ガトルとバトル!?
「さて、これからどうする?」
朝から食欲旺盛のガトルはまだ鶏肉に喰らいついている。
「あまりこの地方には詳しくないの。道案内を頼めるかしら」
アリシアが訊くと、「そうだなあ」と首を捻った。
「食い物、ギャンブル、女……」
話が変な方向へいきそうなのでフィリカが睨むと、ガトルは咳払いをして誤魔化す。
「ブルゲという商人の町があるんだがどうだ? 活気があって品揃えがいい」
「買いたい物もあるし、そこへ行きましょう」
アリシアは賛成したがシオンの反応は冷ややかだ。
「どうしたの?」
「なんでもない。気乗りしないだけだ」
やっとシオンに気持ちが近付いたと思っていたのに、なんだか遠い存在に感じるのは気のせいだろうか。
「いずれにしろ、この町を通らんと先に進めんぞ」
自分の提案に乗り気ではないシオンに、ガトルは不満気である。
「そこのお嬢さんだって、見たところ旅慣れしていないだろう。疲れているんじゃないのか?」
話を振られたフィリカは驚いて、大きなグリーンの瞳を更に見開いた。
「ちょっと……だけ」
これまで馬に揺られる旅に無縁だったので疲労もたまってきている。 会って間もないガトルに指摘されるとは、この男がさつにみえて意外と気遣いができる人間なのかも知れない。
仕方ないといった感じで軽く息を吐いてシオンが頷いた。
胸に一抹の不安を抱いて……。
昼過ぎにはブルゲの町へ到着した。軒を連ねる問屋を商人達が行き交う賑やかな所だ。
ガトルの知り合いがいる宿へ、半ば強引に押し掛けると二部屋を確保できた。
ここから先は自由行動となり、フィリカは荷物持ちにガトルを指名して街へ繰り出すことにした。
本当はアリシアと行きたかったが、近頃シオンといい雰囲気なので邪魔してはいかないと彼女なりに気を利かせたのである。
「なんで俺なんだ?」
ガトル自身も行きたい所があったのだが、有無を言わせないフィリカの迫力に負けて仏頂面で後をついていく。
フィリカとガトルの身長差は十五センチ以上ある。年齢も十近く違うのにこの小柄な少女に押されっ放しである。
蜂蜜色のツインテールがリズミカルに揺れる様子は、いつも元気いっぱいのフィリカを象徴しているようだ。
アリシアによると『医術の神』と呼ばれたシダの愛弟子らしいが、若く可愛い姿からは想像し難い。
「さっさと済ませようぜ」
「ダメダメ!! ちゃんと安くていい物を買わないと」
「まだ若いのに考えがオバサンだな」
「だ、誰がオバサンよ!! あんたみたいにいい加減だとこっちが苦労するんだから!!」
またフィリカに説教されるガトルは、口は災いの元という言葉を今更ながら思い出したのだった。




