語り合えば……
「まあ努力してもどうにもならんものもあるけどな」
「それはシオンの努力が足りないのよ」
今夜はやけに手厳しいフィリカにシオンは肩を竦める。
「そもそもお姉様にはもっと誠実で大人しい人がお似合いなの!!」
論点がずれているフィリカにシオンとアリシアは顔を見合わせた。
「おいおい、俺も充分誠実だと思うが」
「何処か誠実なのよ。厭らしい目でお姉様を見ているくせに」
顔が赤く目が半開きのフィリカに様子がおかしいと気付いたアリシアが彼女からグラスを取って一口飲む。
「これ、お酒よ」
「なんだと!? 全く世話が焼ける」
シオンが注文していたオレンジピュールをジュースと間違えて飲んだらしい。
意味不明な言葉を並べてフィリカが倒れる寸前でシオンが抱き止める。既に寝息を立てて眠ってしまった彼女をシオンが背負いそのまま退散となったのである。
部屋へ戻り、フィリカをベッドへ寝かせたアリシアが一息ついていると遠慮深くドアをノックする者がいた。
そっと開けるとシオンが立っている。
「どうしたの?」
「飲み直さないか」
「明日はスティールの大事な日よ」
「ん? ああ、そうだな。気が乗らないのならいい」
意外とあっさり引き下がる彼に違和感を覚えた。
「……いいわ。フィリカの様子が落ち着いたら行きましょう」
「悪いな」
アリシアは再びドアを閉めた。
フィリカが落ち着いたのを確認して二人は先程の店とは違う場所で飲み直すことにした。尤もアリシアはあまり飲めないのでシオンに付き合う形となる。
「ここの雰囲気、『宝船』に似ているわね」
「そうだな」
初めて二人が出逢った店の名前に懐かしさがこみ上げた。あの女主人は元気にしているだろうか。あの街並みまだかわっていないだろうか。
グラスの中の氷が音を立てて崩れるとシオンはブランデーを注ぎ足した。
その先には同じ色をした彼女の瞳が映っている。
「雷光ブーゲン殿の一撃によく耐えたな」
「あなたとの一戦が参考になったわ」
「そんなこともあったな」
オマスティアで二人が一戦交えた出来事も遠い過去の話に感じた。
今夜のシオンはやはり何処か変……。
憂いを帯びた漆黒の瞳を細めて何か言いたげだが決して口にしないもどかしさが手に取れる。
やっと再会して自分の気持ちを伝えようとアリシアがついに口を開いた。




