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太郎と不法投棄8



 週明けの月曜日、放課後。部室では各地の名産品、試食会が行われていた。当然、ゲストとして東北支部を札幌雪祭りばりに人間の氷像だらけにした雪奈さんもいる。


「やっぱ明太子美味しいわねー」


「愛媛って蜜柑だけじゃないんだなっ。伊予柑うまいぞ」


「お話の中では有名な、吉備団子って実際始めて食べますわ」


「ぎゅ・・・牛タンうめぇぇぇ」




 生田会は解散(壊滅)した。原因はこのトレハン部に目を付けられた事だろう。ただ単に同じ人間の力で押さえつけただけならまた復活することもあったかもしれない。むしろ反発してより大きな組織になる可能性もありそうだ。


しかし、人外の、絶大な力と恐怖によって踏み潰されたその組織は、完全に灰となってしまったようだ。これから夜中に一人でトイレに行けない大人がたくさん量産された事だろう。


 荒れ狂う無敵の銀の狼。闇に潜む不死の女王。魔の力を行使する悪魔。姿が見えない妖精。見るもの全てを凍りつかせる女。そしてそれらを統べる女帝。それぞれが主役を張ってハリウッドで映画を一本作れそうな人達がこのクラブには集まっている。


 僕は週末を振り返る。その日は日本が大騒ぎであった。





 土曜日、僕は何事が起きるのかと早起きしてテレビを見ていた。すると、朝から慌しく動く警察の姿が映し出されていた。原因は、日本最大級の広域暴力団、生田会が何か動きを見せている事が原因だと言う。散っていた構成員を、集会を開くとの名目で各支部に集め、どこの支部も警戒は厳重だった。


しかし僕は知っていた。それは部員達が効果的に巣を叩くために情報を流した・・・と、言えばかっこいいのだが、簡単に言うと、『挑戦状を送りつけた』のである。「いきなり言っても信用しないだろうから、手近な所でお前達の末端の金田産業をつぶしておいた。この週末には各支部を襲うから楽しみにしていろ」、少し言葉は違うかもしれないが、全員この意味に沿った内容の電話をかけたはずだ。


末端だと言ったが、実は金田産業は幹部一歩手前の上位に位置し、その規模も大きかった。それでどこの勢力かと生田会は慌てて招集をかけた訳だ。おそらく中国系マフィアとかとでも思ったんじゃないだろうか。


ところが現れた奴らは拳銃の弾は当たらないし、たまたま命中しても「痛てっ」の一言で済ます連中。姿が見えないのに、凶悪な武器で襲ってくる人もいれば、地獄と現世をつなぐような人もいる。総勢一万人収容の生田お化け屋敷と化した各支部は、まさに阿鼻叫喚の世界だったのであろう。


構成員の誰一人としてその時の様子を後に踏み込んできた警察に語らないのは、夢でもみていたんだろうと笑われるのを恐れているのか、それとも語ろうとすれば口が恐怖で引きつってしまうのか、はたまた、あまりの恐ろしさに当時の記憶を失ってしまった、そのどれかなんじゃないかと僕は思う。





「でもさぁ、不法投棄を無くした報酬としてもらうお礼。その金額だと今回の仕事って割に合わなかったんじゃないの?」


 絵里香さんの言う事はもっともだ。しかし、それを聞いた朱魅さんは笑う。いつもどおり腰に手を当ててはいるが、目は笑っているようには見えないけども。


「損して得取れだ! 今回は損をしたかもしれないが、今後の仕事がやり易くなるだろうし、これだけの実績を作っておけば次の仕事でふっかけやすくなるぞっ!」


 な・・・なるほど。って高校生が大人に多額の報酬を要求してもいいのだろうか・・・? まあ、このメンバー、高校生かというとそれも怪しいけど。


「ま、いっか。今回、交通費もかかってないしねー」


 絵里香さんは納得をしたが、その言葉・・・、みんな・・・どうやって現地まで行ったんだ? 銀治君は走ったんだろうけど・・・。あっ! 小里ちゃんはなんとなく分かる。見えないから悠々と飛行機か新幹線に乗って行ったんだ。


「明日からの仕事は決まっているんだぞっ。市から川の掃除を請け負ってきた! どれだけ綺麗にするかで報酬が変わるから、みんな頑張ってくれ!」


「うぃーっす! 拾った空き缶は自分の物にしていいっすか? これでビーフジャーキーたらふく食べるぜっ!」


「もちろん掃除は構わないけど、川の中は嫌だわ」


「小里も泳ぐの苦手です・・・」


「あー、そういば、俺も・・・川の中はちょっと遠慮っすねぇ。濡れちゃうと雨に濡れた犬みたいになってすげーかっこ悪いんっす・・・」


「なら、亡者共にやらせようか」


 みんなは歓声を上げた。亡者を使役して川底の掃除をやらせる。冗談のような本当の話。


・・・・・・・・ちゃんちゃん。






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