森を探索
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階段を降り切ると、そこは森だった。……森かあ。食べ物ってどうなんだろう。森に何かあるんだろうか。
「森は当たりなのか?」
「まあまあの当たりさ。一番は海さ。塩がないとこの先詰むのさ」
「それはまあ、確かに。食べ物はあるって事だよな?」
「あるかどうかは運しだいさ。でも、果物なんかはあるんじゃないのさ? 探索しながら進むのさ」
「そう言えば、下に下に行くダンジョンなんだよな? という事は、何処かにゴールがあるって事で良いのか? それとも無限に続いていくのか?」
「ゴールはあるのさ。ダンジョンの最奥まで行くと、ボスが居るのさ。それを倒せば、ダンジョンの入り口まで飛ばされるのさ」
「……んで、今回の目的は、食べ物を見つける事だよな? ゴールは目指すのか?」
「難しいところさ。あたしよりも強い敵がいる可能性もあるのさ。だから、40階層まで行ったら引き返すのさ」
「40階層……。結構深い所まで行くんだな?」
「あたしの強さはそれなりさ。40階層くらいなら何とかなるのさ。特殊なダンジョンでもない限りは大丈夫さ」
「割と信用してるからな? マジで」
「当り前さ。マスターを殺させはしないのさ」
そんな訳で、森を探索する。別に木々の間が狭いわけでもない。狭くとも3メートルはある。……視界は頗る悪いが。これ、階段の場所を覚えるのだって難しいんじゃないか? というか。
「既に迷ったんだが?」
「森型のダンジョンさ。仕方がないさ。特に索敵するスキルも無いし、地図を作れるようなスキルも無いのさ。当たって砕けろなのさ」
「……弱くていいから、何処にいるのかが解るカードを手に入れないと詰むんじゃないか?」
「そういうカードを手に入れるにも、ダンジョンに潜らないといけないのさ。その環境に慣れたカードの力が必要になるのさ」
「あー。そういう事か。という事は、出口を探そうにも、魔物と出会わないといけないし、ある程度は討伐しないと進んでいくことが出来ないと。そもそも戦闘だけで良いなら、強いカードを集めるだけで良いのか。弱いカードも使わないと、生き残れないって事、でいいのか?」
「大体当たっているのさ。弱いカードのスキルを、強いカードに覚えさせていって、どんどんとダンジョンの攻略をスムーズにしていくのが正解だとは思うさ。それ以上のやり方は知らないさ」
確かに。後天スキルは後から増やすことが出来るんだし、教え合う事が可能であれば、強いカードに集中して覚えさせれば、色々と便利になるよな。……いや、中等収納なんかを弱いカードに覚えさせて、収納係も作ったりも出来るし、色々と使い道があるのかもしれない。まずは他のカードを手に入れないと意味がないんだけど。
「しっかし、思ったよりも魔物が居ないな。どうしてなんだ?」
「出ていった可能性が高いのさ。戻ってくる事もあるとは思うけど、基本的にはリポップは1日に1回か、踏破する毎に1回なのさ。カードを集めたければ、ある程度は攻略しないといけないって事なのさ。……そこさ!」
「ギャウン!?」
「!? 敵か!」
「グレイウルフさ。囲まれてるかもしれないさ」
「マジで!?」
「基本、魔物になった奴らも、動物の習性は変わらないさ。一匹狼ならこいつだけだけど、狼は普通は群れを作るのさ」
「俺は戦闘の役には立たないぞ!?」
「端から戦力外さ! 木刀で牽制だけしてれば良いのさ!」
酷くない? まあ、魔物に勝てるのかって言われたら、難しいかもしれないけどさ。
そこからは一気に襲われた。囲まれていたらしい。俺は適当に木刀を振り回すことしか出来ない。噛まれたら死ぬ。食われたら死ぬ。まだ死にたくない。
「まだ死にたくないからな! 何とかしてくれよ!」
「そもそもマスターはある程度の攻撃は弾くのさ! カードからバリアを与えられるのさ!」
「あれ? それじゃあ攻撃を食らっても死なないのか?」
「死にはしないさ! けど、バリアに回す分、あたしの戦闘力が下がるのさ!」
「マジで!? それはそれで問題があるだろ!?」
「だから攻撃を喰らわない様に牽制はしておくさ。――そこさ!」
必死で牽制する。攻撃されたら死ぬわけでは無いらしいが、バリアで貧乏神が弱くなっても困る。自分の身は自分で何とかしないと。とにかく力いっぱい木刀を振り回す。
貧乏神が2体、3体と倒していく。まだ終わらないのか、もう終わっているのかが解らない。気配察知系のスキルは必須だな。貧乏神がそっち系統のスキルを覚えてくれていれば助かったんだろうが。
とにかく、相手の数が解らない。終わってみて良かったって感じにならない限りは警戒を解けない。俺の体力の方が尽きるのが早いかもしれない。もう既に腕が重くなってきたからな。
「貧乏神! まだか!?」
「まださ! 後3体は居るのさ! 最後は一気に来ると思うのさ!」
「マジで疲れた! もう腕が重くなってきてる!」
「怪我したくなければ頑張るのさ! 来たのさ! 食らっておけなのさ!」
5体のグレイウルフがとびかかってくる。俺の方に。バリアがあるって解っていても怖すぎる! 何とかなれ! 必死に木刀を振り回す。そして、木刀があっさりを弾き返される。効果がまるでなしか!?
「貧乏神! やばい!」
「解っているのさ! 転んで怪我しない様にだけしておくさ! 攻撃はバリアが防御してくれるけど、転んだ怪我はどうしようもないさ!」
それを早く言ってくれ! こうなったら、ジャンピング土下座で防御姿勢を取るしかない。うおおおお! 見よ! 取引先との契約を履行できない時に見せる必殺技だ!
「秘技! ジャンピング土下座ガード!」
「謝ろうが向かって来るだけさ! でも、それなら転ばないのさ! 尊厳は知らないけどさ!」
「尊厳なんてない! 生き残れば言う事ない!」
「なら被害は無しさ。食らっておくさ!」
なんか爪で引っかかれたり、ガブガブされたりしたけど、問題なかったぜ。バリア優秀! 秘技の使用どころは間違っていなかった。ふっ、何度謝り倒したことか。普通は上司が責任を取るんだけどな! 上司が逃げるから、部下が土下座しに行かないといけないんだよ。
「ふう、ふう、ふう。お、終わったか?」
「終わったさ。とりあえず9体さ。さて、何か良いものは落ちてないかさ―」
「出来れば索敵持ちが落ちてくれると助かる。後は数の暴力で何とか出来るのであれば、何でも良いからカードをくれ」
「お? ちゃんとカードが落ちているのさ。貧乏暇なしの運気上昇が利いているのさ」
「マジで!? カードは有難い。……けど、貧乏暇なしって労働を対価に、じゃなかったか?」
「ダンジョンの攻略は労働さ。コンビニ漁りも労働さ。ダンジョンを探すのだって労働さ。ただ、それに賃金が発生していないだけさ。この世界で食べ物を確保するのは最優先課題であり、労働さ。あんたはそれだけ労働をしているのさ」
……コンビニ漁りが労働? 盗人にジョブチェンジしたのか? まあ、ホームレス状態ではあるけど。家に引きこもっていても仕方がないからな。生き残るためには、食べないといけない。……まあ、飲み物も欲しい所ではあるんだけど。何処かに湧水とかは無いかな? 水筒なら、貧乏神の中等収納に入っているし。最近の水筒は凄いんだぞ。色々と技術が使われているからな。……詳しい事は知らないけど。
「まあ、そんな事よりもカードだ、カード。何枚落ちてた?」
「流石に1枚さ。後は魔石が9個と、初等ポーションが1個さ。カードが出ただけマシさ」
マジでカードは有難い。……強いと嬉しいな。少しでも戦力が欲しい所。改めて、グレイウルフのカードを見てみた。
――――――――――
種族:グレイウルフ
戦闘力:120
種族スキル
・群れの縄張り
後天スキル
・従順
・勇敢
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うーん。強いのか? そして、気配察知とか、索敵とか、そういったスキルが無いんだが……。
「とりあえず呼んでみるのさ。種族スキルの方にあるかもしれないのさ」
「あー。それがあるのか。よし。……どうすれば呼べるんだ?」
「所有者登録をしないといけないのさ。あたしは魂に紐付けられているから良いけど、他のカードは所有権が曖昧さ。あんたの血を少しだけ吸わせるのさ。そうすれば所有権を得られるのさ」
「んー。血かあ。……コンビニの裁縫セットがあったよな? それで針刺すわ」
「そのくらい指の薄皮を嚙み切れば良いのさ。それとも何かさ? 鼻血でも出すのさ?」
「いや、それは怖すぎんだろ。漫画ではやってるけどさ。流石に無理。それなら鼻血を出した方が簡単だ」
「そもそも緊急事態でカードを使う事もあるのさ。血を流せるように慣れておく方が良いのさ。何かしら考えた方が良いとは思うのさ」
ええ……。いや、解るよ? 緊急時に針刺して血をなんて暇が無いだろうし。そっちの方がかっこいいし? 理屈は解る。けど、針刺すのだって怖いんだぞ? ほら、薄皮通して遊ぶこともあったじゃん? 小学生の時とかやらない? 裁縫セットの待ち針とか使ってさ。その延長線で血が出る事もあったと思う。うん。考えるだけで痛い。マジで血で登録しないと駄目なのか?
「……血で登録する以外に方法は無いのか?」
「無いのさ。さっさと覚悟を決めるのさ。それでも男なのさ?」
「男の方が痛みに弱いって、研究論文が出ているんだよ! それに怖いもんは怖い」
「じれったいさ。じれったいけど、あたしはあんたに攻撃できないさ。とっとと登録するのさ」
「解ったって。っつ!? 痛った! 刺し過ぎた!?」
「血が出たのならどっちでも良いのさ。さっさと登録するのさ」
2度目は御免だからな。ささっと血を垂らす。そうすると、カードが光った。……所有者登録が出来たって事で良いのか?
「時間を食い過ぎなのさ。さっさと呼ぶのさ」
「……マジで痛いのは嫌なんだけど? まあいいや。こい、グレイウルフ!」
カードから光が出て、それが形を作っていく。……そもそもグレイウルフって喋ることが出来るのか? それも確認していないんだが。
「お呼びでしょうか、マスター」
「お、おう。グレイウルフだよな?」
「そうですが……」
「当たり前の事を聞いてるんじゃないのさ。さっさと事情を説明するのと、スキルについて聞き出すのさ」
「ああ、解ってるって。えっとな。今はダンジョンの中にいる。それで、道が解らなくなったんだ。とにかく森を歩くのに適していない戦力しかいない。お前の種族スキル、群れの縄張りについて話してくれ」
「解りました。群れの縄張りですが、気配察知、危機察知、嗅覚上昇を内包するスキルになります。森を歩くことは可能です。が、出入口は解りかねます。場所を知らないので、何ともなりませんし、臭いも解らないので」
「気配察知! よしよし。まずはそれがあれば十分だ。……だよな?」
「十分だとは思うのさ。それよりももっと探索した方が良いのさ。出入り口を覚えられるのかどうかは、やってみない事には解らないとは思うのさ」
よし。さっきみたいに不意打ちはされることはないだろう。……気配遮断でも見抜けるのか? その辺はどうなんだろうか?
「気配察知と気配遮断、どっちが優先なんだ?」
「打ち消し合うと思ったらいいのさ。素の状態での索敵が頼りになるのさ」
「あー。まあ、先制攻撃される可能性は減ったって事で。気配遮断を使う訳にもいかないしな……。戦闘をしないと、経験値も貯まらないんだし」
「そういう事さ。多少は安全になったのさ。これでどんどんと先に進めるのさ」
だな。……これ以上留まる事も危険だろうし、どんどんと先に進まないとな。食べ物を探すのが最優先だけど、何処にあるんだろうか。森の地図なんて作れないし、何かしらのスキル持ちを探さないといけないんだろうな。でもまあ、何とかなりそうではある。まずは食料探しだ。経験値稼ぎもしながら進まないといけないけど。




