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【書籍化】公爵家の料理番様 ~300年生きる小さな料理人~  作者: 延野正行
第八部

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300/301

第280話 うにゅ~

☆★☆★ 本日発売日 ☆★☆★


「公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人」単行本8巻発売!!

本日発売日!! 無事発売日を迎えることができました。

読者のみなさま、中村ゆきひろ&斎藤鏢両先生、編集部の皆様に感謝!


あったかいご飯が揃っているので、ぜひお買い上げください。


挿絵(By みてみん)

「ティセルは、あなたを信じていた。神様がいると……。ヴェリオ司祭、いやヴェリオ! お前はそんなティセルの想いを裏切ったんだ!!」


 僕は叫んだ。


 許せなかった。

 こんなにも人のことを許せないと思ったのは初めてだ。

 たぶん、僕は嫌いなんだ。

 ヴェリオ司祭のことを……。


 命に感謝しない人を。

 命を命と思わない人を。

 ただ欲望のままに命をもてあそぶ人を……。


 たぶん、根底には自分の父ヤールム・ハウ・トリスタンとのことがあるからだ。


 父様は僕に拷問紛いの教育を施した。

 挙げ句、魔獣がひしめく山へと捨てた。


 ヴェリオ司祭と、ヤールム・ハウ・トリスタンは似ている。


 こんなのあまりにも残酷すぎる。


「あの時、僕は誰からも救われなかったけど、レティヴィア家の人と出会えた。だから、救います。僕と……」


『ボクがね』


「黙れ、小僧らが!!」


 ヴェリオ司祭は叫ぶ。

 指を動かすと、直後ブレウラントとなったティセルが襲いかかってきた。

 僕やアルマよりもはるかに大きな巨体が、大岩のように僕の頭上に降りてくる。

 瞬間、爆音とともに砂煙が穴の内部に広がっていく。

 残響音と一緒に聞こえてきたのは、ヴェリオ司祭の笑い声だった。


「ひゃははははははは! 直撃だ! 思い知ったか小僧め。世の中を舐めてるから、そんなことになるんだよ」


 そこにティセルが付き従った司祭の姿はない。


 笑い転げるヴェリオ司祭を鼻で笑ったのは、アルマだった。


『世の中を舐めてるだって? 舐めてるのはお前だろ』



 お前も、ボクたちの300年を舐めすぎだ。



 まだ砂煙が舞い散る穴底で、強い光が溢れる。

 それはぞっとするほど大きな魔力の塊だった。

 感知したヴェリオ司祭は、途端に口を閉ざす。

 背中に冷や汗を掻きながら、その魔力の放出を見つめた。


 やがて光の中で、ブレウラントとその牙を優しく握った僕が現れる。

 そこにアルマが寄ってきた。


「待ってて、ティル」


『今、助けてやるからな』


 興奮するブレウラントに向かって、優しく語りかけた。


 途端、笑い声が穴底に響き渡る。

 声の主はヴェリオ司祭だった。


「アハハハハハ! 元に戻す! 無駄無駄無駄! そんなことできるはずないだろ! ティセルとブレウラントは完全に融合している。元に戻せるわけがない!」


 ヴェリオ司祭のテンションはさらにヒートアップしていった。


「そもそも拙僧がどれだけ苦労して【合成】の魔法を得とくしたと思っているのだ! 20年だぞ。それを子どものお前に解け――――」


「なんだ。【合成】か」


『おそらく【魔獣合成】じゃない』


「はっ?」



 うにゅ~~。



 次の瞬間、ブレウラントの中からティセルが出てくる。

 アルマがブレウラントの頭を押すと、生クリームみたいにティセルが出てきた。


 良かった。僕たちが知らない魔法だったらどうしようと思っていたけど。

 意外と簡単な方法で良かったよ。


「はあ……?」


 一瞬でティセルを救った僕たちを見て、ヴェリオ司祭は絶句する。


「ありえない! そんなに簡単に……」


「簡単ですよ。【分解】という魔法を使ったんです」


『まあ、他にも【時の砂】って魔法を使って、肉体を再構成してるけどな。……まあ、そんなに難しいことじゃないぞ』


「そんな馬鹿な……。20年だぞ。この魔法を得とくするのに拙僧がどれだけ苦労してきたと思っているんだ!」


「あなたの努力は凄いです。でも、凄い努力も悪事に使えば、誰も称賛はしません」


『相手が悪かったな。言ったろ。ボクたちは300年だって。だから、こういうことだってできるぞ』


 僕とアルマは手を合わせる。


【合成】


 黄金色の光に満たされる。

 魔力が僕とアルマの肉体の隅々へと行き渡る。

 外殻、筋肉、内臓へと浸透していくと、僕たちの身体は細かく砕かれていった。

 さらに魔力と一緒に渦を巻きながら、ある形へと変化した。


「な、なんだ……」


 大きくなっていく影に、ヴェリオ司祭は後退る。

 物音に目を覚ましたティセルは顔を上げ、目の前にいる巨大な銀毛の塊を見て、呟いた。


「しん……獣…………さ、ま……」


 最後にティセルは「良かった」と安心すると、再び眠りに就く。


 そう。ティセルとヴェリオ司祭の前に現れたのは、巨大なクアールだった。

 その頭からひょこりと、僕は顔だけ出す。


「魔獣との合成なんてやろうと思えば簡単です」


『そもそもボクたちとは格が違うんだよ』


「な、なんなのだ、お前ら! なんだというのだ!!」


 ヴェリオ司祭の絶叫が穴の中に響き渡る。


 泣き出した赤ちゃんみたいに顔を赤くする司祭を見ながら、僕たちは改めて名乗った。


「お忘れですか、司祭。僕はレティヴィア公爵家の次男にして、この土地を預かることになったルーシェル・グラン・レティヴィアです。そして、こちらは僕の相棒――――」


『アルマだ。覚えておけ』


 アルマはわざと足音を鳴らして、威嚇する。

 ヴェリオ司祭は震え上がったが、長くは続かない。

 たちまち口元に、笑みが浮かぶ。


「ば、化け物め。拙僧をどうするつもりだ? 殺すのか? いいのか? 拙僧を殺すということは、聖カリバルディア剣教に楯突くことになるんだぞ!」


「そうですね。だから、僕はあなたを捕まえることにします」


「はっ。そうだろうな。……それがお前らの限界だ」


「けど、魔獣たちはどうでしょうか? ね。アルマ?」


『ボクが直接下すまでもないさ。この司祭を恨んでいる魔獣は他にもいるみたいだしね』


 まるで僕の言葉が合図だったかのように大きな影が、ヴェリオ司祭を覆う。

 振り返ると、そこには大きなブレウラントが鎌首をもたげるがごとく頭を上げて、司祭を威嚇していた。

 そのプレッシャーに、ヴェリオ司祭は気づく。


「何をしている! そいつらを殺せ!」


『もうお前のいうことなんて聞かないってよ』


「な、何故だ!?」


 簡単なことだ。

 ティセルを元の状態に戻す時に、合成されていたブレウラントの身体も元に戻っていたからだ。すでに合成された子どもたちは、すでにティセルと一緒に【結界】の中に預けてある。


 野生の状態に戻ったブレウラントは、ゆっくりとその牙をヴェリオ司祭に向ける。

 その牙からは大量の唾液が滴っていた。


「助けて! 助けてくれぇぇええええ!!」


『誰もお前なんて助けないよ。神様に祈ったら』


「ふざけるな! 誰が魔獣なんかに食べられるものか!!」


 半狂乱になったヴェリオ司祭は、ついにはブレウラントに飛びかかっていく。

 巨大な魔獣と、狂った司祭……。

 力の差は比べるまでもなく、ただ断末魔が穴底で響くだけだった。


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― 新着の感想 ―
子供達と魔獣さん達の保護。そして害獣駆除、完了。お疲れ様でしたw
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