リンダの恋 2
リンダの相手はトータム・メイル、金色の髪を持つ二十歳の剣士で名家の出身ともあって顔立ちや物腰は柔らかい。
アリシアが武具屋の前を通り掛かると、大抵は二人で楽しく立ち話をしている。
あれは惚れ合っているな。目を見れば分かる。
あのリンダの輝いている瞳トータムの温かい眼差しを見ればシオンの言う通りかも知れないとアリシアはようやく納得した。
ー剣士と武具屋の娘ー
ここの国民が身分の違いをどう捉えるかは把握していないが、二人には幸せになって欲しい。
アリシアはかつて自身が成し得なかった愛をリンダ達に託すように見つめているとシオンが横に並んだ。
「羨ましいかい?」
クッソとの悲恋を知っているシオンだが不思議とその台詞からは嫌な感じはしない。だから、アリシアは素直に本音が言えた。
「ええ、とても」
すると、シオンは漆黒の瞳を細めた。
「それはよかった」
「よかった?」
「そう思えるということはまた人を愛せるってことだろ?」
そうだろうか。そうなればいいと願うが今のアリシアには時間が必要だ。そして、その時が来るまでシオンは想い人の傍にいようと思う。
「私ったら、二人の様子に気付かないなんて」
「まあ、それには経験と勘がいるからな」
多くの女性と浮世を流したシオンとクッソが初恋だったアリシアとの差は歴然で、そのことが彼女を憮然とさせた。
「やっぱり、多く経験しないとダメかしら?」
おいおい、今とんでもない台詞を口走っているの気付いているのか。
真剣な表情で考え込んでいるアリシアにシオンはぎょっとした。時折、天然な発言で彼を慌てさせる。
「真剣に悩むようなものでもないさ。お前さんは今のままで十分だ」
少し気が楽になったのか、アリシアが小さく笑ってこちらへ向かってくるトータムに一礼した。
「リンダから聞きました。あなたは『漆黒の剣士』でいらっしゃるんですね」
「『美しき死神』も一緒だ」
シオンがさりげなく体を開けてアリシアを紹介すると、トータムとリンダは目を丸くした。
「死神っていうくらいだから、もっと冷たい感じの人かと思ってました!!」
知り合った頃からシオンが彼女の名前を連呼していたが、まさか『美しき死神』のアリシアだとは夢にも思わなかったらしい。
「高名なお二人にお会い出来るなんて僕達は運がいい」
「お前さんは見たところ然る場所に仕えてるんだろう」
「はい。祖父の代から城の騎士団に身を置いています」
「由緒正しい家系らしいな」
シオンの何気ない台詞に、先程まで笑顔だったトータムとリンダの顔が一気に曇った。




