表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】公爵家の料理番様 ~300年生きる小さな料理人~  作者: 延野正行
第八部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

297/302

第277話 勇者を狩るのが魔獣の役目

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


ヤンマガWEBにて最新話更新。

ついにアプラスと再会。カリム兄様も頑張るので、是非!!


4月20日発売の第8巻も予約が始まってますので、そちらもよろしく!


挿絵(By みてみん)

 ◆◇◆◇◆  ティセル  ◆◇◆◇◆



 ティセルは子ども部屋の二段ベッドの下で俯いていた。


 あの時、どうすれば良かったのか?

 何が正しかったのか?

 悪ってなんだろう。

 神様ってなんだろう……。


 様々な感情や考えが、頭の中で回る。

 考えれば考えるほどわからなかった。

 どうしたらいいのか、どうすればいいのか。

 必死になって考えたが、ティセルの小さな頭では答えに辿り着かなかった。


 ふと顔を上げた時、ティセルは気づいた。

 何かというわけではないが、とにかく静か過ぎるのだ。


 村の大人たちは騎士団に率いられ、山に向かった。

 残っているのは、子どもやティセルの母親のように病に伏せっている大人だけだ。


 だが、それにしても静か過ぎる。

 村に大人がいなくても子どもはいる。

 それにティセルがいる教会は、半分子どもの遊び場になっていた。

 日中は子どもの笑い声や歌声が聞こえてくるはずなのに、何も聞こえてこない。


 そう気付くと、急に背筋が寒くなってきた。


 部屋から廊下に出る。

 幼馴染みの子どもの名前を呼んでみたものの、返事はない。

 ついに礼拝堂にまで来たが、やはり誰もいないかった。


「こんなところにいたのですか、ティル?」


「ひっ!」


 いきなり背後から愛称で呼ばれ、ティセルは悲鳴を上げる。

 振り返ると、何食わぬ顔でヴェリオ司祭が立っていた。


「ちょうどいい。こちらへいらっしゃい」


 ヴェリオ司祭はティセルの返事を待たず、歩き出す。

 やってきたのは、教会の裏手だ。

 そこには山があり、ぽっかりと穴が空いている。

 ティセルはヴェリオ司祭が穴を出入りしていたことを知っていた。

 しかし、何があるかまでは知らない。

 昔、好奇心が勝って、司祭に尋ねてみたことがあったが、微笑むだけで何も答えてくれなかった。


「こちらへ」


「良いのですか?」


「ええ。みんなもこちらで待っています」


「みんなが……」


 とは言ったものの、ヴェリオ司祭はそれが子どもたちのことであることを明言しなかった。


 穴は大きく。

 大人が横に並んでも歩けるほどだった。

 それにしても不思議なのは、こんな穴が村にあったことだ。


 ティセルは教会ができる前から村にいるが、こんな穴があったとは知らなかった。


「司祭様、この穴はなんですか? まるで何か大きなものが通ったような」


「怖いですか?」


「い、いいえ」


 反射的に答えていた。

 本当はとても怖かった。

 穴の雰囲気というより、前を歩くヴェリオ司祭の醸す空気が……。


 穴はずっと奥へと続いていた。

 途中からティセルは眉間に皺を寄せる。

 匂いだ。嫌な匂いというより、それは魔獣と遭遇した時に嗅ぐ獣臭と似ていた。


 しばらくして開けた場所に出る。


「ひっ!」


 ティセルは思わず尻餅をついた。

 金縛りにかかったように動けなくなり、満足に悲鳴を(ヽヽヽ)上げることもできなかった。


 恐怖に怯える瞳に映っていたのは、ブレウラントだった。

 それもただのブレウラントではない。

 村を度々襲撃していた巨大なブレウラントたちが、ぐるぐると渦を巻きながら、穴の底で蠢いていた。


 1歩も動けないティセルに対して、ヴェリオ司祭は冷静だった。

 それどころか近づいてきたブレウラントの頭を、まるで子犬でも愛でるかのように撫でている。


 異常な光景に、ティセルは次第に過呼吸になる。

 ゆっくりと後ずさりしようとしたが、何か手に当たった。

 振り返ると、それは骨だった。

 小さな、明らかに人の骨とわかるものだった。


「ひやっ!!」


 ティセルは悲鳴を上げる。

 しかし、幸か不幸かやっと声を出せるようになった。


「司祭様、これは? これはなんですか?」


「実験場ですよ」


「実験?」


「知っていますか、ティセル。人は魔獣の肉を食べると、その力を得ることができるのです……」


 その言葉を聞いて、ティセルは昨夜のことを思い出す。

 恐怖のあまり、あの時食べた肉の味を思い出すことはなかったが、一瞬鮮明に味噌ベースの鍋の姿が頭の中に浮かんだ。


「では、逆ならどうでしょうか?」


「まさか……」


 ティセルは近くにあった骨を見る。

 もしかして、これは魔獣に食べられた子どもの骨では――と恐ろしい想像が浮かぶ。


「残念ですが、そううまくいかなかった。しょせんは人間です。純粋な魔力生物ではないものを食ったところで、身体に変化は起きない。拙僧が長年研究してきた結論です」


「じゃあ、司祭様は何をしているんですか? 子どもたちはどうしたんですか?」


「良い質問です、ティル。……そう。成果は上がりませんでしたが、興味深い副産物を生み出すことができました。すなわち――――」



 魔獣に人間の頭脳を加えることです……。



 何を言っているのかわからなかった。

 ただヴェリオ司祭が恐ろしいことをしようとしていることだけはわかった。


「魔獣は【使役】することはできますが、魔法で縛ることにはリスクを伴います。何より細かい命令を聞くことができない。『行け』『止まれ』『暴れろ』といった一言で表せる命令がせいぜいです。簡単に言うなら、ティル。あなたよりもこの魔獣は頭が悪い」


 ヴェリオ司祭はティセルの喉を掴む。

 そのまま物のように扱い、ブレウラントの前に差し出した。


「だから、ティル。これからはあなたがブレウラントの頭脳となるのです」


「司祭様、やめて! 正気に戻って」


「正気ですよ。拙僧はいつまでも優しい司祭です。あなたのような田舎娘を、我が神の尖兵として役立てるようにするのですから!」


 ヴェリオ司祭は魔法を唱える。

 それは彼が長年研究してきたオリジナルの魔法だった。


 ティセルの身体が禍々しい魔力に包まれていく。

 波にもまれるようにティセルは叫ぶ。


「――――! ――――!!」


 しかし、その声が魔力の中に飲み込まれていった。



 ◆◇◆◇◆  ルーシェル  ◆◇◆◇◆



「ふふ……。またね、ルーシェルちゃ~ん!」


 激しい投げキッスをしながら、幻獣ミラーは虚空へ消えた。

 顔にキスマークをつけながら、ルーシェルは苦笑いを浮かべ見送る。

 ホッと息を吐いたのつかの間、様子を見ていた相棒とリーリスのほうに振り返った。


「村の人たちは安全圏に逃がしたよ」


「ひとまず安心ですね」


 リーリスはホッと息を吐く。


 一方、アルマはじっと村のほうを見ていた。


「アルマさん。ティセルのことが気になりますか?」


『べ、べべべつに! あ、あとさ。そのアルマさん(ヽヽ)ってのは止してよ。なんだかくすぐったいからさ。アルマでいいよ。ボクもリーリスっていうし』


 アルマはジト目で睨む。

 本気で困ってるというか、さん付けされて、照れてるようだ。


「とにかく村に行こう。たぶん、そこに何か秘密が隠されてるはずだ」


『おう』


「はい」


 僕たちは再び山間の村に踏み込む。


 その直後だった。

 轟音とともに、大地が隆起する。

 それも村のあちこちでだ。


 積もった雪をはね飛ばし、僕たちの前に立ちはだかったのはあのブレウラントだった。


「まるで村を襲うためというよりは、僕たちを村に入れないようにしてるみたいだ」


『みたいだ――じゃなくて、実際そうなんだろう。いいじゃん。お姫様を救出する勇者には必ずあるシチュエーションだ』


「その勇者って誰だよ。アルマなのかい?」


『馬鹿いうなよ、ルーシェル。ボクは魔獣だよ。どちらかというと、勇者に襲いかかるほうだろ?』


 そう言って、アルマはギラリと牙を光らせた。


☆★☆★ 4月新刊情報 ☆★☆★


4月20日発売!!

『公爵家の料理番様~300年生きる料理人~』第8巻


挿絵(By みてみん)


4月末

『宮廷鍵師、【時間停止ロック】と【分子分解リリース】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』コミカライズ第3巻が、シーモア他で配信予定です。こちらもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シリーズ大重版中! 第8巻が4月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本8巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


5月7発売発売! オリジナル漫画原作『異世界で鍛冶神の力を得た俺、女神とスローライフはじめました。』単行本1巻発売!
女神と一緒に異世界町工場スローライフ!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





シーモア様にて3巻発売!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス11巻 5月15日発売!
100万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



コミカライズ第1巻発売です!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』単行本第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



コミカライズ11巻3月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる11』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


3月13発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本5巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



第2巻12月15日発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
追放王子、ハズレギフト【料理】を極める~最強のもふもふ国家で料理番を始めます。故郷の国が大変らしいのですが、僕は「役立たず」だったので関係ないよね~



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



<『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
邪教過ぎる・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ