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第五話「冒険者ギルド 取引所」

 待ちに待った休日だ。

 平日のあれこれ?

 ぼっちの僕が学校であれやこれやなんて起こすわけないだろう。

 学校で暇な時間はユキトイキの配信、時々冒険者デビュー少年の話を聞く程度。

 主人公的ポジションの実は凄いんだぞ少年も学校で物語を展開させることもなかったしね。


 さてそんなわけで僕は今休日を謳歌すべく、冒険者ギルドの取引所へと訪れている。

 ここは冒険者がダンジョンで得たアイテムを販売する場所で、職員による鑑定魔術が安全の保証をしてくれているらしい。

 何気に僕も来るのは始めてだからどんなものがあるのか実は詳しく知らない。

 先日見たギャル系冒険者きりえすも使った結界石とかそういう物が売られているとは聞くけど、果たしてダンジョンに潜らない僕にも魅力的な物はあるのかどうか。


 取引所の中を適当に歩きながら商品を見る。

 聞いていた結界石や似たようなアイテムがずらりと並べられる中、時折頑丈そうなガラスケースに収まったアイテムも見られる。

 雑に……というほどではないが、多く並べられる物は魔術的な効果しかない一般アイテムなのだろう。

 それでも結界石一つで数万円するのは決して安い買い物ではないが。


 対してガラスケースに収まる主張の激しいアイテムたち。

 これらは魔法的効果のあるアイテム、所謂迷宮遺物というものであるらしい。

 魔法というと執行者がイメージにしやすいが、先日きりえすが遭遇した災厄種や、こういった迷宮から出土されるアイテムにも宿っていることがあるようだ。


 一体どんな効果の魔法が宿っているのか、気になって手近なガラスケースに展示される迷宮遺物の説明を読んでみる。



【閉ざされた箱庭】

:息を吹きかけると冷気が漏れ出る



 とてもしょうもない魔法の解説だった。

 いやこの迷宮遺物を馬鹿にしているのではない。

 これはあれだ、鑑定魔術をかけた職員が悪いのではないだろうか。

 名前は【閉ざされた箱庭】という大層なものだとわかっていて、何故こんな手抜きな鑑定結果でここに展示している?

 もしや魔法というものを理解していないのだろうか?


 僕の魔法も、というか執行者や、独自の魔法を持つ位階指定S以上の災厄種もそうであろうが、魔法というものは概念を詰め込んだ総称のようなものに過ぎない。

 それは例えば【聖女】という魔法があったとしよう。

 それにはどんな魔法の効果があるのか?

 【聖女】に関する力はすべてあるに決まってるだろう。

 回復も。

 結界も。

 加護も。

 浄化も。

 どれか一つなんてことはない、これらすべて、いやこれ以外にも関わる力すべてが【聖女】という魔法の力となる。


 これも同じだ。

 ここに置かれる迷宮遺物【閉ざされた箱庭】というこれも効果が一つなんてことはあり得ない。

 どんなに力の少ない魔法だって最低三つはあるんじゃないだろうか。

 まぁその三つという例も大雑把に纏めて、という話だが。

 というか正に僕の魔法は大雑把に三つの力しかないんだが。


 それはいいとしてだ。


 取引所では職員による鑑定魔術で安全が確認された物だけを売っていると聞いていたが、この様子では果たしてどこまでそれを信じていいものかもわからないな。

 この【閉ざされた箱庭】だって、ただ息を吹きかけると冷気が出るだけ、なんてことはないだろうし。

 こんな氷の彫刻みたいなキューブでも魔法が宿っているならもっと相当な力が……どこかで見たことのあるアイテムだ?

 というかこれ、よくよく見たら出品者がユキトイキってなってる。

 おのれギルド職員め、推しの初発掘のアイテムにいい加減な鑑定をしやがってからに。


 職員を呼んだ。

 一括で購入した。


 まったく、買うのが僕でなかったら推し発掘のアイテムで誰かに予期せぬ事態が降りかかっていたかもしれない。

 危なかったね。


 因みに説明書きであれだけしか効果が発覚していなかったのに、お値段はちゃんと迷宮遺物らしく高かった。

 でもこの支払い額の大部分は推しのユキトイキに渡るわけだから全然構わない、もっと高くてもいいくらいだ。


 僕は久しぶりに使った漆黒のカードを懐にしまう。

 稼ぎばかり大きくてこんなカードまで持っているけど、実際推し活で癒しは十分だから消費が収入を上回らない。

 時々でもこうして大きな買い物をできたのは推しに感謝だ。


 にこにこ顔の職員が迷宮遺物を頑丈なケースに包んでいる間、暇なので他に良さげな物はないかと視線をずらす。

 もう推しの出品は買えたからこれで帰ってもいいのだけど、ギルド職員の鑑定があれでは他の迷宮遺物も金の暴力で回収したほうがいいかもしれない。

 一応職員には鑑定をもっとしっかり、と伝えはしたけど、職員の多くが中級鑑定までしかできなくてなかなか上級鑑定のできる人材は集まらないらしい。

 大変申し訳なさそうにしていたが、あの人も僕がカードを出す前までガキの冷やかしかと見ていたのを知っている。

 実際僕は高校生でガキだから仕方ないことだが。


 結局お金にいわせて取引所の迷宮遺物を買っても一時しのぎだな、と思いつつ店内を眺めていると、それは視界に入った。


 他のアイテムと同じように、雑に置かれた結界石の一つ。

 他の結界石にはなにも思わないのに、その一つだけは。


 僕の魔法()に、酷く悪い物として映った。

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