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第二十一話「混沌の使徒 邂逅」

二章の最後にも掲示板回追加しました

読まなくても問題はないので、気になった方だけ見てみてください

 魔術大祭会場に響く轟音。

 考えるまでもなく遠方で落ちたあの巨大な白炎の柱が原因だ。

 そしてそれの合図を出したのはここにいるロリショタ──。


「──っ! 縛鎖!」


 白炎からロリショタに視線を戻したと同時、美澄さんの手を振りほどいて雄二へ──いや位置的に恐らく幼女目掛けて走り出したロリショタたちを咄嗟の判断で雄二が拘束する。

 あれは、『千鎖』お得意の鎖魔術による拘束。

 まだ状況もなにも理解できていないだろうに、咄嗟にその行動を取れるのは流石位階指定Aの冒険者か。

 僕が動いても間に合っただろうが、間違いなく頭の一つでも潰していた。

 やはりこういう拘束という面で雄二の魔術は頼りになるな。


 と、今はそんなことを考えているときじゃない。


「一体なにが起きてる!? あの白炎の柱はなんだ!?」

「真衣ちゃん、こっちへ!」


 状況の把握に戸惑う姫とロリショタが狙ったと思われる幼女の保護を優先する美澄さん。

 姫も腰に差した剣……よく見れば僕が【ガチャ】で出したあの装飾盛り過ぎじゃないかという剣に手を当てている。

 周囲の来場客はなにがなんだかわからないと立ち止まる者、避難を開始する者とまちまちだ。

 ここにいるのはコスプレイベント来場者……つまりは魔術を持たぬ一般人。

 この展開に自身で対処する術を持たぬ者たちの行動は二つに分かれた。


 混乱し立ち止まる者と、恐怖し逃げ出す者だ。


 だが僕らに限っては間違いなくここで立ち止まっていては後手が過ぎる。

 もう現段階で後手なのは確かだが、犯行と関係ありそうなロリショタが幼女を狙い未だその幼女がこちらにいる以上、まだ最悪の状況には陥っていない……と思いたい。


 咄嗟にロリショタを拘束した雄二が少し落ち着いたのか尋問を開始した。

 僕は会場に漂う悪意の糸を注視しているが、如何せん恐怖や混乱が伝播しているせいで余計なものが混じる。

 そっと執行者端末にも目を向けるが……未だ連絡はなし、か。


「お前たちなにをした!? さっきの電話の相手は誰だ? 目的は? なぜ真衣ちゃんを狙った!?」


 横から雄二の強い語調での尋問が聞こえてくる。

 横目でそちらに視線をやればしかし、ロリショタはただ困ったという風でひそひそ会話をしていた。


「ん。失敗した?」

「ん。でもお婆ちゃんは動いてる」

「ん。でも時間もない」

「ん。この国の執行者も動いてるはずだって」

「「ん。でもすぐにお婆ちゃんが来るね」」


 その会話の中に頻繁に出てくるお婆ちゃん、という単語。

 何故もクソもなく、非常に嫌な心当たりがある。

 それは昨日リストで見た老婆。

 それは昨日会場で見た老婆。

 それは元執行者として警戒される裏組織混沌の使徒のトップ……コード『不死鳥』。


 戦うことになるのか?

 この人の多い会場で、執行者()元執行者(老婆)が?


 笑えない冗談だ。


「くそっ、ダメだ皆! この子たちはなにも喋る気配がない、移動しよう!」

「雄二! でも移動するってどこに!? 安全な場所なんてわからないわよ!?」

「それは……っ」


 そうだ、移動するのは大賛成だったが、場所とタイミングが悪かった。

 いやだからこそこのロリショタは今を決行の時と定めたのか?

 先程のインタビューもあって周囲の人口密度が高く、なおかつ混乱もあって動くに動けない。

 それにこの近くにはまだユキトイキが──。


 ──と、再度破砕音が響き渡る。


「──っ!? またか!?」


 雄二がフードの下で顔を顰めた。

 だがそれは僕も同じこと。

 狐面の下で、僕は音の発生元に視線を巡らせる。

 連続して前後左右から……これは囲まれたか。


「きゃああああっ!」

「なに!? なになんなのよこれ!?」

「お、おいどいてくれ! 動けないだろ!」

「うるせぇ! お前こそどいてろよ!」

「皆さん落ち着いて! 係員の指示に従って行動をしてください!」


 断続的に響き続ける破砕音に今まで立ち止まっていた者たちまでもがパニックに陥る。

 それはまるで人の群れを誘導するかのように、破砕音が群れを追い立てる。


 ──流されてるな。


 そうは思うも、今は注視すべき者が多すぎた。

 幼女は勿論、姫や雄二たち、それに今は見えないユキトイキ。

 普段僕の執行任務はただ対象を始末するだけで、守る戦いなんてしたことがない。

 いや実際はあったのだと思うが、そのとき僕は明確に守らなければなんて思ったことはなかった。


 ただ秩序を乱すものに死を。

 それが今までの僕の在り方であったはずなのに、この祭りで随分と追いやられたものだ。


 流れる人だかりで皆とはぐれないように、姫と手を繋ぎ纏まっている雄二たちの側を漂う鎖を強く握りしめた。


 そして──。


「ん。お婆ちゃん!」

「ん。連れてきた!」

「「ん。計画通り?」」


 流された先、百人以上の人だかりが収まる広場で、そいつらはいた。


「あらあら、拘束されちゃったのね二人とも。可哀そうに……」

「んあ? おいおい自由戦の熱線の魔女がいるじゃねぇか。よく会うなぁおい!」


 身体から白炎を燃え上がらせる老婆──コード『不死鳥』と。

 赤銅色の鎧のような【霊装】を纏った赤垣褐色肌の大男。


 背後に混沌の使徒構成員と思われる黒ローブの者達を控えさせた老婆は捕まったロリショタを見て眉を下げ……僕を視界に捉えて不快そうに顔を顰めた。


「あらあら……余計に過ぎる邪魔者が目標と一緒に……はぁ」

「ん……お婆ちゃん?」

「ん……なにか間違ってた?」


 ……そうか。

 思えば執行者という国の切り札が側にいる状態でロリショタが好機と捉えるはずもない……となれば、知らなかった、ということなんだろう。


 あの老婆の目標とやらがこの幼女であるのは最早間違いない。

 それが殺傷なのか誘拐なのかはまだ不明だが、一つはっきりしてるのは、僕という執行者がオマケでついてきたのは予想外に予定外が過ぎるということ。


「……取引といきましょうか、執行者」


 空を見上げながらそう提案をする老婆を見て、どうやらこの状況、まだ最悪とは程遠いと確信した。

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