一つ屋根の下で
ついにアリシアとシオンが同棲!?
波乱のオマスティアを離れて、山に囲まれたカスピアという国を目指した。
鉱山が多く、良質な鉱石が採れるので工業が発展している。腕のいい鍛冶屋や細工物に定評があるので武具の補修や買い付けに好都合な国なのだ。
城下町に入ると剣士達の姿も多く、その者達を対象とした宿屋酒場も軒を連ねている。特に、武具の補修には時間がかかるとあって自炊する間借りが安くて人気だ。
アリシア達も宿の主に部屋を案内してもらっているところだ。
「いい部屋ね」
浴室、キッチン、居間と一通り見回ったアリシアが呟く。
「夫婦が新居を見に来た会話だな」
悪戯っぽく笑うシオンにアリシアは顔を真っ赤にした。
「言っておくけど、部屋は別々よ」
ところが、主は浮かない表情でこちらを見ている。
「何か問題でも?」
「い、いえ。てっきり一緒の部屋でいいのかと思いまして、先程一部屋貸してしまいました」
「ほかには?」
「お陰さまでたった今満室になりました」
と、主の台詞にシオンはしたり顔だ。
「どうにかならないかしら?」
あまりにもしつこく食い下がる彼女にシオンは憮然とした。
「そんなに俺と一緒が嫌か!?」
ひょっとして、怒ってる……?
アリシアは、申し訳なさそうに首を横に振った。
「それではごゆっくり」
主が部屋を出たので、シオンは早速鎧を脱ぎ始めた。
「な、なに!?」
「なにって、武具屋に持っていくんだろうが。お前さんこそ何してる?」
何を勘違いしているのか、両腕を交差させて胸をガードするアリシアに呆れた。
「俺を何だと思っているんだ!? 襲わないから安心しろ」
普段の言動を考えればそう思われても仕方がない。自業自得といったところだ。
「そういうことね」と鎧を外すも舞い上がっているせいか金具がなかなか外れない彼女に業を煮やしたシオンが手を貸してやる。
オマスティアの時と大違いだな。
あの時の彼アリシアは威厳があり近寄りがたい空気を纏っていたが、目の前の彼女は意外と不器用でそそっかしい。冷静沈着で何でも器用にこなす印象があるだけに、どうにか鎧を外し終えて溜息をついている彼女が愛しくもあり可笑しくもある。
それだけオマスティアの過去が、彼女を縛り本来の笑顔を奪っていたのだろう。
シオンが二人分の鎧を持って部屋を出たので、アリシアも慌てて追い掛けた。
間借りの主から教えてもらった武具屋に鎧を預けたが、仕事が立て込んでいて仕上がりは早くても三日はかかると言われた。
「仕方ないな。しばらくはアリシアと同棲生活になりそうだ」
「同棲じゃなくて同居よ」
律儀に言い直すアリシアに笑いながら肩を抱く。
「一つ屋根の下で暮らすんだ。どちらも変わらんさ」
傍にいると言ったシオンの台詞をどう捉えたらいいのか、今になって悩むアリシアだった。




