ここからは鍛冶屋の仕事
ここは、ルアーノ・ヴァルディリス王が治める『ヴァルディリス城』
龍人と旭は無事、『神に至れぬ古竜の巣』から帰還し、
当初の約束通り、『持ち帰った物の一つ』を差し出すために玉座の間に来ていた。
「目的のものは手に入ったのかな?」
「ああ、おかげさまでな」
「持ち帰ったものを見せてもらおう」
「ああ、」
龍人と旭は持ち帰った『儚き竜の化石』『竜の呼び鈴』『謎の指輪』
その他珍しくもない見慣れたドロップ物を展開させ並べる、
「これが『新種』、か、だが興味が無いな、…これは…なんだ…?」
「あそこに住んでいる竜が一回だけ助けてくれるんだと、」
「…碌な物がないな……、………! 」
「?」
「これを、これをもらおうっ」
やや興奮気味ヴァルディリス王が差し出す品に選んだのは『謎の指輪』だった。
「?? …それでいいのか? まぁお前がそれで構わんのならいいが、」
てっきり大量に持ち帰った『儚き竜の化石』を一つ選ぶものと思っていた龍人は拍子抜けする。
「ああ、ありがとう、これでいい、もう行くがいい」
「あのヴァルディリス王さん、またあそこに行けるようにして守られると助かるんですけど」
旭はやや緊張しながら帰る前に言うならタダと
『儚き竜の化石』の入手ルート確保に果敢に挑む、
「…いいだろう、サイトウ、予備の鍵を渡してやれ、必ず扉を閉めることを条件として特別に認める」
「…わかりました」
「ありがとうございます、」
意外にもあっさりと承諾され驚くが、旭ははっきりとした声で礼を告げる。
「いいから行け、用はすんだはずだ、私はこれからやることがある、」
その旭の礼も今のヴァルディリス王にはうざったいだけのようで、
シッシッと手をふり『どっかいけ』と言わんばかりに邪険にする。
「ああ、世話になったな、サイトウ、ヴァルディリス王」
龍人はサイトウから鍵を受け取り、
ヴァルディリス王の様子に改めて違和感を覚えながらも龍人と旭は城を後にした。
始まりと終わりの村『アイテール』に着く頃にはすっかり夕方になり、
赤い夕焼けがとても美しく、海の見える崖にあるアイテールからの眺めを幻想的にしていた。
「虎徹帰ったぞ」
「早かったな、どうだった、首尾は」
虎徹は鍛冶作業を止め、龍人に目をやる、
「上々だ、『新種』『儚き竜の化石』持ってきたぜ」
龍人は『儚き竜の化石』を展開させ虎徹に差し出す、
「ほう、これか、……」
立ち上がり『儚き竜の化石』を受け取った虎徹は直に触り、様々な角度で観察を始めた。
そして、旭に『果てなきオーラのロングソード』を貸すよう、指示を出す。
「旭、剣を譲渡して貸してもらえるか?」
「は、はい」
旭は『果てなきオーラのロングソード』を展開させ虎徹に差し出し、
譲渡手続きをする、虎徹はそれを受け取り、受領し、その後両方に交互に目をやる。
「…なるほど、確かにこれで間違いないようだ、」
「わかるもんか?」
「まあな、だが、出かける前も言ったがまた取りに行ってもらう可能性は考えておいてくれ」
「はい、大丈夫です、鍵ももらいましたし、」
旭はヴァルディリス王にもらった
『儚き竜の化石』に通ずるヴァルディリス城の『裏門の鍵』を胸に掲げ
抜かりないことをアピールする。
「そうか、抜かりなしか、…ならすぐはじめよう、
龍人、『これ』は何個持ち帰った?」
「20個だ、」
「…そうか、わかった、その辺に権利放棄してまとめて置いておけ」
「クスハ、手伝え」
「はい師匠」
そう言うと二人は真剣な面持ちで作業を開始した。
「出るぞ旭、」
「うん、」
返事をしながらもその二人を見守る旭に龍人は言う、
「ここからはあいつらの『戦い』だ、居たら邪魔になる」
二人は『鍛冶屋』虎徹を後にした。