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繋がる点

 五日前、保田に会いに行ったとき、彼の受け持ち区域で不審車の通報があったと聞いた。その不審車のナンバーが、いま追っている盗難車と同じであった気がする。


 確認しようと保田へ電話するが、繋がらない。

 駐在所へ掛けたが、地域課へ自動転送された。それで不在とわかったが、そのまま地域課員に訊ねる。


「尾堂北駐在所の保田さんと連絡が付かない。何か知らないか?」


 地域課員は困惑げな声で答えた。


「それが……十四時十分に、川尾町の松永という男性から、保田さんのバイクが道端に放置されていると連絡があったんです。松永さんは尾堂北駐在所にも行ったそうですが、戸は閉まっていて呼びかけても返答がなかったと。こちらからも保田さんへ電話をかけているのですが繋がらなくて、無線の応答もないんです」


 灰々津は、冷たい手で首筋を撫でられたような感覚になった。


 おかしい。あの真面目で実直な保田が、応答しないなどありえない。


 地域課員が若手らしい初々しさのある声で続ける。


「松永さんが言うには、保田さんは本日午前に松永さんの物件事故の処理をして帰ったそうです。その際に、白岩地区にある廃工場などが物騒だから警らを強化してもらうことになって、松永さんも頼んだ手前気になったので付近を通ってから親戚のところへ寄って、その帰り道にバイクを見つけたそうです」


「昨年末、守……保田さんから、不審車両通報書が上がっているはずだ。そこに記載されているナンバーを教えてくれ」


 数十秒後に伝えられたナンバーに、灰々津はまぶたを伏せた。

 他の記載事項も、強盗犯の車両と合致している。間違いない。


「保田さんの捜索を頼む」


「えっ、しかし、まだ行方不明と決まったわけでは……バイクを停めて付近を見回っていたり、バッテリー切れの可能性もありますし」


 明らかに渋られた。当然だ。年始から多忙なうえさらに緊急配備まで行っている状況で、数時間連絡が取れないだけの駐在所長の捜索のために人員を割くのは難しい。


「無線を聞いていただろう。その不審車両のナンバーが、現在逃走中の銀行強盗の車両と一致している。保田さんから話を聞きたい」


「あっ! 了解しました! 課長に伝えます!」


 意気込んだ応答に「頼む」と伝えて電話を切る。

 十五時十分の数字を見て、スマホをポケットに戻したとき、無線が鳴った。警らのパトカーからだ。

 尾堂支店から西へ二キロ、市道沿いの空き地にて、白い軽ワゴンを発見したという。ナンバーも強盗犯の逃走車と一致。ドアは開けっ放しで、乗り捨てしたと見られる。


 現場保存を指示したところで、器材を持った鑑識係二人が入室してきた。

 灰々津は彼らのもとへ行き、乗り捨て車両の指紋とDNA、繊維やタイヤ痕などを採取し、現場写真を本部に回すよう指示した。

 駆けていく鑑識係たちの足音を背に、無線へ向かう。


「こちら灰々津。 全パトカー、各班に一斉連絡。白軽ワゴン乗り捨て現場、西二キロ市道沿い空き地。犯人乗り換え車両の可能性大。周辺半径一キロ内の防犯カメラおよびドライブレコーダーを至急確保せよ。コンビニ、ガソリンスタンド、住宅、駐車場、すべて対象とする。映像は本部へ。繰り返す、」


 そこでようやく尾堂署長が入室してきた。


「灰々津くん、ご苦労。捜査一課長はまだかね」


「熊堂市からここまで三十分はかかりますから」


 点滅する赤ランプに反応して、灰々津は無線を向く。

 乗り捨て車両内にて、無線機とスマホ二台が見つかった。スマホの一台は警察のロゴが入った紺色のケースに入っていた。いずれも石かなにかで叩き壊されており機能しないが、無線機のシリアル番号は読み取れたという。

 それを聞くやいなや、灰々津はそのシリアル番号を警務課に伝え、所有者の特定を急がせた。

 七分後、警務課からの返答があった。


「尾堂北駐在所、保田巡査部長配属」


 灰々津はテーブルの上で拳を握る。

 続いて、熊堂銀行尾堂支店にいる盗犯係から無線が入った。

 銀行の木製カウンターにめり込んだ銃弾を発見。ドライバーで取り出したところ、九ミリ弾種と推定されるとの報告だった。

 付近の床に落ちていた薬莢の底面に刻まれたロット番号を、灰々津はすぐさま警務課へ伝え、データベースを検索させた。

 五分後、保田の名を告げられた。

 灰々津は地域課へ内線をかける。


「保田巡査部長の捜索を最優先に頼む。駐在所およびバイク発見現場周辺を至急確認してくれ」


 壇上のテーブル端に座っていた署長が怪訝そうな声を投げてきた。


「いまは強盗犯の捜索が優先だろう」


 灰々津は、目だけを署長へ向ける。


「十四時十分、保田さんのバイクが道端に放置されていると、付近住民から地域課に連絡が入っています。以降、彼との連絡はついていません。駐在所にも姿はないようです。彼の破損した無線機とスマホが、被疑者の逃走車両から見つかりました。銀行のカウンターに着弾していた弾丸も、彼への支給品だと判明しました。これらの状況から、被疑者が所持している拳銃は保田さんのものであり、彼が襲われて拉致されている可能性が極めて高いと思料されます」

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