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ヨアケマエ外伝・零号震電  作者: うにシルフ
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第一六章 そして大空へpart2

 翔子達が試験隊詰所に着いたのは訓練開始時間の10分前だった。いつもなら30分前には来て、その日テストを行う機体のチェックを自ら行ったりするのだが、今日は本部に寄ってきたためにかなり遅れてしまったのだ。だが『試製震電』7号機は既に暖機が済んでおり、今すぐにでも飛び立つ事ができそうだ。しかし本日の試験内容の打ち合わせがあるので、飛行直前に再び軽く暖機運転が必要となるだろうけど。

 ちなみに本庄・西両准尉は航技研からやってくる岩和田少佐の後任及び『試製震電』改修4号機を待ち受けるために、まだこの詰所には来ていなかった。おかげで時任隊長が自ら本日の試験内容を指示する事になり、詰所内の席に翔子達を呼び寄せていた。

「昨日話してた短足『震電』、夜中の内に図面描いちまったのか。伯父さ…いや司令に提出する前に俺にも見せて欲しかったぞ」

「あの司令の事ですからきっと複写をとってますから大丈夫ですよ。それより『短足』ってのはやめてもらえません? 『震電(あのこ)』の悪口言われているようで面白くありません」

「なんだ立花は短い脚の犬とかをかわいく感じないクチかあ。あれはあれでかわいいモンだぞ。テチテチ歩いてる姿とか」

 図らずも隊長の意外な趣味が暴露された事には驚かされたが、『震電』の悪口はやはり許せぬ翔子。多少脚が短くなっても『震電』はカワイイし、短くなったと言っても並の機体よりはまだ長いのだ。なのに短足とは心外だが、今その事で隊長とやり合っても時間と労力の無駄なので、それ以上は敢えて言わずに今日の試験内容の確認をする。

「ま、それはさておき、今日は全力でテストしちゃっていいんですよね」

「ああ、とりあえず午前中は対戦闘機戦闘高度6000mにてエンジン全力運転と、基本的戦闘機動の確認。午後には過給器の全開高度である8400mにて全力運転と対重爆用戦闘機動の確認をやってもらう。機内タンクだけで1時間ちょっとは飛べるはずだから、休憩や報告の時間も入れれば丁度いいだろ」

 隊長は一昨日まで行われていた航技研が指示した通りの訓練内容を提示した。もっとも本来ならこれは3日目の内容である。しかし翔子は昨日2日目の内容である巡航速度での慣熟飛行を済ませてしまっている。なのに再びそれをやれと言っても本人が納得しないだろうから、次のステップである全力試験を指示したのだ。にも関わらず翔子は納得していない様子である。

「隊長。それって時間の使い方にムダが多すぎません?」

そう言った翔子の声音と表情には不服の文字しか見てとれなかった。

「無駄って何が?」

「だってまだ8時を過ぎたばかりですよ。丁度9時に1回目の試験を始めても10時過ぎには帰ってくるんです。それなのに午前中の残った時間は休憩と報告だけなんてもったいないです。整備や燃料補給を行ってる間に報告等を済ませば11時にはまた飛べます。そうすれば午前中だけで今日のノルマを達成できるじゃないですか。そしたら午後には他の試験が行えます。2時間1セットで考えれば、午後も2回全力試験が行える計算ですっ」

 翔子は気色ばんで持論を力説する。確かにペース的にはできない事はない。ただそれは機体や整備面での事であって、パイロットの体調を考えたらそんな無理はさせられない。もちろん戦場において4時間を超える出撃なんて航続距離が特に長い日本機ではごく普通(あたりまえ)かも知れないが、その間ずーっと全力機動している訳ではない。緊張感はテストパイロットのそれを下回る事はないかも知れないが、直接肉体にダメージを与えてくる訳ではないので、肉体的な負荷は翔子がやろうとしている試験の方が上回るだろう。その負荷の蓄積はたとえ今日何の変調ももたらさなくとも、明日以降には何が起こるか分からない。特に翔子は女性でいくら芯が強くても、欧米人はおろか日本人男性より体のつくりは華奢だ。それこそ自分の伯父などと比べたらガラス細工のようなものだろう。そう結論づけると隊長は翔子の提案を毅然と却下した。

「立花ぁ、いくらなんでもそりゃ無理だ。お前の体が保たない。よってお前の具申は却下し、当初の指示通り午前と午後の2回、試験飛行をしてもらう」

「なんでです? 今まで1日4回の試験なんてざらだったじゃないですか。それどころかその後に訓練時間外の夜間試験もやった、というかやらされた事もあります。なのに今日はなんでダメなんですかっ!?」

 予想通り噛み付いてきた翔子に、どう説得していけば折れてくれるか悩む時任隊長。飛行機の事になると目の色が変わる翔子だが、現状認識はキチンとできるので、話の筋さえしっかり通っていれば理解はしてくれる。逆に理に適ってなければ拗ねて自分の意見をごり押ししようとするだろう。なのでどう話を持っていこうか考えてしまう隊長であった。

「何でと言われてもなあ……『震電』の離着陸時の操縦の難しさは立花だって昨日経験しただろう。そのために体力と気力がかなり奪われてしまう。これは俺達571の中で『震電』に乗った事がある者全ての共通認識だし、九州飛行機や航技研からの報告でも同様の事が書かれている。そこで『震電』の試験飛行には制限を設けようとなってな。1日あたり2・3時間。少なくとも離着陸性能が向上するまではそれくらいにしておこうとなった訳だ。だから571では1人が1時間から1時間半飛んだら他の者に交代し、1人は午前と午後それぞれ1回ずつしか飛ばない事になっている。お前にもそれに従ってもらおうと考えているんだが、それでは納得できんか?」

「むぅ~~~っ。私はみんなが感じた程は疲れなかったけどなぁ。『震電(あのこ)』には乗ってるだけでワクワクしてくるし、操縦が難しいところもまた楽しいんですよ。だから今日何回も『震電(あのこ)』の全力を試せるのを楽しみにしてたのにぃ……」

 甘かった。翔子の飛行機バカは筋金どころか鉄骨、戦艦の竜骨(キール)くらい太くて固い物が入って構築されているのだ。隊長だってその辺は分かっているつもりではあったが、いざ話すとなるとその容姿からか幾分差し引いて考えてしまう。おかげで攻めきれなかった。

 翔子は不満げに頬を軽く膨らませ、上目遣いでこちらを責めるような、かつおねだりでもするかのように見つめてくる。がそれ以上に言葉を続けてはこなかった。

 そこに「もしかしたら勝機はあるかも知れない」と直感的に感じた隊長は、最適解を求め頭をフル回転させる。すると見つかった、突破口が。それも彼の頭の中にではなく翔子のすぐ側に。これで説得しきれなかったら他の方法は自分には見いだせないだろう。だから隊長はそれに賭けた。ただしいきなりそこからは切り出さない。敢えて遠回りをしてその効果を高めようと全く関係ないところから再び攻め込んだ。

「立花、お前ばっかり特別扱いする訳にはいかねぇんだ。皆お前さんの能力を買ってるし人柄だって知ってるから表立った不平不満は出てきてないが、何も知らない外部の者が見たら異常な状態だと思うぞ。例えば昨日まで居やがった岩和田少佐みたいにな。それにもしかしたらこの基地内にもそんな考え方をする者がいるかも知れん。だからたまには大人しく猫でも被った方がいいんじゃないか?」

「と言われましてもねぇ。茂原と成田(ココ)、2人の司令から規格外扱いされている身からすれば、多少のムリも道理の方から引っ込んでくれると思うんだけどなぁ……ああ、自分が特別だなんてトチ狂ったカン違いはしてませんからねっ。あくまで上からムチャしてこいって言われてるだけだと理解してますから」

 翔子もやれやれといった感じに肩をすくめて溜息を漏らす。そこには飛行機に乗るのは好きだが押しつけられるのはゴメンだ、と言う感情が込められているように感じた。そこで隊長は好機到来と先程見つけた翔子攻略法を口にした。

「お前の微妙な立場も分からんではないが……それはそうと沢渡ぃ、そう言えばお前まだ『震電』に乗った事なかったよな?」

「!」

「ふぇえっ!?」

 話をいきなり振られ泡食うさくら。今の今まで親友と隊長の言い争いにただハラハラオロオロとして口を挟む事もできずにいたのだが、急に隊長の矛先が自分に向き、本当にどうしたらよいか分からなくなってしまった。翔子だって突然の話の方向転換に驚いてしまったが、そこから立ち直ると食って掛かるかのようにさくらに経緯の説明を求める。

「そう言えば昨日、自分はまだ乗ってないって話してたけど、どうしてなの? 女性パイロットでも『震電(あのこ)』を操縦できるか確かめるのなら、私より本職のさくらの方が適任じゃない」

「そう言われてもねえ……」

 両肩を翔子にがっしりと掴まれ、詰問口調で問われたものだから更に困ってしまい言葉に詰まるさくら。答えがない訳ではないが翔子に力強く見つめられると余計に混乱してしまい言葉が上手く出てこないのだ。そこに隊長が助け船を出してくれる。

「さっきも言っただろう。『震電』には体力が必要だって。だから経験豊富な男子隊員の中でも活きが良い者から順に乗せていってるんだ。そして立花にご足労いただいて、その結果次第で沢渡にも乗ってもらう予定だったんだ。お前がもう少し苦労するようなら沢渡の出番はもう少し遅れて、男子隊員全員のデータを集めてからになったかも知れなかったが、予想以上に良好な結果を見せつけてくれたからなあ。だったら沢渡にも期待しちまうじゃあないか。今日2機目の『震電』が届く予定だし、今後もう少し増えるはずだ。であるなら『震電』を操れる者は1人でも多いに越した事はない。と言う訳で1回分の時間を沢渡に譲ってやってはくれないか。もちろんお前みたいな高度な試験は行えない。まずは基本的な事から。ので今日はせいぜい地上滑走とジャンプ飛行までだろう。なっ、どうだ? 少なくとも午後イチの1回分、沢渡に乗らせてやってくれないか」

 時任隊長は感情表現豊かに「さくら」という切り札をきってきた。情に厚く、特に親友であるさくらの事となれば自分の事などさておいて行動する翔子を幾度となく見てきた。だからさくらを『震電』に乗せたいといえば翔子はすんなり受け入れるだろう。そんな結論に達していた隊長はいつものようにくだけた感じで説得を試みた。ただし内心はドキドキものである。『震電』の事となると目の色が変わる翔子である。ので今日も確率的には低そうだが、我を通してくる可能性も捨てきれない。故に下心などおくびにも出さず、純粋にさくらを『震電』に乗せてやってくれ、と頼む隊長であった。

「そういう事なら何の問題もないですよ。さくらっ、良かったねぇ。さくらも『震電(あのこ)』に乗れるようになる。そしたらいつか一緒に飛ぶ事ができるよねっ!」

 隊長の言葉を聞いていくにつれ、翔子の表情はキラキラと輝き出す。そして隊長の言葉が途切れた途端、間髪を入れず嬉しそうに答え、思わずさくらに抱きついていた。

「…ちょっと翔子…痛いよ……」

 まだ混乱から抜け出せていない中、急に親友に抱きしめられ、またも驚くさくら。がショック療法になったのか、ようやくしっかりとものを考えられるようになってきた。もっとも最初にできたのは、翔子に放してくれるよう頼む事だけだったけど。すると翔子はすぐにそのお願いを聞き入れ、ぎゅっとしていた腕の力を弛めると、嬉しさの余韻からか笑顔のままだったけど、一応謝っていた。

「でもいいの? ホントはずーっと『震電(あのこ)』に乗っていたいんじゃない?」

 さくらは親友を気遣っておずおずと確認する。もちろん翔子には好きなだけ『震電』に乗せてあげたい。自分なんかが割り込んではいけないような繋がりが翔子とあの『震電』の間にはあるように感じるし。しかし同時に彼女の体の事も考えてしまう。経験上翔子の事だから何の苦もなく4回のテストをこなしてしまうのだろうけど、隊長がわざわざ自分を割り込ませてまで休養をとらせたいという気持ちも理解できる。『震電』から降りてきた時の試験隊の先輩や同僚達の姿を見ていれば、他の機体より消耗する事は分かっているから。だけどこの時のさくらの気持ちはもう少し複雑だったりする。

 確かに『震電』には乗ってみたい。それはテストパイロットとしての性分でもあるし、翔子が言っていたように一緒に飛ぶ事ができたら、きっと楽しい時間を過ごせると思うから。が反面『震電』に乗る事を怖いと感じている自分がいる事も事実である。仲間達の体験談を聞く限り、離着陸時には技術だけでなく力で機体(操縦系)を押さえつけなければならないし、トルク過大のために起こる右傾による事故を避けるために神経がかなりすり減らされるらしい。そんな話ばかり聞かされると、非力な自分などでは操縦はとても無理なのではと本気で思ってしまう。

 などなど、それらの感情が入り混じってこんがらがっているために、純粋な気持ちからだけでなく後ろめたさも多分に含まれているから、このような聞き方になってしまったのだ。

 そんな親友の心中を察したのか、翔子は明るく問いに答える。

「うんっ、全然オッケー♪ 楽しい事は独り占めするよりみんなで分け合った方がもっと楽しくなるじゃない? だからさくらにも『震電(あのこ)』に乗って欲しいんだよ。操縦するにあたって何か心配な事があるなら大丈夫。私がずーっと側についているし、本庄さん西さんもいるんだから。岩和田先任の代わりにどんな人が来るかは知らないけど、あそこまでヘンな人じゃないだろうし、たとえそうだったらまた追い出しちゃうから問題ないって」

「翔子ぉ……」

 親友の気遣いに思わず涙腺が弛んでしまうさくら。追い出すのは問題では? と思う事でかろうじて涙が零れ出すのは(こら)えたが、その分瞳の潤みっぷりは尋常ではなかった。また体も小刻みに震えていたが、その表情は様々な喜びが適切にブレンドされたものであった。

 その様子に翔子はさくらが『震電』に乗ってくれるものと確信して、隊長の方へ向き直り、声高らかに宣言した。

「分っかりました~。とりあえず午後イチのテストはさくらに任せたいと思います。その分午前中のテストは思いっきりいきますし、できる事なら今日最後のテストは自分で締めたいと思いますので、了承とご協力のほどお願いしますっ」

 そしてさくらもつられるように、手の甲で涙を拭って晴れやかな表情で言い放った。

「沢渡大尉。本日午後の『試製震電』7号機の試験を拝命します。自分は初搭乗となるため立花少佐のような高度な事はできませんが、それが叶うようしっかり基礎操縦を学びたいと思いますので、指導よろしくお願いします」

「分かってもらえてなによりっ。それでは両名共本日の試験をよろしく頼むぞ。特に沢渡は初めて『震電』に乗るんだから慎重にな。そして立花、沢渡がちゃんと試験できるように、荒い操縦をして機体をぶっ壊しでもしたら承知しねぇぞっ」

 時任隊長は2人の同じような真っ直ぐな視線と、それぞれの性格がモロに出た全く異なる感じの口上を受け止めると万事問題なしと答え、それぞれにアドバイス? も付け加えた。と外面はいつものように豪快なものだったが、内心では冷や汗ダラダラでホッと胸をなで下ろしていたのだ。

 最初さくらをダシに使う事を思いついた時には、ここまで上手くいくとは思ってなかった。もう少し翔子がゴネたり、さくらの方が親友の事を慮って遠慮してしまう事だって充分あり得た。が結果は上々どころか大幅な余禄までついた感じである。ここまで上手くいってしまうと後でしっぺ返しが来るのでは、などといらぬ心配までしてしまう。それ以上に2人の関係性を充分に把握してなかった、そして信頼していたはずなのに少しでも疑う気持ちがあった事に対し、小さいながらも1部隊の隊長としての資質があるのかどうか、自分に対して不安や疑念を抱いてしまう時任隊長なのであった。もちろんそんな素振りは見せないが。

「しっかし、立花は随分『震電』にご執心だなあ。そんなんじゃ茂原で待っている『飛燕』がヤキモチ妬くんじゃないか?」

 小さな自分を誤魔化すよう、隊長はいつものような悪態をついた。が強ち間違ってないと、割と側にいた隊員達は思ってしまう。

 翔子と「『飛燕』23型特」との付き合いは2年を超える。その機体を駆って翔子は【房総沖迎撃戦】で名を馳せたのだ。「『飛燕』23型特」はその後もバージョンアップを続け、現役の機体の中ではトップクラスの性能を持つ。

 もちろんその性格上一概に比較はできないのだが、『震電』とどちらが強いのか、両者を知る関係者なら簡単には答えは出せない。もっとも速度や火力などのカタログスペックでは『震電』の方が圧倒的に上だ。しかし対戦闘機戦闘となれば小回りの利く「『飛燕』23型特」が不利とは言い切れないし、何より長年乗っている分だけ癖だってよく掴んでいる上、信頼感だって半端ではない。が今翔子が『震電』に対して抱いている感情は、『飛燕』とのそれを揺るがしかねないと思えてくる。まあ他人だからこそ思ってしまう、詮無い事ではあるが。

「だいじょぶですよ」

 そんな言葉を受けた翔子は笑いながら答えた。

「今の私は軍人です。だからいつもいつもワガママが通るとは思ってませんし、乗れと言われた機体に乗るだけです。そんな事は飛行機達だって分かってくれますよ」

 聞きようによっては意外とドライなんだな、と思えるようなさっぱりとした言葉だった。周囲の翔子に対するイメージからすれば「乗りたい機体に乗る」と言っても不思議ではなかったから、本当に軽く驚いている者までいる。が当人からすればそんなイメージの方が不思議で、確かにお気に入りの機体はあるが、飛行機なら大抵の機体は基本的に好きなのだ。だからどんな機体だって必要とあらば乗るだろうし、その機体の性能が100%発揮できるよう操縦するのが自分の役割だと思っている。そんな風に考えられる翔子だからこそ、飛行機の方だって翔子の気持ちが分かるし、その期待に応えようともする。凡人、というか翔子以外の人間には分からない感覚だった。

「ならいいけどな」

 隊長は完全に翔子の気持ちを理解した訳ではないが、言いたい事のニュアンスくらいは伝わってきた。だから軽く、生返事のような返しをする。そんな対応にも関わらず翔子は特に気にした風もなく、ニヤッと笑ってそれに応えた。

「それより今日のテストについて、もう少し詳しく話してくれません? でないとまた勝手な事しちゃいますよ」

 翔子は現実的な方へ話を切り替えようとする。飛行機がヤキモチを妬くなんてファンタジーな内容は、他人と感覚が違いすぎて理解されないからあんまり話していたくはないのだ。その辺を察知した隊長はすぐさま実務的な話を始める。

「えーっ、今日は31番滑走路全部は使えないのー!?」

「当たり前だろ、昨日は特別だ。571(ウチ)の試験がさして立て込んでなかったのと、他部隊の訓練が早めに終了したからニアミスの可能性がほぼなかったから許可が下りたんだよ。今日は571(ウチ)も他の機体の試験も行いたいし、何よりもう1機の『震電』がくる。それなのに7号機のためだけに31番全部を割り当てる事なんてできねぇんだ。だから今日は33番だけ。第一『震電』なら600m前後(デコボコ)で離着陸できるんだから1500mもあれば充分だろ」

「私は問題ないけど、さくらの地上滑走には何mあってもいいでしょー」

「私も1500mあれば充分だから無理言わないでー」

 などと相も変わらずにぎにぎしく打ち合わせが行われる。そうやって翔子と『震電』の新たな1日が始まっていった。


Part3へ続く──

この第一六章、細かく切ってしまって申し訳ありません。ですが前にも述べたように長くなりそうだったので、こういうスタイルでの投稿となったのです。

まあ1つの章に収めようとする方が無理なほど長いものになりつつあるので、別々の章にすればいいのでしょうが、ひとまとまりのお話だったのでこういう形を取らせてもらってます。一応短くまとめようと考えてはいるのですが、ついつい書きたい事を盛り込みすぎて長めになってしまう悪い癖から抜け出せません。

特に今回はあるキャラクターが熱く暴走しかけたので、思い切って修正、と言うより書き直しました。

まあ後書きから読む方がいないと信じて敢えて書いてしまいますが、当初時任隊長が熱く語るシーンを書いていたのですが、そうすると長くなってしまうのとストーリー的にずれてしまうかなと思って、いつもの少しいい加減な隊長に戻ってもらいました。

次パートでは翔子の全力試験とさくらの『震電』初搭乗を描く予定です。

またもバタバタするでしょうが、精一杯書きたいと思いますので皆様もそれぞれの楽しみ方で読んでいただけたら幸いです。

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