障害 3
リンダとトータムの件は、手助けしないとシオンに言われて気落ちしたアリシアだが沈んでばかりはいられない。
まずは、トータムの両親に会うべくメイル邸を訪れた。
白を基調とした漆喰の壁に赤いレンガとモダンな屋敷に色とりどりの花々が並んでいる庭園はまさに名家の佇まいである。
予め訪問を伝えておいたので、トータムが門の前で出迎えてくれた。
「ようこそ。お待ちしていました」
「ご両親はいらっしゃるかしら?」
「はい。どうぞこちらへ」
トータムの案内で、応接の間に通されたアリシアはいささか強張った表情で彼の両親を待つと、やがて二人は現れた。
「お待たせして申し訳ない。私はベルベット・メイル。これは妻のビビアン」
シックなドレスに身を包んだ女性が会釈したのでアリシアも返す。
「こちらこそ、突然の訪問お許し下さい」
「いえ、貴方様の噂はかねがね聞いておりました」
ベルベットが椅子に座るよう勧めたのでアリシアはそれに従うと、ビビアン自ら紅茶を淹れたので恐縮した。
「さて、本日はどういったご用件でしょうか」
息子からアリシアが自身達に会いたいと聞かされた時から、今は時めく高名な剣士がわざわざ出向く用事はないとベルベットはずっと疑問に思っていたのだ。
「ご子息についてなんですけど……」
アリシアがトータムを一瞥すると、頷いていたので話を続けた。
「現在、お付き合いしている方がいらっしゃるのはご存知でしたか?」
両親は寝耳に水だったらしく目を剥いて息子を見た。
「お前、まさか武具屋の娘じゃないだろうな!?」
父親の低い声にトータムが頷くと母親の表情が崩れてその場に座り込む。
「あれほど別れろと念を押したはずだ!! いいか、お前はメイル家の息子なんだぞ!!」
「分かっているよ、父さん。でも、僕はリンダを愛しているんだ」
「身分違いも甚だしい」
ばっさり切り捨てたベルベットは押し黙ってしまったのでアリシアが口を開いた。
「リンダはとてもいい子です。それに、剣士と武具屋はお互いなくてはならない存在と思いますが」
「だったら、仕事の関係だけで済ませればいい。何も恋愛沙汰にならなくともいいことだ。第一、あなたが口出しすることではない」
この一言は痛烈にアリシアの胸に刺さった。
-よそ者がでしゃばっていいはずがないー
シオンが言った台詞が頭から離れない。
事実、アリシアとトータムは知り合ったばかりの縁もゆかりもない赤の他人なのである。互いの深い事情も考慮せずに丸く収めようとする方が無謀なのだ。
今になって、事態の深刻さと自身の安直な考え、そして浅はかさを痛感させられる。




