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太郎と不法投棄1

 部屋の中には玉座に座る三人の女帝。そしてその後方に紙にペンを走らす書記。女帝の前にはひれ伏す二人の男。・・・と、まあ役割的にはそんな感じなのだが、ここはどこかの王宮でもなければお城でもない。ただの高校の部室だ。


 メンバーといえば、


黒いロングヘアを内巻きにしているお洒落な女の子、朱魅さん(正体不明)


茶色のパーマが大人っぽい印象、絵里香さん(バンパイア)


黒いワンレンでミステリアスな美女、美沙さん(槍を空から降らせる)


髪が綺麗に切りそろえられた和風萌え系少女、小里ちゃん(座敷童子)


茶色の頭で大柄のヤンキー、銀治君(狼男)


そして、人間の僕。この六人だ。もう一度言うが、決してモンスターハウスやお化け屋敷と言う訳ではなく、学校にある教室の一室である。しかしながら、全員、本物、モノホンの・・・人ならざる者達だ。


 部長の朱魅さんが手を軽く持ち上げ、人差し指をくるくると回しながら言う。


「でーわー。本日から活動するぞ! だがっ、部活を立ち上げた一学期は部費がでない。今学期の活動内容を報告後、二学期から部費が出るそうだ。まあ、どうせ雀の涙な部費なんて期待はしない! 私はお金が必要なのだ! 稼がなければいかん! 皆はどうだ?」


「メチャ必要っす! 狼男であるパパやママはなかなか人間世界に馴染めなくて、うちは貧しいっす! 俺も家の助けになりたいのと、たまには生肉をたっぷりと食べてみたいっす!」


 即座に答えた銀治君。最初は微笑ましく聞いていたのだが、最後の言葉は狼男らしく冷や汗が出る物だった。


「私も同じような物ね。それに、ファンクラブの会費だけじゃ好きなだけブランド物買えないから、お金ならいくらでも欲しいわ」


 絵里香さんお金取っているんだ・・・。僕の頭にはSMクラブが思い浮かんだ。


「はぁーい。小里は・・・一人暮らしだからお金が無いです。頑張って漫画書いてお金にしていますけど・・・。困ってますです・・・」


「私も同じだ。人間界で一人暮らしはなかなか厳しい。水商売のバイトも人間関係難しいしな・・」


 小里ちゃんと美沙さんはそう言う。座敷童子の小里ちゃんは都会に出てきて一人暮らしをしていると言うのはなんとなく想像できるけど・・・。え? 出来ない? まあ、それは置いておいて、美沙さんは・・・一体何者なんだろう・・・。


「えっと、僕は特に・・」

「全員金が欲しいって事だな! それでだが・・」


 完璧に僕の間だと思って話始めたつもりだったが・・・朱魅さんがすぐに言葉をかぶせてきた。


「この間、太郎が提案した不法投棄。それを行っている業者の摘発。その線で行ってみようと思う!」


「え・・・。でも、それはお金が入りませんよ? 社会のためにはなると思いますけど・・・」


「社会のためになる事は・・・お金になるはずだ! 任せるんだ。交渉は私がやるぞ。お前達はとりあえず犯人を上げてこい!」


「うぃーっす。荒事は俺に任せてくださいっす! 人間共なんて何人いてもバラバラにしてやりますよ!」


 銀治君は半分獣人化して立ち上がりながらそう叫んだ。もちろん人間代表な僕は彼の言葉に気が気でない・・・。


「なぁーに言ってんのよ。銀治がこの中で一番弱いくせに!」


 絵里香さんがそうピシャリと言うと、「座敷童子には勝てると思うけどなぁ・・」と銀治君はぶつぶつ言いながら座った。


「じゃあ今日から見回りをするぞっ。不法投棄をされるのは夜だ! 全員で行く必要も無いだろうから、二人だ。毎日二人一組で見回りっ! はい、くじを引け!」


 朱魅さんはいつの間にか右手に何本かの棒を握っている。・・・いつの間に? なんて言う質問はもはやナンセンスなのを僕は知っている。


「じゃあ、太郎から!」


「えっ・・・ええっ! ぼ・・・僕も見回りメンバーに入っているんですかぁ?」


「副部長だから当たり前だぞっ! 部長の私はくじを作ったから一番最後に引くぞっ」


「ふ・・副部長だからってより・・・ただの人間だから入っていた事に驚いたんですが・・・」


 二人のうち一人が僕だったら戦力が50%になっちゃうんだけど・・・。そう思ったが、良く考えてみると不法投棄をしている犯人は人間だろう。ならこのクラブのメンバー一人でも楽勝なのは間違いない。第一、この部屋にいる事に比べたら犯罪者に囲まれているほうが安全って気もしてくる・・・。


僕は少し緊張の糸がほぐれ、気を抜いてくじを引いてみた。棒の先には赤いしるしが付いている。


「当たりー。一人目は太郎だっ。はい、次ー」


 当たってしまった・・・。まあ、良いか。さて、僕のボディーガードとなってくれる次の当たりの人は誰だろう。いや・・・ちょっと待て! どうしてそれがボディガードだと保障出来るんだ? その人と二人っきりで夜の山を見回りに行く訳だ。おそらく辺りには誰も歩いていないだろう・・・。


ひょっとして・・・僕の隣を歩いているその人こそ・・・最大の危険人物に成り得るんじゃないだろうかっ!


「おっし! 太郎さんと行くのは俺だぁ! とわぁ! ・・・くっそぉ・・・。はずれだぁ・・・」


 うわぁ! ぎ・・・銀治君が外れたぁ! あと安全っぽいのは・・・小里ちゃんくらいか? 朱魅さんはまだ得体がしれないし、絵里香さんや美沙さんは考えられないくらい危険だ!


「よし! 当たり! 捕まえた人には別途ボーナスもらえるのよね? それくらいしてもらわなきゃ!」


 赤い印の付いた棒を引き当てたのは・・・バンパイアである絵里香さんだった・・・。もちろん僕の血を吸おうとした前科持ちだ・・・。


「太郎、今晩はよろしくね! 人気(ひとけ)の無いところで二人っきり・・・。イイコトしちゃおっか!」


 絵里香さんは親しげに僕と腕を組み、顔を寄せてくる。うらやましい? そう思う人は前後の文章をしっかりと読み直してね・・・。





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