あなたに伝えたくて・・・
「ねえ、シオン」
「ん?」
「もし、二人が剣士じゃなかったら出逢わなかったかしら」
シオンは背もたれに深く体を預けた。
「かもな。だが、俺はロマンティストでね。赤い糸ってやつを信じるよ」
「相変わらず調子いいのね」
「心外だな。いつでも真剣だぜ?」
二人は声を出して笑った。実に久し振りのことだった。
頃合いをみてアリシアが言う。
「いつの間にか一緒にいるのが自然で……、自然過ぎて守ってくれることが当然に思えて」
「気にするな。俺がしたいから勝手にしているだけだ」
「あなたは自分の想いを言葉にしてくれるのに私は何も答えなくて……」
「アリシア……?」
一体彼女はこの先どんな言葉をその薔薇色の唇から紡ごうといいのか。その続きこそが自分が渇望して止まない答えなのでは……。
だが、答えを聞いてしまったら二人の関係が終わりそうで動揺する自分がいることの確かだ。
「店を出よう。飲み過ぎた」
アリシアの言葉を遮るようにシオンが席を立った。彼にしてみればまだほろ酔いにもなっていなかったがいたたまれず店を飛び出す様に足早に場を去る。
アリシアといえば、離れ離れになった時から感じていた気持ちをやっと伝えらる機会をシオンから一方的に畳まれて釈然としないまま立ち尽くしていた。
店を出たシオンは深く息を吐いて寄り掛かった壁に軽く後頭部を打ちつけて呟く。
「らしくないな……」
「あいたたた」
二日酔いの酷い頭痛で目を覚ましたフィリカはゆっくり上体を起こした。
「おはよう。気分はどう?」
アリシアが持ってきた冷水を受け取り一気に飲んだ。冷たい感触が喉から体中に沁み渡り幾分症状も軽くなる。
「私、いつの間に寝ちゃったんだろう。三人で食事していたまでは覚えているんだけど」
「きっと旅の疲れが出たのよ」
ジュースと間違えて酒を飲んだことは黙っておく。
くすくすと笑っている態度が気になるが、敬愛するアリシアがそう言うのなら、とフィリカは納得した。
「ところで、今日はスティール来るかなあ」
「どうかしら。こればかりは本人の問題だから」
アリシアもコーヒーのカップから口を放して溜息をついた。
スティールも気掛かりだが、昨夜のシオンも気になる。自分の気持ちを伝えようとしたら彼が遮ったのだ。
「お早う、シオン。昨日は運んでくれて有り難う」
フィリカの視線の先には入口に立っているシオンがいた。
「ノックしたんだが聞こえていなかったみたいだな」
振り向いたアリシアとシオンの視線が交じり合う。




