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旭の戦い



  ◇ 旭の戦い




「ッッッ」



 ザシュッと致命の一撃が入る。それは果たしてどちらなのか。



「はぁッはぁッはぁッ」



「これで限界? 終わり?」



 自信満々でたわわな胸をちょっと揺らしながら

 ロングソードを右下に意味もなく薙ぎ払い格好をつけている現状優勢の朝凪 旭、



「どうしてこんなにッ差がでるのッ」



 肩で息をしながら問いかける、劣勢の朝凪 旭、

 以前胸を張り続ける優勢の旭はこの質問に答える。



「自分自身だもん、一番良く知ってる。

 そして、私は成長し続けなきゃいけないから、明日の、未来の為に、」

「今だけのために今だけを考えて、今を生きる?

 笑わせないでよ。それで勝てたら誰も苦労しないの、誰も迷いはしないよ」



「ッッッ」



 分かたれてから幾ばくかの時間、その僅かの時間でも旭は成長をする、

 明日のために、過去も今も燃やす、閃光、今だけのための閃光が勝てる通りはない、



「そんな今だけの私に、私が負けるわけ無い、」



 止めの言葉、激情した創られた旭は仕掛ける、声を上げながら、



 しかしそれはどう見ても悪手、



「うぉぉぉッッッ」



「だから、軽いんだよ」



 再びパリー、致命の一撃、迷いなくその一連の動作は成される、



「ガッッッ」



 創られた旭は立ち上がり距離を取る、本物の旭は追撃しない、そして言う、



「なにかないの? とっておき、」



「はぁッはぁッはぁッ、『ある』」



 創られた旭はそう言い放つと、姿を変え始める、



「!?」



 そしてそれは姿を徐々に旭に分かるように変化していく、

 まだシルエットだけだが旭は察する。



「…最初からそうしなよ」



「いくぞ、旭、」



 それは吾妻龍人、彼女の、好きな、恋をして、いる。最愛の人。

 最強の脳筋。『いくぞ』その声とともに吾妻龍人は容赦なく本物の朝凪 旭に斬りかかる、



「ッッッッッ」



 それは龍人が戦った龍人と同一、能力だけなら同一、最強の脳筋。

 最強のヴォルファングの連撃。煉獄、

 最悪死ぬまで止まらない高速の重い攻撃、狂気と恐怖の攻撃、

 片手のヴォルファングの連撃、



「ッッッッッ」



 初撃、旭から龍人に切り替わり直ぐ様の戦闘再開、

 咄嗟のことで旭は選択を間違える、小盾でのガード、

 相手は大剣 なす術なくそのガードは弾かれ、無防備になる、

 意志力でどうにかなるレベルではない、当然攻撃は入る、

 大剣ヴォルファングの脳筋による、独自モーションの連撃、

 それは狂気、恐怖、驚嘆、

 その刹那 朝凪 旭は見る、

 その吾妻龍人の達している世界を、その領域を、現時点での差を、




「ッッッッッ(ははは、ウソでしょ、これが、)」







        最強の脳筋








        「がッッッ」




 吹き飛ぶ、旭、脳筋の3連撃をもらう、


 独自モーションのヴォルファングの連撃、速さは尋常ではないが、

 ダメージは通常モーションの一撃より確実に落ちる、

 故に、ぎりぎり、旭は絶命をギリギリで免れるHP、

 吹き飛んだおかげで絶命を免れた、



「ごくっごくっごくっぷはぁっっ」



 旭はレピオス瓶で回復する、二回飲む、全回復でなければいけない、

 全快の体力でなんとか相対せる相手、



   やばい、なに?、

   虎徹さんの戦いで見て知ってはいたけどっ、

   頭悪すぎっッ…

      

   やばい、こわいよ、

   これが、龍人の…、積み重ねてきたもの――、




 それでも攻撃は始まる、嫌でも始まる、再び脳筋の連撃、絶望の連撃、高速の連撃、



「しまっ」



 武器と盾を変えている時間はあった、しかし、そうできなかった、


 無慈悲にもヴォルファングは先程とほぼ同じ状況を作り出す。



「ッッッ」

「ごくッッごくッッごくッッはぁッはぁッはぁッ」




 レピオス瓶を二度飲み干し、回復する、

 創られた吾妻龍人はそれを待つ、彼なら待つ、

 瓜二つ、思考もほぼ一緒なのだろう。

 旭は大剣グレートソードに武器を変更する、

 ロングソードとただの鉄でできた小盾ではパリーはともかく

 防御のイメージが出来ない、

 闇雲に攻撃をしても弾かれるイメージしかできない。

 大剣ならスタミナを失いHPを失いながらも小盾でパリーをうかがえる、

 それが彼女の混乱する中の決断。それは間違いではない。



「ッッッ」



 繰り出される脳筋の連撃、旭は大剣でのガードをする、

 彼女の目にはその連撃はおぞましく恐ろしく狂気で、異常。



「「あああぁぁぁッッッ」」



 旭の選択は攻撃、無駄な 先に入るはずもない通常モーションの攻撃、



「があッッッ」



 吹き飛ぶ、当然に、一撃を貰って吹き飛ぶ、それは幸い彼女を殺さない、



「ごくッッごくッッごくッッはぁッはぁッはぁッ」



 生存への本能が、ただ旭にレピオス瓶を飲ませる、

 その表情は絶望。恐怖、瀕死、



「やめておくか? 旭」



 創られた吾妻龍人は言う、本物の彼でもそう言うだろう。



「――ッッッ、じょッ、冗談でしょっ、まだ、私はやれるッッ」



 旭の精一杯の虚勢、彼女は震え、怯え、戦意はほぼ喪失している。

 しかしまだ灯火は残る。

 そのいつも未来を見据えるエメラルド瞳はまだ完全に死んではいない。



「そうか、なら、」





            行くぞッ





「ッッッ」




 今まで感じてきた恐怖とは別種、恐怖は味わったのかもしれない、

 『斎藤 一』が『雪原の門番』が、彼女に与えた恐怖、

 無謀にも挑戦し、乗り越えた強さ、

 それは吾妻龍人を戦慄、震え上がらせるほどだった。

 しかし、龍人が驚いただけであり、龍人の強さは旭とは別、別種。

 その剣の意味、積み重ねてきた時間、思い、重い、想い。

 この数ヶ月苦楽を共にした相棒。知らぬわけはないその重み。


 彼女はそれを見てしまった。いや感じてしまった。体感してしまった。

 それを勘じられないほど朝凪 旭は勘は悪く無い、

 悪く無いからこそ、寧ろ優れているからこそ、

 ここまでこれたのだ。


 しかし知ってしまった。『恐怖』、本質が臆病者でないからこそ、

 なんとか踏み出せていた一歩、彼女は失う、

 臆病者を真に知ってしまった。

 これまで磨き、研ぎ澄ましてきた勘が彼女をある意味殺す、

 恐怖を知ったからこそ、今まで飛び込んできたからこそ、彼女は動けない。

 今までの狂気とも取れる彼女の特攻が、どれほど重たく、イカれていたのか、

 彼女は意味、真に自覚してしまう。

 相手が雑魚ならまだ問題はない、

 雑魚ならば踏み出せるその一歩、

 だが相手は見紛みまごうことはない最強の脳筋、旭が知る最強の生者、



「(敵わない、こんな、何年、1万年? わからない、そんなのどうでもいい、

 わかってた、それでも尚、

 あいつは向かってるんだカオスアニマの向こう側に、

 『転生』に、私すら『利用』して、まだ私は足りてない、足りてなさすぎる――)」


 

 ヴォルファングの連撃、それは始まる、容赦なく巻き起こる。




「(それでも私はっ一緒にいたいっ一緒に辿り着きたいッ)」






            龍人






「ッッッッッ」





 彼女は空をみあげていた、白色の、白という色の、天井を、

 そのまま彼女は仰向けのまま白色の地面に叩きつけられる。

 踏み込んだ決死のパリーは無残にも失敗に終わる、

 しかしその行動が取れただけでもそれは賞賛に値する。

 だがそれは彼女にとって無意味、あまりにも無意味、

 彼女は涙を流す、最初は左、少し遅れて右、頬をつたり、

 涙は顎の関節付近に耳の下を悲しく、流れていく。




「終わりか」




 それは、見限った一言なのか、期待故の言葉なのか、

 創られた吾妻龍人は背を向けどこか遠くを眺めながら

 旭と距離を取るべく歩みを始める、ただ無情にも歩く。


 その足音は、彼女にとって『残酷』。



   「どこへッ、行くッッ」



 旭は立ち上がる、その行動に、彼女に湧いた感情は『怒り』、

 茫然自失の中湧き上がった『熱量』、それが彼女を立ち上がらせる。




「…少し距離をとってお前の心の回復を待つ、ただそれだけだ。他意はない」



 

 本物ではない、本物の吾妻龍人は言う、『お前のメンタルが回復するまで待つ』と、




  「ッッッッッ」




「俺はあいつであってあいつじゃない、今を、大切にする、吾妻龍人だ。

 お前の知ってる、吾妻龍人であって、吾妻龍人じゃない、

 優先順位が『今』、お前との戦い、ただそれだけだ。

 時間は多少ある。焦って焦るなよ、旭。」



  「ギリッ」



 それは正論、非の打ち所のない。事実。

 それは本物の吾妻龍人の言葉、しかしそれは『今』を重視した時の彼の言葉。

 それでは、明日には辿り着かない。

 明日ではない向こう側へは辿り着けない。

 だから彼女は音を立てて歯を食いしばった。



「来てっ、私は、私は大丈夫だから、」



 涙を手で拭った彼女は、挑戦を、攻撃を再開しろと催促する。

 それは、無謀、いや、それすらも適切ではない、

 死ぬ未来しかイメージできていない無謀の特攻。

 まだ回復するほど心とはたやすくない。頑丈でない。



「死ぬぞ」



「どっちだって同じ、死ぬのなら、前のめり、あんたは未来を見てない、

 …私は、未来に、未来に行きたいんだよッッ、」



「今、死んでもか?」




「「同じだって言ってるでしょッッッッ」」




 激昂した旭は前、ただ進む、選択肢ない、だがあるのは死という事実に帰結する。

 それをわかっていてもその足は前、歩みを止めない、止められない。


 

 吾妻龍人は構える、黒き領域、

 白い世界は黒に染まる、それは、旭は初見。

 ヴァルディリスの時は使用しなかった、

 そして自分自身には使っても意味が無いと

 まだ見せていなかった『とっておき』。


 それは、高速の突き、全体重を載せた前のめりの一撃、

 積み重ねてきた全てを賭けた一撃。

 友、忘却の騎士エルディオンが使用した

 旭に使用した『あれ』の更に先、


 旭は何もできず足を止めた。

 彼女の『勘』がいや、『すべて』が身体を止めさせた。





          「ッッッ」





 旭の髪は舞う、ヴォルファングが起こした攻撃の衝撃波が

 彼女の美しい髪を栗色の髪の毛を後方へ巻き上げる、

 それは、やがていつもの彼女の髪の形に戻る。




     「……どうして、…どうして?」




 彼女の顔の前で止められた大剣ヴォルファング、そのままの姿勢で龍人は言う、


「俺は『今』のあいつのコピー、今しかないそれでも精巧なコピー、

 それをわかっているから、お前を殺せない。

 お前はきっと最後に俺に追いつく、俺は、それを信じている。それは、今の俺も、

 過去の俺も、未来の俺も、同じ答えだ。きっとな」




「ッッッわたしはっわたし、わたしはッ、」




 旭は泣きながら、号泣しながらそう言う、情けない、力の足らない自分を恥、泣く、




「泣くな、いや、泣け、今はその悔しさがあるなら、きっと届くと信じている。」




 龍人は剣を引く、大剣ヴォルファングを右肩に担ぎながらいつもの格好で言う、


「今恥じて、悔しさを味わい、噛み締めながら前進め、それが、俺の惚れた、

 明日を目指す俺と、今の俺と、過去の俺が、全ての俺達が惚れた、朝凪 旭だろ」


「醜くも、地べたを這いずろうが、醜態を晒そうが、

 鼻水すすろうが、涙流そうが、よだれを垂れ流そうが、

 おっぱいを吸われてようが、俺はお前を信じている。

 お前を利用して、俺じゃないあいつはまた強くなるはずだ。

 俺は、強くはなれない、所詮今しか考えられないコピーだからな、」




「でもっでもっ、それじゃっずるいよッッ、この試練に勝たなきゃ、それはずるだよッッ」




「『ずるさ』も利用しろよ、吾妻龍人すら利用しろよ、

 いわれ無き自己限定なんてするな、

 あいつにはお前が必要なんだ。

 そうだな、これはお前のこれまでの頑張りが、

 僅かばかり産んだ貯金だ。貯金は貯めたら使っとくもんだぜ?」




 龍人は手を広げる、大剣ヴォルファングを放り、両手を横に、更に口を開く、



「さぁ、その剣を突き立てろ、いつか借りだと思うなら、

 本物のあいつに返してやれよ」




「お前は最強の脳筋の相棒、なんだろ? 

 あいつを一人に、…一人にするなよ」






    「ッッッああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ」






 ただ龍人の腹に刺さる、無骨な灰色の大剣グレートソード、

 龍人は抱きしめる、

 朝凪 旭という惚れた女性を、




「ちっ本当に精巧に作りすぎだろ、ああ、お前のおっぱい、吸いてぇな…」




 龍人は旭の栗色の髪を右手で撫でながら、旭のおっぱいへ執着を忘れない、




「…バッカじゃないの…さいってぇ…でも」








           ありがとう 









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