解雇
トータムの両親との関係も進展がないまま数日経ったある日、アリシアは間借りの主からある情報を聞いて急いでリンダのいる武具屋へ向かった。
息を切らせて現れたアリシアにリンダの表情が崩れてその胸に飛び込んでくる。
「アリシアさん……」
「どういうことなの!?」
「もう私達どうしたらいいか……」
涙に紛れてよく聞き取れない。どうやらベルベットの怒りを買ったらしく、これまでトータムが所属する騎士団の鎧の発注やメンテナンスを一手に引き受けていたリンダの父親から隣町の大手武具屋に変えてしまったのだ。代々、城に仕えているメイル家の存在は大きく彼の一存は覆せない。
「ごめんなさい。私のせいで……」
泣いて詫びる娘に父親は宥めた。
「お前のせいじゃない。武具屋を変えるという話は前々からあったんだよ」
今回の件はきっかけに過ぎなかった。城の内部では、時間と費用がかかるハンドメイドの鎧より大量生産で安く仕上がりが早い大手の武具屋に乗り換えようとの動きがあったが、トータム達剣士が反対していたのだ。
そして、リンダ親子のような町の小さな武具屋にとって、騎士団との提携を打ち切られるのは死活問題となる。
私のせいだわ……。もう少し慎重に行動していれば……。
とてつもない後悔と罪悪感に苛まれたアリシアは唇を強く噛んだ。
「お前さんのやり方は荒治療だが間違っちゃいないさ」
「シオン……」
いつの間に来たのか彼女の肩を抱いてにやりと笑った。
彼に自身の取った行動が間違っていないと断言されて心が軽くなる。
「このまま一気にカタをつけるぞ」
シオンが不敵な笑いを浮かべてアリシアとリンダを交互に見やった。
アリシアとリンダ、そしてシオンの三人はメイル邸の前に来ていた。
「メイル殿、開けて下さい!! お話があります!!」
アリシアの必死の呼び掛けにも応じずドアは閉ざされたままだ。
「下がってろ」
シオンが力任せに木製のドアを蹴破ると三人は傾れ込んだ。
「トータム、いるんでしょう!?」
リンダとの駆け落ちを危惧した父親によって、トータムは屋敷に軟禁状態にあると聞いていたので叫ぶと奥から彼等が姿を見せた。
「幾ら高名な剣士でも無礼が過ぎますぞ!!」
「無礼は百も承知。ですが、私どもの話を聞いて頂けないのならもっと手荒くいきますが?」
シオンが低く威嚇する口調にベルベットがたじろぐ。
「……話とは何ですか」
「騎士団の鎧の件です。何故、武具屋を変更なさったのですか!?」
「前から問題視されていたことだ」
「僕達の交際と関係しているんですよね、父さん」
ベルベットは口を閉じて押し黙ってしまった。




