ランク詐欺
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それからは、圧倒的だった。まずは多少なりとも使い込んだカードの方がやりやすいんじゃないかと言う事で、フレスベルグから繋いでいった。……そしたら、貧乏神とのラインが切れた。どうやら、簡単にはいかないらしい。という事で、かなり集中して全員とのラインを繋いだ。
その結果、俺は動けなくなり、ラインを繋ぐことで精一杯だった。目を閉じて、魂を知覚して。そのラインを見つけて、どんどんと太く。最初は繋がったりまた途切れたりはした。両手両足で紐を手繰り寄せる様な、……いや、上手い奴がピアノを弾くような感覚だろうな。俺はピアノを弾けないから、何とも言えない所ではあるが。
カードとの視界も共有できるっぽいが、俺にはまだ無理だった。全員とラインを繋いだ状態で維持するのが精一杯だった。何とも情けないが、マスターとしての技量を問われれば、まず間違いなく最下層だろう。やっと出来たのかって感じだ。他の人は、何もしなくても出来ている可能性がある。俺が気が付いたのは、ある意味で偶然。こんな偶然がなかったら、知る由も無かったんだろう。
とはいえ、俺が動けない内に、カードたちが何とかしてくれた。ただ、無理だったことは、ティル・ナ・ノーグを通じて、眷属のオベロンとティターニアにも接続できるのか試したんだけど、無理だった。技量が足りないのか、そもそも無理なのか。無理な方だとは思うんだよな。
そんな訳で、戦闘中に棒立ちというのもあれなのだが、何とか戦闘中だけでもテレパシーを使えるようにならないといけない。本来であれば、常時繋ぎっぱなしの方が良いんだろうけど、そこまでの技量は無い。訓練しないといけないと言う事だ。恥ずかしながら、俺の実力というのはその程度の話だったという事だ。
「そもそもの話さ。これに気が付いている人も少ないとは思うのさ」
「は? なんでだよ。普通の人なら出来て当然って感じの技術なんじゃないのか?」
「それは違うと思うのさ。今回みたいな環境、言葉を発しないで、意思を伝えないといけないって状況になる方が珍しいのさ。基本的には声を出して指示を出していたのさ。日下部病院の防衛線を覚えてないのさ?」
「……それは、人間同士は無理だからじゃないのか?」
「まあ、それもあり得るけどさ。そもそも言葉にしなければ伝わらなかったと考える方が普通なのさ。これはある程度の、マスターとしての技術だとは思うのさ。誰でもできる訳ではないとは思うのさ」
「……となると、ある程度の報告は必要か?」
「必要だとは思うのさ。普通の人は出来ない可能性が高いのさ」
ふーむ。俺としては、今頃気が付いたのかって言われそうな気がしたんだけど、そうでもないのか? そうしたら報告は必要だとは思う。情報共有は行っておくべきだし、出来ることは伝えた方が良い。別に秘密にする事でもないんだし。
とりあえずは、この1周が終わったら、院長先生に報告してみようか。知らない技術だったら、知っておいてもらった方が良い。逆に、既存の技術であれば、色々と教えを乞うた方が良い。
「それと言っておくことがあるのさ」
「ん? なんだ?」
「ラインを太くすると、それだけで戦闘力が上がった様な気がしたのさ」
「……は? なんでだ?」
「それは知らないさ。けど、感覚的には、戦闘力の、5割くらいさ? そのくらいの力が膨れ上がったのさ。多分他のカードも同じなのさ」
「……それは、知らないと不味い技術なのでは?」
「不味いも何も、今日、さっき初めて知ったのさ。ダンジョンを潜り続けてこれさ。この能力に開花したのも、早い方なんじゃないのさ?」
「うーん。皆普通にしていたんじゃないかって思っていたんだが……」
「まあ、そう思うのは勝手さ。けど、戦闘力が上がるなら、今後は必須の技術さ」
「だよなあ。……なあ、感覚的には、だぞ? まだラインを太くすることは可能だとは思うんだよ。もっと太くした方がいいのか?」
「良いと思うのさ。それだけ戦闘力が上がる気がするのさ」
「は? マジで?」
「マジなのさ。大体5割くらいって言ったのも、安定しなかったからさ。それがラインの太さの関係なら、解らないでもないのさ」
「……マジか。それじゃあまだまだ先の技術があるのか」
「だと思うのさ。まあ、機会は沢山あるのさ。このダンジョンを攻略するまでは、良い修行になると思えば良いのさ」
と、そんな会話をしつつ、先へ先へと進んでいった。……残念ながら、棒立ちは変わらなかったけどな。まあ、まだまだ修行が足りないって事なんだろう。それよりも……。
54層目。
『だあああ! なんだあれ! 反則だろ!』
『知らないのさ! 見たならそれが現実さ! やっぱり雪女の知名度補正がおかしいのさ!』
雪女。54階層から出てきた日本の妖怪だ。神ですらない。ただの妖怪なんだけど、明らかに強さがおかしい。
ヨルムンガントの巨体もそうだし、北欧神話の女神、ヘルの攻撃も結構辛いんだけど、雪女の攻撃力が高すぎる。これ、Bランクなんじゃね? 本気でそう思った。
『攻撃が届かねえ! 吹雪がマジでやべえ!』
『デバフも碌に通らないのさ! 色々とぶっ壊れているのさ!』
『今のフレスベルグの戦闘力が幾つだと思っているんだ! 成長限界で3400。このテレパシーで5100。巨大化で10200。大通連と小通連を足し込んで11700。これで押し込まれる? あり得んだろう!』
『これだからネイティブは怖いのさ! 妖怪でこれさ! 神でも無いのさ! 普通はあり得んのさ!』
『冗談は止してくれって話だ。マジでこいつ、Cランクじゃないよな。絶対にBランクだろ!』
『それだと、ボスがAランク相当になるのさ! 流石にそれはダンジョンの広さから考えて、あり得ないのさ!』
『いや、これで雪女がCランクの方がおかしいだろ! これでCランクカードが落ちてみろ。確実にランク詐欺をやらかしてるぞ!』
『これがあり得るから日本家屋なんかを見たら避けた方が良いって言ったのさ! 雪女でこれさ! もっと知名度の高い神なら、半端じゃなくなるのさ!』
『でもそれはBランクやAランクの話だろ!? こいつの推定ランクは!?』
『こいつの推定ランクはCなのさ! でも、あたしよりは確実に格上なのさ!』
『貧乏神は1700だろ! 雪女は1800か? 1900か? それでこれか!? あり得ないだろ!』
『あり得ないけど、あり得ているのさ! 知名度補正っておかしいのさ!』
ぶっちゃけ、ボスよりも強い。というか、強かった。うん。このダンジョンは58階層までだったんだけど、ボスは北欧神話のヨトゥン。……ぶっちゃけ、道中の雪女の方が強かった。
いや、ヨトゥンもかなり強かったんだぞ? 巨大化を越える何かしらのスキルを使ってきて、マジでデカくなったからな。それに雪山という場所が関係しているのかは解らないけど、氷属性の魔法の武器みたいなので殴りかかって来たし。フラワシに抱えられて逃げながら戦ってたけど、本当に強かった。
……ただ、図体がデカいだけで、デバフには弱かったというか、図体がデカくなったから、デバフに弱くなったというか。巨大化で大きさが10倍、戦闘力が2倍、生命力が5倍、デバフ耐性が0.5倍だ。見た感じだと、100倍の5倍の25倍の0.1倍とかなんじゃないかな。マジでデカすぎたからな。その分状態異常にも弱かったんだろうとは思う。それであっさりと沈んだからな。体力はもの凄かったから、攻撃を長い時間していたとは思うけど。
なお、雪女もヨトゥンもカードを手に入れた。雪女は1900。ヨトゥンは3400だった。ヨトゥンは、巨神化というスキルを持っていたので、デカさが100倍、戦闘力が5倍、生命力が50倍、デバフ耐性が0.01倍という、デバフさえなければ最強クラスのスキルだと思う。戦闘力が17000まで上がるからな。バフを盛って盛ってすれば、状態異常無効とかにも出来るんだろうし、強カードで間違いない。
ただし、問題の雪女。戦闘力は1900で間違いないんだが、こいつも特攻隊のスキルを持つ奴が多いのと、雪状態で戦闘力が3倍、吹雪いていたら戦闘力が6倍、デバフ無効とかいうぶっ壊れだった。まあ、雪が無ければ戦闘力が0.5倍なので、強さは限定的ではあるんだけど、特攻隊も入れて17100。吹雪いていたのでこの数値だ。
ヨトゥンよりも強いじゃないか! Cランクはどう考えても詐欺だろう! 北欧神話の神よりも強くなってどうする! 吹雪いていれば、Aランクとも殴り合えるじゃないか! これだから日本の妖怪はって、貧乏神が叫んでいた。




