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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第四章 二人の距離
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赤毛の少女

 鎧を預けて身軽になった二人は街を散策したが、並んで歩くとここでも俄かに注目を集める。

 アリシアのブランデー色の髪と瞳は太陽の光を浴びて澄んだものとなり白い肌に映えた。しなやかで見事なプロポーションの体はタイトな服装により一層引き立っている。

 シオンは、漆黒の髪を無造作にかき上げると黒い瞳と精悍な顔立ちが強調されて、鍛えられた長身の体と合っている。

 二人とも美男美女といえるが、アリシアの場合は、自身の美貌を全く自覚していないのでいつも無防備でシオンを慌てさせる。

「そっちが似合っているよ」

「また厭らしい目で見てる」

「心外だな! いつ俺が厭らしい目で見た!?」

 わざと拗ねるシオンに思わず笑みがこぼれた。

「やっぱりアリシアは笑顔が一番だ」

 漆黒の瞳に、アリシアもまた美しい瞳で応える。


 そんな二人の前に、鉄屑が一つまた一つと地面に転がってきた。どうやら、先を行く人物が抱えている袋からこぼれ落ちた物らしい。

 アリシアが拾っていくが結構な数になったところで呼び止めた。

「あの、落としましたよ」

 ぎこちなく振り向いた人物は胸に大きな袋を抱えているので、顔はおろか前さえ見えていない状態だ。

「有り難うございます」

 頭を下げた瞬間、袋から大量の鉄屑が雪崩落ちた。

「あー!!」

 悲鳴からして若い娘のようだ。

 鉄屑を拾い始めた彼女とアリシアにやれやれとシオンも続く。

 ようやく全部拾い集めたところで三人は初めて顔を合わせた。十七歳くらいで赤毛を一つに束ねたそばかすのある娘は、お世辞にも美人とは言えないが素朴で笑顔が可愛い。

「あっ、あなた方はさっきの!!」

 さっきっていつだ、とシオンが小声でアリシアに尋ねたが彼女も首を傾げている。

「武具屋で鎧を預けて下さった剣士様ですよね」

「あの武具屋に働いているのか」

「はい。娘のリンダです」

 武具の修理は金属を扱うので男性でも重労働な仕事だがリンダは小柄で線が細い。男物しかなかったのかつなぎの袖と裾はかなり折り曲げていた。

「女の子なのに偉いわ」

 アリシアから褒められたリンダははにかんで俯いた。

「まだ駆け出しなんでいつも父に叱られてばかりで……」

 服や顔は油と埃で汚れているのに不満に思っていない笑顔にアリシアは感心した。

「本当にその仕事が好きなのね」

「周りからは女がてらに……って言われるけど、やりがいがある素敵な仕事だと思っています」

 ここにも自分の道を一生懸命生きている人達がいるのだとアリシアは嬉しくなった。



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