広大な青
アイテールの外れ、お茶畑、クロウディアの庭、
龍人とアイラは『獣たちの怨嗟の魔境』から帰還した、
「帰ったの? おかえりぃ~アイラ」
クロウディアは満面の笑みで迎える。
「おう、まぁこいつはよく頑張った」
龍人は右手にいるアイラの頭を撫でまくる、
「…龍人、そんなに頭グリグリしないで」
「照れちゃってかわいいぃぃぃ」
クロウディアはアイラの両脇を掴み一回転して頬ずりをして下ろした。
「で、それはなに?」
「帰り際にまた拾ってな」
「俺一人の時に今まで出会ったことはほとんどなかったが、
きっとアイラが動物に愛されてるんだろう、しらんけど」
『それ』それは犬、大きな犬、茶色の結構高級感漂う毛並みの犬、
「でかい犬ねぇ、私はこの犬知らないわね何て言うのこれ? 龍人」
「ごーるでんりとりばーだったかな?」
「へーそう言う種類、ともかくよろしく、えーと」
「カエサルだよ、あまり馴れ馴れしくなでられると惚れちゃうから気をつけてッッ」
「…なにこいつ」
「…まぁそういうことで、頼むわ」
「わんっ」
◇
あれから4年、アイラは意味16歳になっていた。
慎重は高く160を超え、
髪の毛も伸びて龍人と同じような長さになり赤い紐で髪を束ねていた。
胸もそれなりに手のひらサイズへと成長しもはや子供ではない雰囲気を醸し出す、
立派な女性へと、女戦士生者へと成長していた。
成長したアイラと龍人は訪れていた、そこは『獣たちの怨嗟の魔境』、
BOSS『淵獣王ブラキグロウス』、
ヴォルファングを地面に突き刺し龍人は腕組みをして、ただ観戦している。
龍人の指にはバツ印の『遮断の指輪』。
アイラは二刀のロングソードで一人戦う。
それは4年前とは明らかに違う、
既に『淵獣王ブラキグロウス』は追い詰められ極限状態になり、
瘴気の壁も顕在している、
そこから抜け出し『淵獣王ブラキグロウス』は回転尻尾の刃三連撃、
打ち下ろし回転尻尾切りを仕掛ける。
アイラは躱す、見えにくい状態からの回転3連撃を、涼しい顔で躱す、
そしてその遠心力を利用したジャンプ回転尻尾の刃の斬撃も、前に出ながら躱す、
着地した『淵獣王ブラキグロウス』に容赦なくトドメの連撃を繰り出し、
『淵獣王ブラキグロウス』はアニマの結晶を残し一時消滅する。
「さすがにもう余裕だな」
「当然、初見じゃないしね、何度も戦ってるから、」
アニマの結晶を手に入れ、振り返りアイラはそう答える。
「……これで、『しばらく』は終わりだな」
「…どういうこと」
龍人の言葉の意味がわからず問いただすアイラ。
「お前は成長した、親から巣立つ時が来た。ただそれだけだ。」
「龍人は親じゃないッ」
その言葉にアイラは若干激昂した声音で否定する。
「聞け、」
「私は、龍人とカオスアニマを、転生を目指して戦っていきたいっ」
アイラは引かない、龍人はそれでも語りだす。
「…お前と俺はどこか似ている、出会ったあたりで言ったな、
おまえの本質は臆病、だからお前が本物でも、
俺とお前は共にはいけない、そんな気が、『勘』がしている。」
「そんなことないッ
例えそうだとしても頑張ればなんとかなるっきっと一緒に辿り着けるッ」
「…お前はまだ始まったばかりだ、
だから今はその受け取り方でいいが、何度思考しても結論は変わらない、
俺とお前では咬み合わない、
確かにお前に感じるものはあった、驚きもした、学ぶこともあった、
だが、違和感は拭えない、噛み合っていないという違和感、
だから、ここでお別れだ。お前にはお前の道がある、
俺には俺の道がある、
そしてその二つの道が到達点で噛みあうことはない、これは、確信に近い」
龍人はあくまで冷静な声音で、諭すかのようにアイラに言葉をかける。
「それで納得しろっていうのッ、この4年間をっ、」
「今は納得しなくていい、いつか、いつかわかる日が来る」
龍人は背を向ける、歩き始める、それは拒絶とも取れる行動、
龍人の本気、分からないアイラではない、だからこそ、声にする。
「絶対、龍人と同じくらい、それ以上に強くなるから、私はっ強くなるから、」
「ああ、俺の勘が間違いだったって言わせてみせろよ、それまではお別れだ、
まぁどっかであった時は茶くらいは付き合うぜ」
龍人は振り返りもせずそう言いながら左手をプラプラさせてアイラの視界から消えていった。
いつもの、クロウディアの庭、アイテールの外れ、
それなりに広大とまでは行かない茶畑、アイラは訪れていた。
「龍人と別れたんだって」
「聞いたんだ」
「昨日来てね、その報告と一つ予言もしていったけど」
「予言? …ああ、なるほど」
アイラは肩をすくめる、やれやれと、
「あんたは動物に愛されているのか、呪われているのか、
いや、あんたの『役目』かもしれないってね」
「『役目』?」
「そう世界が仕向けている、バランスをそう取ろうとしている、
なんの意味もないのかもしれない、なにか意味の有ることなのかもしれない、
世界が望んだバランスに巻き込まれ、
『適格者』という『役目』を全うできる者を選んでいる。
まぁそれを『役目』とするかどうかはアイラ、あんた次第だけどね。
気に食わないならノシつけて返すか、ほっとくんだね、
どのみち世界規模ならバランスに支障はないと思うから」
「…役目、世界、適格者、か、そして…バランス…か」
クロウディアが今語った言葉の要点を復唱する
アイラを眺めながらクロウディアは一つ提案を始める。
「…名前を、背負ってみたらどう?」
「名前?」
クロウディアは左手で右肘を掴み右人差し指を唇に当て思考しながら語りだす。
「そうねぇ、…『ブルー』、あなたの瞳の色、髪の色、
この世界のアイテールの空の色、龍人の瞳の色、広大な器、
あの馬鹿に辿り着きたいなら…ね、
アイラ・ブルー・ノーズ、名前なんてねいくらでも背負えばいいと思うの、
『発想は逆転するものだ』、誰かの言葉よ、わたしの言葉かも?」
「…アイラ・ブルー・ノーズ…か、」
「で、そのボーイかガールかわからないけど、名前はなんて言うの?
わたしはクロウディア・リデレ、
動物たちとお茶を作る愉快痛快なお姉さんなんだけど」
「ゴーシュ、ペンギンのゴーシュやで、よろしゅうクロウディア」
「クロウでいいよゴーシュ」
クロウディアとペンギンのゴーシュは初めましての握手した。




