第壱章 8話
その後、服(シンプルなワンピースとエプロン。ドレスにしろよ、ドレス!)を支給され、給料についての説明を受けた。
「かなり高くしておいた」と言われたが、正直、もっとほしいと思った。
★★★
その一日後。
今日も給料のために頑張ろう!と意気込んでいたが…
何やら玄関がざわざわしている。
気になって玄関を見ると、私と同い年くらいの少年が、騎士たちに迎えられていた。
誰だろう?知らないヤツだな…。
あ、もしかして、かわいいフロラちゃんの噂を聞きつけて、一目見ようとやってきたのか…?
…まあ全然興味はなかったので、すぐに洗濯に取り掛かった。
そして、数十分後。
洗い物を3枚も干し終わったときだった。
いきなり廊下から足音が聞こえたので、かわいいかわいいフロラちゃんのストーカーか!と思い、思わず低木に隠れた。
「なんで『父さんの料理がゴキ◯リのような味になった』なんて噂が立ったのか調査しに来ただけなんだって。
わざわざついてくる必要なんてないだろ?」
…たぶん、さっきの男の子の声だ。
なるほど、トーネルさんの愚息…じゃない、お子さんなのかな?
…そういえば、この声、聞いたことがある気がする…
いやいやまさか。
まあ、他人のことなんてどうでもいいんだけどね☆
と、苦笑いしたその時だった。
「おい。そこに誰か居るだろ。誰だ。」
どすの利いた声が、静かだった中庭に響いた。
「…出てくる気がないようだが…10秒以内に出てこい。
さもなくば敵と判断して、貴様を探し出して切るぞ」
そ、そんな…どうしよう。
出ていったほうが良いんだろうけど、トンネルさんには…じゃない。
トーネルさんには、他の人の前に出たらだめだって言われたし…。
「10、9、8…」
ああやばい!
フロラちゃん、絶体絶命!!!
「7、6、5…」
ここに来て切られるのは嫌!トンネルさんがどうなっても知らん!
と、私は心を決め、一気に台所へと走った。
「!誰だ、お前。」
という彼の声が聞こえたが、無視して必死に走った。が、歩くのと大差なかった(殴)
「はぁ、危なかった…」
って、一命をとりとめたことに安心してないで早くご飯作り!
とんでもなく急いで作ったからレシピなど言ってる暇はない。そして完成したものを、急いで盛り付ける。さっきよりも雑で、変な匂いになっちゃったけど…まあ大丈夫だろう。
急いでもおいしいメシ作れるフロラちゃんやばーい(-д☆)キラッ
踊りながら部屋を出た。反対側から、あいつが見ていたということも何も知らずに。
急いで着いたのは私が使っている部屋。
案外ホコリっぽいから、掃除しなきゃなぁ…
とか思いつつも、いつも忙しいせいで何も出来てないのだ。
せっかく時間があるし、掃除でもしようかな!
雑巾とバケツは用意しておいたから、これを絞って…。
…うわぁ、ちょっと床拭いただけでこんなに真っ黒!
フロラちゃんみたいなお姫様がやる作業じゃないじゃーん!
まあでも、フロラちゃんは心が広すぎるから、怒らない!!
やっさし〜!
ニヤニヤしながらも、一生懸命床をこする。
これから自分が過ごす部屋だもん、清潔にしておきたいでしょ?
あらーっ!キレイ好きなフロラちゃん、お上品ですてきーっ!
…ごしごし…。
しんとした部屋に掃除の音だけが響いて、何だかつまらない。
「なんか歌おっかな…。」
歌、そういえば好きだったな。
一番よく覚えてるのは、高校時代に合唱コンクールで歌った、あの思い出の曲…。
うろ覚えで歌っていると、外の鳥たちが苦しみもだえて床に落ちているのが見えた。植物もぐったりしている。
えー、私の歌、そんなに美しかったぁー?もー。
デレデレしていると、ドアがギーッと鳴って開いた。
さっきの男の子!な、なんで…。
「…さっきのやつじゃねぇか。本当よく逃げてくれたぜ。」
不敵な笑みを浮かべると、彼はガッと私の腕をつかんだ。
ぎゃー!何勝手にフロラ様のお腕様をつかんでんのよ!
「さて、質問の続きだ。
お前は誰で、どうしてここに居るんだ?」
そう言うと彼はドアを思いっきり蹴って閉じた。
きゃあ、乱暴!フロラぁ、怖いわぁ。
「で、お前誰?この状況ならどうなるか分かってんだろうな」
「…えぇ?ふろらちゃん わっかんなーい!(棒)」
(・Д・)チッ…まじで、あっちいけや!
てか、私の美声(音痴な歌声)をタダで聴いて、お金も払わずに…最低だな!
「とぼけるなよ。真面目に答えないとお前だって困るだろ」
「…………」
「ふん、じゃあ改めて聞こう…お前は誰で、なぜここに居る?
ついでにあの歌はなんだ。
そして、今日の昼飯だが…食べた奴らは全員救急搬送されたぞ。どういうことだ。」
…いきなり失礼な質問が来た。
でも、そろそろ正直に答えないとまずい…。
「…私はぁ、国民的アイドルのぉ、フロラ・ブラン〜。」
ここに住みついてる…じゃない、住み込みで働いてあげてるの☆」
「なるほどな。じゃあ歌に関して聞くが…」
「何でぇ あんたぁ フロラちゃんの歌をタダ聴きしてんのぉ?
そもそもぉ 救急搬送とかぁ 嘘つかないでよねぇ。
フロラちゃんのぉ ご飯にぃ 毒でも入ってたって言うのぉ?
マジぃ しんじらんなぁーい!」
…つい、キレてしまった。
「…みらいかよ」
ボソッと呟いた声を、今回は聞き逃さなかった。
フロラちゃん洞察力ヤバ〜い!…ところで、洞察力って何?
「…ほら…早くそっちも名乗ったら?」
「…ブリーアン・ブラキス、雷属性。お前は…花川未来?」
は?何で知ってんの?ストーカー?
「おいおい…ブリーアンを和訳すると、晄だぞ。」
じゃ、じゃあさっきの歌を知っていたのも、合唱コンクールで一緒に歌った仲間だったから…。
「…雷田晄。それが…あんた?」
「…そういうところを見る限り、お前…未来なんだな。
っていうか、なんで歌も料理もあんな下手になってんだよ。」
その笑顔を見て、抱えていたものが一気に押し寄せてきた。
つまり、腕に抱えていたバケツの水を自分にかけてしまった。
「ぎゃっ!冷てぇっ!」
じゃない、なんであのとき、居なくなったの。辛かったなら言ってほしかった。…別に良かったけど。
は、は、はっくしょん!ズズッ、ぶるぶるぶる…。
「じゃない、なんで、私を置いていったの?」
まあいいんだけどね!
ふぇーーーーーっくしょおおおおんっっっ!!!!
「雷田晄。
幼馴染で、親友で、そして…すごくすごく…」
いや、言うほどでもないけど、まあ、
「大切な人だった…」
かな?
「…幼い頃、幼稚園で一人ぼっちだった私に、声をかけてくれて、」
いやしくつきまとってきたのも晄。
「小学校でいじめられた時、」
邪魔なのに
「助けてくれたのも、晄。」
「さすがに中学生になると、カップルとか言われていじられることもあったから、距離をおいた時期もあったと思う。
でも、大変な時はずっと晄がそばにいてくれた。」
「…そう、私は思っていたんだけど。
彼は中学二年生の時…自殺してしまったのだ。」
「でも…彼が居なくなってから、どうしても辛くて苦しくて…」
っていうほどでもなかったけど。
あ、嘘です。辛くて苦しかったです。はいw
「…悪かったよ。ごめん」
「…それだけで。
その一言だけで、こらえていたものが溢れてゆく。」
まあ、真面目な顔でノッてくる晄が面白すぎて、笑いすぎて涙が出てきただけなんだけどね!
「…親も失ってさ、あいつに追い詰められたから。
…でも悪かったよ、ほんと」
「…こんな言葉で許せるわけないよ。」
まあ、別に許すけど。
「でも…でも。」
「また会えて…良かった? いや、別にそうでもない・・・
もう二度と会えないんだって思って…悲しかった …?のか?
もう勝手に私を残していか… いってくれて、私は楽だった!」
「…み、未来…?」
「晄、気付けなくてごめんね なんて言ってあげるなんてフロラちゃんやっさしー! でもまた会えて本当に嬉しい くらいどーでもいい話なんですけどw 今度はちゃんと幸せに生きてほしいから、私にできることならまぁ、
私が幸せなら他の奴らはどうだっていいけどw」
「…?未来、なんか…言葉がごちゃごちゃしてるぞ?」
晄がなぜか困惑してる。
「うん…うん?えぇ〜なにぃ?ごちゃごちゃってなにぃ?
てか晄が勝手に死のうが私どーでもよかったんだからさぁ。
あんたに何の思い入れもないのよwww」
「…。未来、お前さ…何かあったのか?
そんなんじゃなかっただろ、、?」
放たれた言葉に私は気づくことなく、(めんどくさかったので無視しただけ)、そうじ道具を手に取った。
「じゃあ、おそうじ行ってくる♡」
おそうじ戦隊フロラちゃん、しゅっつどーーーーー!
かわいくポーズをとってから、私は部屋を出た。
「また、出会うことが出来て幸せだ…ん?私なに言ってんだ?
いや、どうでもいいなw」
ぽつりと出た言葉に自分で笑い込んで、廊下をほうきではく。
「…目、腫れてるがどうした。」
しばらくすると聞こえたトンネ…トーネルさんの声。
そちらを向くと、トン…トーネルさんと、その他の騎士たち数名…。
「へ、部屋でほこりをタテテ、目に入ってイタかっただけデス。」
バレないかとひやひやしたが、どうやら重点はそこでは無かったらしく、軽く流されてしまった。
「そうか…説明願いたい事があるんだが…
ブリーアンになぜ、自分のことを話した」
あ…。ま、いっか♡
「御者のジゼルに伝えられたよな?
あいつが忘れたってことじゃああるまいし…」
ジゼルさんに罪を被せようと思ったけど、何て言えばいいか分からなかったので、私は素直に言うことにした。
「言われました…でもブリーアン…さんに刀で脅されたのでぇ。
フロラちゃん怖かったのぉ、うえーん。」
きゃー!正直なフロラちゃんすっごい!
「…しつけが必要なようだ…連れて行け」
はぁぁぁ!?!?
トーネルさんの言葉に従って、あたりにいた騎士が私を拘束して…
私は地下牢へと連行されてしまった。
きゃあああっ!かわいいかわいいフロラちゃんに何するのよぉ!
もぉ、許さないんだからぁ~~~♡
「…おまえらぁ~♡ 黙秘権侵害だぁっ(???)」
黙秘権侵害…
自分で言っといて、意味がわかんないけど、響きがかっこいいから使ってみたぁ!
「うるさい、主人に従うのが、お前の役割だ。」
「私は犬じゃないワン!
そもそも主人に従わない犬もいるはずだワンワン!」
「…それ犬だろ。」
プツリと、本日二回目のブチギレタイムがやってまいりました~。
イエーイ!…ん?一回目あったっけ?
「私は学んだぁ…人はぁ、自由でぇ、文化的なぁ、生活をぉ、営むぅ、権利がぁ、あるってぇ…
奴隷なんてぇ、人権にぃ、反してぇ、いますぅ!」
ところで文化的って何?営むって何?権利って何?人権って何?
トーネルさんは呆れたように笑い、何かを棚から取り出した。
…ぼろぼろになった人形だ。
ぶるぶるぶるぅっ、こわいよぉ!何する気なのよぉ!
暗い地下室に、ジャッと一筋の光が走った…イナズマだ!
それは人形に直撃し、人形がさらにぼろぼろになった。
「指示に従わないのなら、この人形のようにするぞ」
はァァァ!?きったな!なんだよそれ!
「お前はずっと指示に従う奴隷だよ…」
嗤るように言われ、魔法でしばりつけられる。
大して痛くはなかったけど…
ぎゃああああああああああああ!
痛いいいいいいいいい!
「ああああああ!さいってい!」
フロラ虐め、略してフロ虐(?)を楽しむなんて最低~~~!
…あ!でもじゃあ、そのイナズマー一回打つごとに100000000円くれるなら、考えてあげ…
言い終わる前に、トーネルは手を銃のようにして、
「もういい。」
と言った。
すると、ジャッと指先から稲妻が発生し、私の足に当たった。
「いやあああああああああ!?!」
痛い!や、本当に…本当に死んじゃうよぉっ!!!!
電気びりびりぃぃぃ!助けてぇぇぇぇぇぇっ!!
「どうだ?従う気になったか?」
「あーはい!屈しますぅせんっ!私以外のやつはどうなってもいいから、絶対私の命だけは、もとに戻るどうかっ!」
トーネルが何かを言いかけたときだった…
バンッとドアが大きな音を立てて開いた。
「いや~9歳相手に魔法とか、大丈夫?」
いやあ、フロラちゃん。怖いですね。
応援よろしくね!
今回はかなりの大容量です!!いつもの2倍くらいあります!!お得だね!




