さい跳躍、回転しながらの、尻尾の刃同時3本、

 神速の右横薙ぎ攻撃、旭は地を這うスライディングする、

 3本の尻尾は旭の眼前を通り過ぎていく、

 起き上がった先には、旭から向かって左上からの瘴気の剣、

 そして右からの瘴気の剣の突き、旭は躱す、


 この高速の世界で、神速の世界で、

 右の瘴気の剣の突き攻撃を頬をかすめながら躱し、

 淵獣王ブラキエンドのを左横腹を薙ぐ、

 淵獣王ブラキエンドは前に突き出した左手甲の瘴気の剣を

 左脇にいる旭に向けて体を動かしながらやや左下に薙ぐ、

 旭は躱す、上半身を後ろに、ギリギリで躱す、

 しかし、淵獣王ブラキエンドの攻撃は終わってはいない、右の打ち下ろし、



「ッッッ(躱せないっ、だけどっ)」



「!?」



 旭は右手に持つロングソードで瘴気の剣の横っ面に当て、右に逸らす、

 逸らした勢いすら利用し右回転しながら、一回転しながらのロングソードの一撃、

 『淵獣王ブラキエンド』の左胸から右下に入る、しかし攻撃はまだ止まない、

 最後の一撃、前転からの高速の尻尾攻撃、旭は躱す、

 後ろに回り込む、


 ロングソードの連撃が『淵獣王ブラキエンド』の身体にダメージを与える。

 『淵獣王ブラキエンド』は距離を取る、何らかの思考の後、

 彼、『淵獣王ブラキエンド』は選択する、

 自らの尻尾、刃を成す2本の尻尾を瘴気の剣で切り捨てる、



「…それでいいの?」



「…ああ」



「? 喋るのッ」



「…今、喋れるようになった、君と話してみたいと思った。

 わたしの中に生まれた『衝動』が、わたし自身の中を調整し、

 そして僅かばかりのわたしの中にあった人のアニマの残滓が答えてくれたようだ」



「…何を話したいの? 剣で十分じゃない?」



「そう言われるとな、まぁ聞いて欲しい、

 これはカオスアニマを賭けた戦い、君は転生を目指しているのだろう?」



「そう」



 旭はブラキエンドの言葉に即答する。



「こんな、獣の少し人が混じったほぼ100%の獣の魂すら君は利用するというのか」



「利用するよ、利用する、利用できるものなら、どんな感情でさえ、

 人でさえ、獣さえ、竜でさえ、親でさえ私は利用する、

 正しさだけでは辿りつけない、

 ここは地獄、テラ・グラウンド、この世界に降りるすべての魂を利用する、

 その果てがきっと転生、…覚悟はしてる」



 旭はそう言いながら装備を変える、両刀、両の手にロングソード、



「…なるほど、良い答えだ」



「我々獣は、転生などはありえない、目指せない、

 そんなシステムは存在しない、

 多くの人のアニマ、竜のアニマを取り込んで比率が変わればそれも可能だろうが、

 基本我々は食い尽くし、食い尽くされ、朽ちていく、

 そうでしか『例外』を除き浄化すら許されない存在、」



「それは初耳だけど、まぁどのみち、それでも私はあなたを倒さないといけない」



「…わたしは今この世界のBOSS、そして獣、

 この世界の神に僅かばかりアクセスする許可が降りている、だからこれは事実だ」



「…それで話したいことは終わり?」



「ああ、わたしの役目は変わらない、」



「役目?」



「ああ、カオスアニマを求める者への試練、それがわたしの生きる理由だ」



「…あまりこの世界を維持できない、もう…いくよ」



 旭はまだ慣れない『領域』の維持の限界を訴え、

 両の手にもつロングソードを構える。



「聞きたいことが一つだけあったよ、…君の名前を教えてくれないか、

 無論わたしは知っている、それでもだ。」



「朝凪、旭」



「わたしは淵獣王ブラキエンド」






       朝凪 旭、いざ尋常に勝負






 淵獣王ブラキエンドの初手、尻尾をなくし、軽量化した、更に加速した攻撃、

 だが、旭は全てを躱す、躱せないモノはすべて逸らす、そして一旦お互いに間合いを取る、



「見せてよあなたの全てを賭けた一撃、」



「ふふふ、いいだろう」



 瘴気が集まる、全ての闇が集まる、それはこの白い世界を、中を全て黒で染め上げる、

 しかしそれすら『淵獣王ブラキエンド』の右手の甲の剣に集まり、

 瘴気の雷を異様に纏う闇の剣、『淵獣王ブラキエンド』の右腕右手薄青い部分は白くなる、



「そういえば目隠しはもういいの?」



「君には通じないようだからね、それに全てを賭けるとはこういうことだろう?」



「……きて」



 それは奇しくも吾妻龍人の構えに似る。右手を引き、左手は右手首を抑える、



「(いくぞっ)」



 声を出せないほどの全生命力、闇、それは狂気性、

 撃ち放った瞬間己の存在が消えるかもしれないほど全てを賭けた一撃、

 色すら犠牲にし、白に変えての文字通り全力。それは意味閃光。



 彼の役目は試練、敗北こそが勝利、その一撃は、

 吾妻龍人の必殺の『あれ』に、それでも及ばない、

 それでも神速の一撃、神速の突き、闇の閃光。それは放たれる。



「(私の領域は発動できたと言ってもまだ未完成、

 それにいつも確実に入れるわけもない、長時間使えない、

 それじゃ龍人にはまだ全然叶わない、それでも、このチャンス、

 逃せない、躱せなければ、私は終わり、勝とうが、終わり、私の勝利は、躱すこと)」




 『淵獣王ブラキエンド』の姿に旭は吾妻龍人を重ねる、そして自分の幸運に感謝する。

 もう一度、今一度、同一ではないにしろあの一撃に近しいモノを体験できる、

 その予感に、彼女は笑った。その繋がりに、感謝して。




   



        舞う







 ジョージは見る、声を潜め、その戦いを見守っていた、その刹那、

 何が起こったのか、彼はその眼で確かに目撃する。




 「(旭、君は、もう迫っているというのか、龍人の背後まで、

  それでもまだ遠い、だが背をとらえているのか)」




 黒き瘴気の剣、黒き雷を纏いながらやってくる渾身の一撃、高速の、神速の一撃、

 今までの攻撃の速度よりも疾く、

 そして、殺意の込められた、脳筋の一撃に近しい攻撃、

 それは旭の左頬をかすめる、

 黒き雷がほとばしっているため僅かばかりのダメージを旭は負いながら、

 それでも彼女は神速の一歩を踏み込む、右のロングソードの左からの横薙ぎ、

 そして左上からの打ち下ろし、神速の連撃、

 それは実は初撃で決まっていた、感触が終わりを告げていた、

 体力すら込めた一撃故、だが、彼、

 淵獣王ブラキエンドの役目は試練、まだ終わらない、

 命の果ての攻撃、何の意味もない、ダメージを与えられない、

 攻撃、乱舞、瘴気の尻尾の刃と、右手の甲から走る瘴気の剣、

 左手の甲からもまたほとばしる瘴気の剣、





       まだっまだだッッ、


  わたしは、淵獣王ブラキエンド、この者の、


      朝凪 旭の試練たれッッ









  「「「「オオオオオオオッッッッッ」」」」



 旭は躱す、一つ一つ、躱す必要があるのかもうわからない、

 だが、旭は感謝する、最後まで気を緩めない、旭の全力、

 淵獣王ブラキエンドの追加の8連撃、旭は躱す、






         「…見事だ」






 『淵獣王ブラキエンド』は仰向けで倒れている、その顔はどこか満足気、





「…ありがとう、ブラキエンド、また一つ強くなれた」






 白き世界は崩壊し、元の灰色の石の地面に戻る、瘴気の壁もない、





「ふふふ、感謝、か、わるくは…ない、

 朝凪、旭、君に利用されることを誇りに思う」





 紅い空にある太陽と旭を眺めながら彼は言う。 





        次、生まれ変わるなら、

  君のような閃光が隣りにいる人間でありますように





 『淵獣王ブラキエンド』はカオスアニマになった、

 その色は、黒と漆黒、見分けはつかない漆黒と瘴気の黒、

 旭は無言でそれを手にした。






「ありがとう、絶対にムダにしない」






「旭」



「えっなに、ジョージそこにいたの?」



 突如話しかけられ驚く旭、



「いたよ、どうしても近くで見たくてね、何度か死ぬかと思ったよ」



「ちょっと恥ずかしいかも」



 ジョージは首を横に振り違うというリアクションを取る、



「そんなことはない、素晴らしい戦いだった。来てよかったよ」



「そう、なにかわかった? この2000年の意味」



「ああ」



「え、どんな答え? 教えてよ」



「いや、言わない方がいい、そんな、気がする。これは私の、僕の胸に留めておくよ」



「えー気になるなぁ」



「旭、その地面に落ちている鍵のようなものはなんだ」



「? ほんとだ、なんだろ、どこの鍵だろ」



 旭は手にする、それはドロップアイテム、からくりの鍵、



「旭、どうだった」



 領域に入っていなかった龍人は戦況はわからない、だからこそ訪ねる。



「龍人、強かったよ、すごく、すごくね」



 龍人に報告する旭を眺めながらジョージは想う、



「(君が、想定する未来、それは、私よりも断然精度が高い勘なのだから、

 私にも見えてしまうほどの、想定、旭、君は…)」



「そうか、俺も戦いたかったなぁ、? その鍵はなんだ?」



「さぁ、龍人が知らないんじゃ私はわからないし、

 からくりの鍵だって帰りにアイラさんに聞いてみようかな」



「からくり? うーんまぁアイラに聞いてみるか、野盗の連中の情報網ならわかるかなぁ?」



   私は見たい君の果てを、吾妻龍人と朝凪 旭の、

     その想定の果ての桃源郷の景色を、

        ただ今は欲している


    人に生まれ変わろうという願望は私にはない、

  建前上はあるとされてはいるが恐らく動物にその権利はない、

      こうして話せただけで私は満足だ


  だがこの胸の鼓動の高鳴りはなんだ、この使命感はなんだ、

     これが私の『役目』なのかも知れない


     脳筋と閃光の行く末、それを見届ける、

         

          それが、私 

   動物商人クインテットリーダージョージの『役目』、





「だーめ、ジョージもいるし、何考えてるのよっ」



「ちっ」



「…なのかもしれない」



 ジョージはその様子を、

 恐らく今晩おっぱい揉ませろ的なやり取りの終止を眺めながら

 自身の『役目』や『予感』を若干疑う、



「あ? なんか言ったかジョージ」



「なんでもない、さあ行こう、目的は果たした」



「そうね、さすがに疲れてるし、昨日休んだポイントまで戻って休もっ」



 旭はジョージを肩に乗せ、元気に走り出した。


 



 その瞳はより深さを増した深緑のエメラルド





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