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太郎と物の怪6


 嫌な予感が的中した。沖に渦が見える。それはどんどん大きくなり、ついにはそこからビルのように大きい、巨大な蛇が姿を現した。もちろん頭は八つある。


「まずいですよ! あれ、ヤマタノオロチですよ! スサノオって言う日本ではアマテラス、ツクヨミを兄に持つ神が戦った怪物ですよ! さすがにあれには・・・」


「しかし、あれを放っておくと、この辺りは大変な事になるんじゃないだろうか?」


 朱魅さんにそう言われ、僕は口を閉じうなずく。


「確かに・・・。それに、この辺りだけじゃなく、日本中が危険かも・・しれないです」


「ならここで倒しておこうっ! はい、空間断裂」


 朱魅さんが指をぱちんと鳴らすと、ヤマタノオロチの首がぽろっと一つ落ちた。


「うそでしょぉ!」


「私と銀治は無理ね。接近戦ならできるけど、あの蛇遠いし。夜なら飛んでいけるけど、今昼だし」


 絵里香さんは砂浜に座った。観戦モードのようだ。


「ならわたくしが一つ。神弓、エンジェルアロー」


 実花さんは先ほどの弓とは比べ物にならないサイズ、5mはある弓を横に構えた。そして、そこから放たれた巨大な閃光はオロチの頭を一つ吹き飛ばした。


「一番活躍した人がボーナスですよね! 小里がやります!」


 小里ちゃんは相変わらず見えない何かを担いでいる。珍しく膝をつき、狙いを良くつけているようだ。


「発射!」


[バシューン!]


 何かの噴出音の後、風を突き抜けて進んでいく大きな物体が飛んで行ったような気がする。何度も言うが、もちろん見えない。


[ドォーン!]


 爆発音と共にオロチの頭が粉々になった。


「ちょっ・・・。それって小里ちゃん・・・ミサイル・・・では・・・?」


 小里ちゃんは武器マニアだ。そして透明になる能力を使ってどこへでも、何でも勝手に持ってこれる。今のは・・・相当危ない場所から持ってきたのでは・・・?


 次々と発射される怪しげな物で、小里ちゃんは合計5つのオロチの頭を破壊した。


「やったぁ! これでボーナスは小里の物です!」


 はっ・・・。わかった。小里ちゃんが狙っているのは・・・ヤマタノオロチの尾から取り出せると言う、『草薙の剣』だ・・・。さすが武器マニア。レア物は逃さないようだ。


「あと三つだな。もうめんどくさい。すべて私がもらうぞ。魔人召喚!」


「魔人召喚? 魔人の一撃・・・じゃないんですね?」


 美沙さんのいつもの技じゃなかった。でも、やはりいつものように目の前の空間が歪む。同じ系統の技なのだろうか。


「・・・・って、うわぁ!」


 目の前に現れたのは文字通り、魔人。背丈が10m以上はありそうな巨人だ。いつも美沙さんが使う『魔人の一撃』の時に出てくる大きなこぶしは、この人の手だったんだ・・・。


「顔を見るのは久しぶりよね、おじ様。良ければあれを倒してくださいな」


「手じゃだけじゃなく、もっとわしを呼び出してくれてもいいんだよ。なんせ最近運動不足でちょっとお腹が出てきたからな。わっはっは!」


 美沙さんは部員の前でする男っぽい物言いではなく、たまに人前で見せるかわいらしい話し方をしている。巨大な魔人は、青いマントを翻してヤマタノオロチに向かって槍を構える。


「神槍、グングニル!」


 台風が来たかと思うほどの突風が巻き起こった。光の槍と化した物が一直線にヤマタノオロチに向かい、軽々と胴体に大穴を明けた。伝説の怪物は、3つの頭を残しながら海に横たわった。


「いつでも呼んでくれよー。おじ様頑張るからねー」


 魔人は笑顔で空間の狭間に消えていった。グングニルって・・・。今のはひょっとして北欧の最高神、オーディーンだったんでは・・・? ならスサノオよりも遥かに格上の神様だから当たり前の力かも・・・。


 伝説の怪物、ヤマタノオロチを倒した僕達は、再び雪奈さんに海面を凍らせてもらい、ヤマタノオロチが倒れている所まで行った。そして、みんなでオロチをバックに記念写真を撮り、小里ちゃんのために尻尾から草薙の剣を取り出して戻ってきた。


こんなに楽しい夏休みなんて本当にバチがあたりそう。次は冬休みに外国へ竜を倒しに行っても良いかも。そんな事まで僕は考えてしまっていた。うーん、段々と考えだけは僕も人間から離れてきているかも・・・・。





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