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太郎とかつあげ4



 翌日。部室に集まった僕達は、それぞれ手に得物を持ち川西高校へ向かう準備を整えた。え? どうして僕達に武器がいるのかって? 得物って言うのは武器じゃないよ。


「ちょっとみなさん・・・。遊びに行くんじゃないんですから・・・」


 小里ちゃんはスケッチブックと鉛筆。あと、全員はそれぞれ持参したカメラを持っている。


「カメラは置いていきましょうよ」


「えー。四天王撮りたーい」


朱魅さんをはじめ、みんな不満顔だ。昨日僕たちが部室へ帰り、みんなに四天王の話を伝えてから、それぞれの中で四天王は相当な珍獣のイメージに育ってしまったようだ。それこそツチノコよりも・・・。


「特に絵里香さん。それ・・・スポーツを取材するカメラマンじゃないんですから・・・」


「せっかくファンクラブの子に持ってこさせたのにぃー」


 彼女は一眼レフカメラに50cm近くある望遠レンズを取り付けた、もはやぱっとみ武器かと思うようなカメラを、ロケット砲を持つかのごとく抱えている。


「まっ、そうだよな。さっと行ってすぐ帰ってきて、打ち上げに焼肉でもいこうぜ!」


「あっ! それいいっ!」


 みんなは銀治君の声に従い、カメラを置いた。目に『肉』の文字が浮かんでいる・・・。

 僕達は腹具合のいい頃に焼肉店に到着出来るように、すぐに川西高校へ出発した。




 川西高校へ向かう途中、今日はその学校の一般生徒達と何人かすれ違う。その目は、もちろん僕ではなく、可愛い女子生徒達(見た目だけ)でもなく、銀治君に向けられている。


「あれが大谷の狂犬だ・・・」

「先輩達を頭からかじったって奴か?」


 ちょっと前の騒ぎにかなり尾ひれがついているようだ。かじってはいない。人前で狼に変身しただけだ。・・・それもかなりおかしいか・・・・。


 歩いて20分ほどの距離のはずなのに、僕達は30分後にようやく川西高校が見える場所に来た。銀治君の手には『焼き鳥』。小里ちゃんと朱魅さんの手には『アイスクリーム』。絵里香さんと美沙さんはから揚げとコロッケを持っている。いずれも途中にあった商店街で購入したものだ。全員遠足気分になっている・・・。


もちろん僕にはそれほど余裕が無い。なんとかみんなの足を引っ張らないように・・・。まあ、簡単に言うと、漫画やドラマで良くある『すぐに人質にとられるどんくさい人』にならないように気を尖らす。


そんな僕の目に昨日と同じく、物陰に隠れる人が見えた。朱魅さんじゃなくても気がつく。あの金色の髪は・・・僕達の学校の生徒会長さんだ。みんなが買った物を食べ終えるまでの間、僕はじっとその建物の影を見つめていた。すると、ばれている事に気がついたのか、会長さんはわざとらしく口笛を吹きながらそこから出てきた。口笛が本当は吹けないのか、音は出ていない。


「か・・・会長さん・・・。ご苦労さまです・・・」


「あら、偶然ね。・・・ん? あなた達! 校則で学校帰りの買い食いは飲み物だけって決まっているでしょ! たまたま、わたくしがいたから良かったもののっ!」


 ビシッと指差す会長さんを見ながら、全員悠然とそれぞれ最後の一口を食べ終えた。


「くっ・・・。本当に不遜な人がそろってらっしゃるクラブですわねっ!」


「会長さん・・・。そのカメラは?」


 彼女はおそらく昨日、メガネをかけていた生徒会役員が持っていた一眼レフカメラを手に持っていた。


「これは・・・。ちょっと・・・野鳥を・・・、撮ろうと思いまして・・・。別に・・・あなた達が悪さをするところを収めようと思って持っている訳じゃないですわよ・・・」


 会長さんはおもむろにファインダーを覗いてそれっぽく振舞うが、カメラの先は『酒屋』の看板しかない。


 そのことをヒソヒソと話している僕達に気がつき、顔を赤くしながら会長さんは声を荒げる。


「それよりも! あなた達は全員そろって何をする気っ! 悪いことを・・・。この川西高校の生徒達がうちの生徒に迷惑をかけているって噂は私の耳にも入っていますわよ! もしかして・・・あなた達が黒幕なんじゃ・・・」


「ち・・・違いますよ・・・。えっと・・・どうしましょ、部長」


「私達はその件で来た。やめさそうと思ってなっ!」


 朱魅さんは正直に話す。確かに、僕たちの立場を明確にしておく必要はある。とにかく、大谷高校の敵ではない。


「あら・・・。そう? ・・・それじゃあ・・・、生徒会長として私も同行しようかしら・・・。そもそも、昨日危ない目に合ったって言う生徒会委員のあの子達のために、今日は私が来た訳だし・・・」


「い・・・いいのよ! 実花が出てくるほどでも無いわ。このうすらでかい男に注意させるだけなんだからっ!」


 絵里香さんも慌てて銀治君のお尻を蹴飛ばしながら言う。おそらく、会長さんがいたらすっきりするほど暴れられないからだろう。


「確かに・・・この子は川西高校の悪そうな子達より・・・悪者顔していますわね・・・」

 会長さんは、『いつもより険しい顔をしている銀治君』を見上げてフムフムと感心している。銀治君が鬼のような形相をしているのは、実は絵里香さんが背中を強烈につねり上げているからである。


「でも、あなた達に危険が及ばないように、私もやっぱり付いていきますわ。私はこれでも日本に来る前、柔道を習っていましたのよ! 素質があったから、いきなり白帯をもらえたんですからっ!」


 会長さんは口に手を当てて笑っているが、確か白帯は柔道を始めた人なら誰でももらえる色のはずだ・・・。


(焼肉ぅー。の時間んんー)


 小里ちゃんが小声でそう言いながら僕の袖を引っ張ってくる。美沙さんもそれを聞いて僕に近づいて来ると耳元でささやく。


(時間が無いから、とりあえず連れて入って中で撒こう。最悪、どこかに縛り付けて・・・)


 かつあげの被害にあっているのは男子生徒ばかりだ。会長さんが一人でうろうろしていても大丈夫だろう。川西高校も共学であり、女子生徒がいる。ひどいことはされないと思う。それを部長や絵里香さんに伝えると、首を縦に振った。


「何をヒソヒソと話しているのですか?」


「いえ、それでは会長さん、参りましょう!」


 僕達は、やや厄介な荷物を背負って川西高校の門をくぐった。



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