喧嘩するほど仲がいい!?
最初はアリシア一人の旅だったが、シオンと出逢い、フィリカと家族になり、そしてガトルが仲間に加わり随分と賑やかなものとなってきた。
シダが亡くなってから独りで暮らしてきたフィリカにとって、複数の人間と長い時間過ごすのは初めてである。
家族ってこんな感じかなあ。
木陰で休憩している三人に視線を送る。
アリシアお姉様がいて、シオンがお兄さんで、ガトルは……お父さん?
偉そうにふんぞり返っているガトルを想像して吹き出した。
「いま、俺の顔見て笑っただろう?」
不愉快露わに言うとフィリカは慌てて首を横に振る。
「自覚あるんだ」
フィリカがぼそりと呟くと、ガトルがすぐさま反応した。
「ん? 何か言ったか?」
「独り言だから気にしないで」
「やけに大きな独り言だな」
初対面から口論が絶えない二人を馬上のシオンは呆れていたが、アリシアの見方は違っていた。
フィリカの態度にシオンは上手くあしらい喧嘩に発展しないが、ガトルの場合はどんな些細な言葉でもちゃんと拾ってくれる。歳は十近く離れているが立場は対等だ。
フィリカも言い合いをしながらも何処か楽しそうなので、アリシアもガトルがいてくれてよかったとつくづく思う。
「いい発散相手だろ?」
シオンが隣に来て囁いた。
「フィリカの為にガトルを?」
「まさか。まあ、結果往来ってところだな」
さりげない気遣いができるシオンが羨ましくもあり誇らしくもある。
自分が愛した剣士だから……。
いつか木の下で初めてシオンと口づけした夜を思い出して頬を赤く染めた。
あの後、二人は肩を寄せ合いしばらく星を眺めていた。夜風が冷たくなり、アリシアが身震いしたので部屋に帰る。
「お休み」
「ああ、お休み」
短いが情がこもった挨拶を交わして各々のベッドへ潜ってみたが、なかなか寝付けなかったのは二人同じだった。
互いに初めての恋ではないが、初恋の頃みたいに鼓動が早く胸が苦しい。
ちらっとシオンを窺ったが、いつもと変わらない様子に理不尽さを感じた。
こんなにもドキドキしているのは私だけ?
否、シオンも未だ夢心地で平常心を保つがの精一杯だ。想いが叶い、浮かれるのは剣士としてどうかと気が咎め、そんな自分をアリシアに見られるのも不本意である。
肩でも抱きたいところだが、フィリカやガトルがいる手前大っぴらな行動は慎まねば……と理性に刻んだ。
多くの女性を渡り歩いた彼でも、純粋で気高いアリシアは眩しく映る。
ふと、触れるか触れないかの微妙な位置で彷徨うアリシアの手に気付き、シオンが握ると彼女がこちらを見上げた。
今まで見せたことのない無邪気な笑顔に、シオンは手にそっと力をこめた。




