リンダの恋
二、三日経ってアリシア達は鎧を預けた武具屋に行ってみると煤と汗にまみれて働くリンダを見つけた。
向こうもアリシア達に気付いて作業する手を止めてこちらへやってくる。
「すみません。まだ仕上がってしないんですよ」
「近くまで来たから寄ってみたの。あなたの仕事が見たくて」
えへへ、と照れ笑いをしながら奥へ案内してくれた。
「得物は主に父がします。私は鎧の繋ぎや手入れを担当で……」
リンダの説明を聞きながら特殊な道具や材料を二人は興味津々で見入っている。シオン達も鎧の手入れはするが本格的な修繕は専門家である武具屋の彼等に任せている。
リンダの父親が剣の研ぎの工程をしていたのでシオンは固唾を飲んで見つめている。一回研いでは自分の目で確かめてまた研ぐ。気の遠くなる作業を一瞬の気を抜くこともなく根気よく続ける。まさに、神経と魂を削る仕事だ。
「剣士殿は、打ち込む時右に流れる癖がありますな」
「分かるのか!?」
「ええ。剣を見ればその方の使い方が分かります。だてにこれで飯は食っていませんからね」
大したものだ、と感心していると店先に新たな客が来たようでリンダが飛んで行った。
「いらっしゃい」
「やあ、頼んでいた物は出来ているかい?」
「はい。こちらに」
やってきたのは栗色の髪をした若い剣士だった。
リンダは大事に剣を抱えて彼に渡した。早速、彼は鞘から剣を抜いて仕上がりを確かめる。
「うん。さすがストーべさんだ。よく仕上がっているよ」
リンダが褒められた訳ではないが身をよじって照れている様子をシオンは眺めていたが「帰ろう」とアリシアを促した。
「お邪魔しました。また来てもいいかしら?」
「はい。喜んで!!」
リンダと剣士は其々頭を下げるとまた二人で話し始めている。
「あれは惚れ合っているな」
しばらく歩いているとシオンが呟いた。
「あの二人のこと?」
「ああ。目を見ればわかる」
「そうなの?」
恋愛沙汰に関してはシオンの方が長けているので彼がそう言うのなら違いないのだが、目を見ても分からなかったアリシアは自身を少し情けなく感じた。
「駄目ね……。全然気付かなかった」
「なに、お前さんが落ち込むことはないさ」
人の恋より自身の想いをどうにかしてほしいのがシオンの本音だ。想い人が恋愛に疎いアリシアである以上急展開は望めない。
オマスティアではあんなに俺の胸で泣いたくせに。
相変わらず美しい彼女が恨めしくも思う今日この頃だ。




