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第十八話「秩序を──者」

執筆が間に合わない……ので、これからしばらく書き溜めしようと思います。

今度こそ三章完結まで書き上げて毎日投稿する!


応援よろしくお願いします!


(2026/06/07)追記:一章の最後に掲示板回を追加してみました。気分転換に書いただけなので苦手な方は読まなくてもストーリーに影響はありません。これから章の終わりとかにぼちぼち挟めたらと思います。最新話更新じゃなくてごめんなさいm(__)m。

 魔術大祭一日目が終了した。

 ホテルに戻った僕は一人推しの配信アーカイブを視聴している。

 どうやら今日推しのユキトイキはコスプレイベント会場にて自分たちのコスプレをして散策したらしい。

 なにを言ってるのかよくわからないかもしれないが、本当に推したちが自分たちのコスプレをしているのだ。


 曰く……コスプレ会場で【霊装】をコスプレと言い張るのはなっとらん! ……との、ユキトイキ談。

 個人の感想ですよ。


 まぁそもそも【霊装】をもたぬ一般人が好きにコスプレしてなんちゃって【霊装】を楽しむ場所のようだし、推したちは時々自分たちが魔術師であることを忘れるきらいがあるからむしろ一番似合ってるイベントだったのかも。


 コスプレイベント会場はただコスプレを見せ合う場所ではなく、コスプレ状態で用意された広い祭り会場を楽しめるというコンセプト。

 魔術師系配信者でありながら【霊装】を解き、一般人の姿が結構見える、けどやけにクオリティの高いコスプレを配信で見せたユキトイキ。


 タマは【霊装】を解除すると結構身長高くてびっくりした。

 ユキトイキのイメージカラーたる純白は濡羽色の艶のある黒髪によってまったく真逆の印象を与える。

 【霊装】を解いた瞬間いつもののじゃロリ口調が鳴りを潜めたのは流石僕の最推しだ。

 というかタマのアホっぽさが消えて深窓のご令嬢みたくなったのには何年振りにか精神を揺り動かされたぞ。

 深窓のご令嬢タマ……推せる。


 【霊装】状態で色々でかいエルフのミオは解除したら逆にロリっ娘になった。

 いつもの「~ですぅ」みたいな口調がやけに煽られているようでメスガキ感が溢れ出る。

 こちらも綺麗な濡羽色の黒髪で、推したちって実はいいところのお嬢様だったりするのか? と疑問に思った。

 それにしてはいつも金欠だったけどな……。

 でも迷宮遺物で大金が入っても変わらぬ生活をするのはお金に慣れている証なのか?

 ん、タマ?

 タマならお小遣い制でミオとレンに管理されてるよ、文句の一つもないどころかよろしく! といい笑顔で言えるのは流石僕の推しだ。


 そしてレン。

 【霊装】でもむっつりスケベ感がいつも溢れていた彼女は、【霊装】を解いてもむっつりスケベ感が溢れていた。

 見た目で一番変化がなかったのも彼女だろう。

 純白の女騎士が漆黒の女騎士になったくらい……一番物語性のありそうな変化だな?

 だがレンに至っては【霊装】を解いたらなぜか一人称が我になった。

 あれは漆黒の女騎士に合わせているのか、それとも素の一人称がまさかあれなのか……【霊装】解いても個性が強すぎるユキトイキだともうどっちでも驚かない。


 斯くして推しのユキトイキは今日に限ってスストイキとなりイメージカラーを黒にした。

 黒というか三人共綺麗な濡羽色で煤という感じはしないが、なかなか見れない光景を見れたので僕は満足だ。


 配信の中ではスストイキが様々な催しに参加しているが、総じてそのたびにもの凄く注目されている。

 【霊装】状態のユキトイキより一般人状態のスストイキのほうが注目浴びるとはこれ如何に。

 彼女たちは魔術師系配信者であったはずだが、はて……。


 キャラ性も様変わりし新鮮な気分で見れるスストイキ。

 やはり推しの配信はいい。

 明日からも姫や雄二たちとは共に祭りを回ろうと声をかけられているが、それなら是非ともこのコスプレイベント会場に行ってみたいと伝えるか。

 コスプレなんて用意してないけど、開催側で貸し出しもやっているようだし、なにより僕はどちらかといえば魔術師ではなく一般人枠……は無理があるにしても、まぁ魔術師ではないのだから悪くないチョイスだ。


 流れで押し切られるように交換した連絡先を見る。

 姫、雄二、美澄さん。

 執行者の仕事以外で誰かの連絡先が増えたのは初めてかもしれない。

 コスプレイベント会場に行きたいという要望をメールで送って、推しの配信の続きを見るか……と思ったら携帯が震える。

 返信が早いな、これが陽キャなのか? と、携帯を再度見れば。


『執行者『魔人』へ通達。魔術大祭にて要注意対象を複数確認。警戒を厳にされたし』


 添付されたデータファイルと共に、執行者本部よりそのような文面が届いていた。

 無言でデータファイルを開く。

 そこには、二十名あまりのリストと全員が魔術師であることなどの簡単な情報。

 そして……。



 【要注意監視対象】

  元執行者:天音 飛鳥

  コード :『不死鳥』

  監視理由:ある事件を境に表の世界より失踪。裏で『混沌の使徒』なる組織を築き上げたと思われるが、詳細は不明。現状彼女が関与したと思われる事件などがないため執行対象外だが、『混沌の使徒』構成員と思われる者たちが魔術大祭で複数確認されている。

 執行者『魔人』には元執行者『不死鳥』への重点対応を求める。



 他より大分多い情報と共に、今日魔術大祭で会った、あの老婆の写真が載せられていた。


 ……重点対応、か。


 これは他の構成員は国の魔術師で対応するから、魔法使いは同じ魔法使いの僕で警戒しろ、ということだろう。


 携帯端末を閉じて息を吐く。

 ……少し、気を引き締めたほうがいいかもしれない。

 姫や雄二、美澄さんと過ごす時間で緩んだ気持ちを立て直す。

 執行者と元執行者が本当に戦うような事態になれば、正直学園の敷地がどうなるかもわからないからそれは避けなければならないところだ。

 けど相手の目的がわからない以上、なにをしてくるのも想定しておく必要がある。


 まぁ警戒しろと言われても、本部のほうでも『不死鳥』の足取りを追えていないようだし、見つけることも僕では難しいのだけれど。


 だからこれは覚悟の問題だ。

 今日、僕は雄二のあの言葉以降ずっと考えていた。


『──彼ら執行者が秩序を願う者なら、俺たちだってまた秩序を願う者じゃないのか?』


 あの言葉をずっと、僕は否定していた。


 秩序を願う者?

 違う。

 僕らは秩序を守る者だ。


 願いなんかで秩序は齎されない。

 秩序なんて理想に中身はない。


 いつだって僕たちの中にある秩序は、現実なんだ。


 きっと雄二は上を見上げて、眩い天の中で輝き続ける〝理想〟なんて形の秩序に手を伸ばしているのだろう。

 素晴らしいことだ。

 実現できたらそれがなにより素晴らしい秩序の形なんだと思う。


 でも現実は違う。


 理想で秩序は守られない。

 僕ら執行者はいつだってこの手を血で汚し、血に濡れた地の底にある秩序という〝現実〟を目指し続けてきた。


 ただの言葉の綾なのかもしれない。

 けど、秩序を語るに願いなんて言葉は必要ない、必要なかった。

 雄二は秩序のために人殺しを認めるか?

 雄二の願いの中に、人殺しによる秩序の形は含まれているのか?


 ()()()手が届くなんて妄想は要らないんだ。

 僕の中でそれは抱いてはいけない類のものだから。


 だから雄二、これは僕の覚悟の話だ。

 僕は君の隣で戦わないし、戦えない。

 綺麗な理想の秩序を願う君を、僕の血で汚すわけにはいかないから。


 なに簡単な話だ。

 雄二たちが願う秩序を、僕が守ればいいだけのこと。

 例えそれが裏で血に濡れた秩序であろうと、雄二たちから見て綺麗に秩序が保たれているのなら、それこそが僕ら執行者の求める結末。


 推しの配信に目を向ける。

 この場の誰も、魔術大祭で暗躍する混沌の影など予想もしない。

 それでいいのだ。

 彼女たちがいつまでも綺麗な秩序を見ていられるように、僕ら執行者はいくらでもこの手につく血を血で上書きする。


 配信を閉じ、僕は立ち上がって鏡の前に立った。

 頬に手を当てる。


「……笑顔、練習しないとな」


 知人たちの前で、ずっと無表情でいるのはよくないよ。

(念のため)三章完結ではないです

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