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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第四章 二人の距離
46/201

意地

互いに素直になれず意地を張る二人。リンダ達よりも厄介かも…。

 あの後、話し合いは物別れに終わり却って事態を悪化させてしまった結果にアリシアは肩を落とす。

 感情に任せたつもりはないが、話せばいつかきっと理解してもらえるという漠然とした解決策は見事に失敗に終わった。

「お役に立てずにごめんなさい」

「いいえ。こうして、両親の前で自分の気持ちをちゃんと伝えられただけでも大きな一歩です。お気になさらずに」

 この言葉が本心なのはトータムの爽やかな笑顔で感じる。

「僕が言うのも変ですが、リンダを頼みます。彼女は最近あなたの話ばかりするんですよ。ちょっと妬けるな」

 アリシアが頷くと彼は安心した様子だった。


 帰路に着く道すがら、馬上のアリシアはこれまでの各々の言葉が頭に甦っていた。

 人々の心はこんなにも頑なで難しいもので、安直に変えられると信じていた自身はまだまだ未熟だと思い知らされる。

 シオンがいたら、トータムの両親を上手く説得できたかも知れない、と心をかすめる。だが、今回は手助けしないと明言されたので今更すがれず途方に暮れた。


 シオンはというと、他人の事情まで背負おうとするアリシアに忠告の意味も兼ねて突き放してみたもののやはり気になってしまう。

 彼女のことだから真っ向からぶつかったに違いない。駆け引きをしないのがアリシアのいい所だが、そのやり方が全て通用するほど世の中は甘くない。

 案の定、アリシアが沈んだ表情で部屋へ帰って来た。

 助けないと言った手前、経過を聞くのも憚るので敢えて声は掛けない。

 窓際に置かれた椅子に座ると物思いに更けているアリシアから溜息が洩れた。いつもなら、シオンが相談に乗ってくれるのだが当人は地元の新聞から目を離さない。

 独りで旅をしている頃には感じなかった孤独が心の中で芽生えてくる。

 私はこんなにもシオンを頼りにしていたのね。

 傍にいると「惚れた」だの口説いてくる彼だが、その存在は頼もしく心強い。そして……。

 いつの間にか彼を見つめていたようで、視線を感じて顔を上げたシオンと目が合った。

 そんな目をするな。反則だぞ!!

 不安げなブランデー色の瞳に一瞬揺らいだ。ひょっとしたら、アリシアが助けを請うかと期待したがこうなったアリシアは頑固である。 結局、二人は口を利かずに時を過ごした。


 翌日、気が重いがリンダの元へ行ってみると、トータムから話し合いの結果を聞いているのだろうかやはり彼女の表情も硬い。

「こんにちは」

「こんにちは」

 互いに挨拶したもののここから先が進まない。

「あの、昨日は彼のご両親を説得できずにごめんなさい」

「トータムから聞きました。アリシアさんが最後まで一生懸命説得してくれていたそうですね。私からもお礼を言わせて下さい」

 ますます恐縮したアリシアはリンダの肩に手を置いた。

「大丈夫?」

「はい。お陰で隠れて会わずに済みます」

 明るく笑うリンダにアリシアの心が痛んだ。

 

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