第二十話「ピッ、パッ、ポッ……」
毎日投稿厳しそうなので週一投稿にしますm(__)m
何曜日とかは未定ですが、多分土曜とか日曜とかそこら辺になるかと。
思いの外ストック溜まったらもっと更新するかも?
コスプレイベント会場。
昨日推しのユキトイキ……いや、スストイキも訪れ配信したこの場所だが、ここは魔術師の祭典に用意された非魔術師のための場所というだけあって魔術師は少ない。
そりゃ魔術師の祭典に来てまで魔術関係ないところで遊ぶ魔術師は少ないだろうよ。
そんなここに僕は幼女を連れた雄二らと共にやって来たわけだが……。
現在僕の目の前に、そのコスプレ会場で遊ぶ少ない魔術師たちが存在した。
勿論のこと、共に訪れた姫や雄二たちのことを言ってるんじゃない。
誰あろう、スストイキであった。
いや昨日ここに来たのは配信で知っていたが、まさか連日同じ場所を訪れようとは思わなんだ。
一応推しは魔術師であったはずだが、はて……。
「インタビューですか……? 面白くない受け答えで良ければ、構いませんが……」
のじゃ口調が鳴りを潜めたお淑やかバージョンのタマが鈴の鳴るような声でそう言う。
推したちはなぜか絶賛インタビューを受けている真っ最中だ。
【霊装】を解いてスストイキ状態で歩く彼女たちは、【霊装】状態より余程目立つ。
良くも悪くも【霊装】はビジュアルに補正をかけてくれるから、それのない状態で人目を惹く彼女らの容姿は非常にインタビュー映えするのだろう。
「なんかすごいキャラの濃い人たちだなぁ。なんのコスプレか知らんけどちょっと見て行かないか?」
横で遠巻きに見ていた雄二が興味を持ったのかそう提案する。
僕として推しの生インタビューを見れるなんてこんな嬉しいことはないので大賛成だ。
だがな雄二よ、彼女らのキャラが濃いのはコスプレに力を入れてるからじゃないんだ。
深窓のご令嬢タマ。
メスガキロリミオ。
我黒騎士レン。
これは素なんだ。
いや本当に素かは断言できないが、少なくともユキトイキコスプレのキャラではないだろう。
これは最早スストイキという新たなる境地。
流石は僕の最推したち、まさか同一人物を二重に最推しさせるとは唸らせてくれる。
そんな彼女たちが気になるのは僕たちだけじゃないのか、周囲にはいつの間にか結構な数の見物人が群がっていた。
どこを見ても色とりどりなコスプレ衣装の集団が一点を中心に囲っている。
なんの儀式だ。
しかしこれだけうるさい視界の中でこの密度じゃ、魔術師じゃない一般の幼女のような子供は大変なんじゃないか?
横を見れば姫はすぐ側に。
ならばと反対の横を見ればそこには雄二と雄二に手を繋がれたロリショタが……ん?
幼女分裂したか?
いや幼女は美澄さんに手を繋がれてそこにいる。
では雄二がさも当たり前のように手を繋いでいるこのロリショタたちは……?
「はぁ……」
ピッ、パッ、ポッ……
「待って待って京助。気付いたなら先に声掛けないか普通? ……ってあれ? 京助携帯出してない……?」
「僕じゃないぞ。そのロリショタたちがセルフ通報してる」
「待って? この子たちから手を繋いできたんだよ? 俺本当になにもしてないからね!?」
「当たり前のように受け入れてた奴がなに言ってんだ」
「いや迷子を放っておくこともできないだろ!?」
などと雄二は供述しているが、セルフ通報するロリショタの手は止まらない。
美澄さんと美澄さんに手を繋がれた幼女も、白けた目で雄二を見ていた。
だが一つの携帯を二人で操作していたロリショタはそんな僕たちのやり取りを意に介さず、一通り操作を済ませたあと携帯をしまった。
「ん。お婆ちゃんに連絡とってた」
「ん。もうじきこっちくるって」
「「ん。問題ない」」
どうやらセルフ通報の相手は警察ではなかったらしい。
携帯をしまったロリショタは雄二から手を放すと幼女のもとへと駆けて両手を繋ぐ。
そのロリショタを挟むように雄二と美澄さんが左右から手を繋ぎ、傍から見ると大家族って感じだ。
しかしまぁ親御さん……というか保護者?
祖母さんが迎えにきてくれるならこのロリショタの心配はいらないのだろう。
にしても子供の迷子が多い気がするが……お祭りならこんなものなのか?
ただ謎に雄二の周りに迷子がやってくる確率がバグってるだけで、全体で三人ならそうおかしくはないのかも。
「──ではずばり! このコスプレ会場に来ているタマさんに質問です! あなたの推しは誰!? 冒険者とかでも可ですよぉ!」
……っと、唐突に増えたロリショタに気を取られている間に、随分の推しのインタビューが進んでしまったようだ。
なになに、今の質問はタマの推しについてか。
まぁ彼女らのコスプレから言って順当にユキトイキと宣伝するか?
「『魔人』」
おぉ、端的だ。
タマが僕の活動を見てくれているのは知っていたが、こういう場でも迷わずそう即答してくれるのは嬉しいことだ。
当然といえば当然だが、スストイキになってもタマの中身はタマらしい。
「あ~執行者『魔人』! 今『千鎖』の影響もあって知名度高いですよねぇ~! ところでこのコスプレ会場にはその『魔人』コスの人達も割といるわけですが……お淑やか美人に見られるとあって衣装を整える彼らの中にこれはアリと言える人はいますか!?」
ざわっ、と。
『魔人』コスを整えていた者たちがタマに注目したのがわかった。
タマもインタビュアーの質問に律儀に視線を彷徨わせる。
彼女の視線が顔と共に動く度、その先にいる『魔人』コスの者達がシャキシャキとポーズをキメるのがなんだか恥ずかしい。
タマはそのまま視線を一周させ……途中、狐面の僕のところで顔を止めた。
今の僕は『魔人』コスでもなければ【魔法霊装】を纏ってもいないが……彼女のコスプレをしているから目に留まったのかもしれない。
しばしじっ……と見られた後インタビュアーに視線を戻したタマは、言った。
「『魔人』コスで推せる人はいませんね」
と。
周囲からは落胆の声が挙がるが、正直僕は少し安心した。
別に『魔人』の外見などただ僕の魔法の象徴となる姿が【魔法霊装】という形で表れているだけだが、それでも生まれてからずっとその外見で活動してきたのだ。
それをただ真似たというだけで推しが絶賛する姿はあまり見たくなかった。
我ながら我儘かもしれないが、僕はタマが僕の活動を見てくれることがやっぱり嬉しいんだと思う。
その後、インタビュアーはミオとレンにも同様に質問を重ねていき、ミオのメスガキムーブに周囲が煽られ、レンの我黒騎士に過去の傷を抉られる者が続出し……と、ただのインタビューなのに随分と楽しい時間を過ごせた。
やっぱり推しは最高だ。
「いや~濃厚な時間をどうもありがとうございました! ではでは、この先も魔術大祭をお楽しみください! ほれほれインタビューは終わりだぞお前らー! 散った散った!」
しかし楽しい推しの時間ももう終わり。
続きは帰ってから推しの配信アーカイブで楽しむことになるだろう。
散ったと言われてもすぐには動かない人だかりを視界に、僕らはしっかりとした足取りでその場を離れた。
幼女の手を雄二が繋ぎ。
ロリショタの手を美澄さんが左右の手で握る。
姫は相も変わらず僕の横でエスコートを継続し。
僕はふと視界に流れた濃い色の悪意を自然と目で追って──
ピッ、パッ、ポッ……
携帯を操作するロリショタのほうで、視線が止まった。
「ん。お婆ちゃん?」
「ん。今がいいと思う」
「「ん。作戦開始」」
そのロリショタの言葉と共に。
天から落ちる白炎の柱。
遠方で轟音を轟かせたそれは。
魔術師の祭典に、宣戦布告の狼煙をあげた。




