日下部病院
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宝箱を回収し、ダンジョンから出る。……結構大変なダンジョンだったけど、得るものは多かった。戦力も補充できたし、何よりも海が見つかったのが大きい。ここで塩を生成すれば、生活に困ることは無くなる。いい方向に進んでいるとは思うぞ。
ただ、2つのダンジョンを拠点とするのであれば、ある程度の所に避難所が欲しいとは思う。既に事が起きてから1か月。そのくらいの時間が過ぎている。避難所生活をしている人たちも多くいるはずだ。何が起きたか解っているけど、動けない人ってのは大勢いるとは思う。
時間が経てば、警察や軍が迎えに来てくれるだろうと思って、耐えている人も居るかもしれない。そんな人たちには悲報しか与えられないけどな。警察も軍隊も、生き残っているのかといえば、微妙だし、そもそも日本の本島には、軍隊はそこまで残っていないからだ。本島の守りは厳重にって考えもあるかもしれないが、大半の戦力は、前世の中国のあたりとシベリアのあたりに置いてあるからだ。そっち側が共産主義者との主戦場だからな。
そもそもが9割ほどの人が消滅しているんだ。警察も義務を負って居る訳ではないだろう。まだ職務に忠実な人が居るのかどうかだ。居ないとは言わないが、人助けをするにも限界があるだろう。組織が機能しているのであれば、問題なかったのかもしれないが。
「そんな訳で、避難所を探して回ろうかとは思うんだが、この地図を見てくれ」
「地図なんて持っていたのさ?」
「いや、スポーツジムだからな。怪我人が出る可能性も考えてあるとは思ったんだ。だから、病院の地図なんかはあると考えた」
「ほー。中々のものさ。それで? それが目的のもので間違いないのさ?」
「ああ。間違いない。そして、拠点の1つがここだ。このスポーツジムだ。そして、森型ダンジョンの場所がこの辺。この直線の上にある病院は無いが、ここならどうだとは思うんだが」
そこは総合病院だった。内科や産婦人科もあるとは思うが、何よりも外科が出来る病院だ。当然のようにベッドも沢山あるはず。……まあ、総合病院だからな。多くの人を収容できるとは思うんだよ。臨時の避難所としてもありだとは思う。
後は、目ぼしい施設は載っていなかった。地図的に、学校かなって場所も無くはないんだけど、ちょっと遠い。足を伸ばせば行けるとは思うけど、まずはこの総合病院から行ってみよう。無駄足になることは無いはずだ。
「ここならある程度の避難民が居るとは思うんだよな。非常用食料もあるだろうし、何とか生き残ってくれているとは思う。カードも渡せば、ある程度の事は出来るとは思うんだよな」
「まあ、何とかなりそうではあるのさ。それで? 今から行くのさ?」
「今から行く。1か月も戦力確保に動いたんだからな。外に魔物が出てきているってのもあるとは思うけど、生き残っている人はなるべく確保した方が、復興する時には役に立つだろう?」
「それは当然さ。ならとっとと助けに行くのさ」
方針は決まった。地上にも魔物が出てきている関係上、移動もリスクはある。が、そんな事を言っている場合でも無いからな。……それに、移動方法には、これがあるし。デュラハンのスキルの1つである、コシュタ・バワーという首無しの馬が牽引する馬車だ。
このスキルがあれば、弱い魔物は轢き殺して行ける。……まあ、魔石やカードは回収できないけどな。移動がメインのスキルになるんだし、デュラハンは装備化という強みもある。結構な数を確保できているし、戦力と移動をメインに考えるのであれば、置いてくるべきカードの1つではあるだろう。
コシュタ・バワーに乗り込み、御者をデュラハンに任せる。それで病院まで行ってもらう。予想では、そこにある程度の避難民が居るはずだからだな。居なければ、次の病院を目指せばいい。戦力もある程度あるんだ。難なく移動は出来ると思う。
そして、病院の近くに来たんだけど、バリケードと一緒に守っているカードたちの姿が見えた。
「来たぞ!」
「魔物の軍団だ!」
「勝てるのか? 結構な数だぞ!」
「先生を呼んで来い!」
「なんか敵と見做されているのさ」
「それもそうだろうな……。敵意がない事を示さないと、攻撃されかねない」
まあ、防衛戦力は居て当然か。病院をある程度戦力化出来ているって事でもあるんだし。見た事ないカードが沢山居るな。ある程度の戦力ではあるんだろうし、戦っても利益にならないからな。こういうのは回避するに限る。
「すみませーん。戦う意思はありませーん。そっちの責任者と話をしたいでーす」
「馬車から人間が出てきたぞ!?」
「……味方か?」
「言葉が通じるなら味方なんじゃないのか?」
「何でも良いから、先生を呼んでくるんだ!」
「そこの人! ちょっと待っててくれ! そこで止まってくれ!」
「だそうさ。どうするのさ?」
「待つに決まっているだろう? 何のために来たと思っているんだ」
「まあ、当然さ。相手の出方を見るだけさ」
そんな訳で、ある程度の時間を待った。そうしたら、何かしら強そうなカードを引き連れている人がやってきた。
「待っててくれたんだな。避難しに来たのか?」
「そうでは無いんですけど、ある程度はお話が出来るかなと思うんですが、どうですか?」
「今のこの状況の事とかか?」
「まあ、それもありますけど、食料確保が出来るダンジョンの情報とかですね」
「……なるほど。院長先生に会わせた方が良さそうだな。……こっちも内情は余り良くなくてな」
「まあ、あれから1か月は経っていますし、夏場ですからね。食べ物も保存食以外は腐っているでしょうし」
「まあ、そういう事だな。色々と情報を持っているという事だ。歓迎しよう」
そんな訳で、病院に連れて行かれる。……このカードは何なんだろうな。結構強そうというか、エジプト神話系の神様ではある様な気がしないでもないけど。壁画に似ているような気がするし。
病院の中に入る。……色んな人がいるけど、カードも結構な数いるな。色々と手伝いをしているようだ。まあ、人員は多い方が良いだろうし、カードの方が力が強いだろうからな。力仕事なんかは頼りになるとは思う。
「院長、外にいた人を連れてきました」
「連れてきた? まあいい。入ってくれ」
中に入ると、多少草臥れた男性が居た。……院長にしては若い様な気がしないでもない。こういう病院って、70歳くらいの人が現役で院長をやっているって感じがあるんだけど。
「さて、何で連れてきたのかとかは、ある程度後に話すとして、まずは自己紹介からだろう。僕は日下部 仁、この病院の院長をしている。まあ、先代から継いだのが最近だから、比較的若いのが特徴だね。カードはこのアルマテイア。戦闘力は850だ」
「俺は高沖 政人です。えっと、まあ、普通の会社員でした。カードはこの貧乏神で、戦闘力は1700です」
「1700……。そうなると、君のトートよりも強いCランクカードと言う事になるのか」
「そうですね。そうなるかと。おっと、私は日暮里 刑部という。この病院の外科医で、最高戦力であるトートをカードとして所有している。戦闘力は1400だ」
「えっと、Cランクカードとはなんですか?」
「ああ、それか。大体ではあるが、強さとランクが解らないと、戦力の配置が難しかったからね。そっちのトート神と一緒になって考えたんだ。戦闘力が1から50までがGランク、50から200までがFランク、200から500までがEランク、500から1000までがDランク、1000から2000までがCランク、2000から4000までがBランク、4000以上がAランクって感じで決めた。まあ、Bランクからは想像でしかないけどね。ここにいる最高戦力はトートの1400だし」
「なるほど……。ランクを付けたんですか。でも、貧乏神の戦闘力は、あんまりあてにならないんですよね。貧乏神ってデバフ特化のデバッファーなんで。アタッカーではないので、戦闘力の割には弱いらしいんですよ」
「ああ、それはこっちも同じだね。Cランクのトートもヒーラーだから。Dランクのアルマテイアもそうだね。だからこっちも戦力的にはそこまで強い訳ではないんだよ」
ヒーラーか。羨ましいな。俺の手持ちには、Eランクのヒーラーしか居ないし。シルキーが辛うじてEランクって感じだからな。戦闘力が200だし。成長していけば、ある程度の強さには出来るかもしれないが、ある程度である。当然ながら、そこまで強くはない。
「っとなると、Cランクのトートが最高戦力で、後はEランクとかDランクが精々で、この病院を守っているって感じですか」
「そういう事になるね。幸いなことに、患者さんはトートが治してくれたけど、戦力としてはカード頼りだから。人間ではどうしても勝てないしね。それでも、何とか防衛が出来るだけの戦力は整っているんだよ」
「……その代わり、そろそろ食料が危なくなってきている、そんな感じですか?」
「お察しの通りだね。食料が底を尽きかけている。いや、耐えるだけならまだ1か月は持つんだけど、それだけだと心細い。警察や軍が助けてくれるとばかり考えていたから、物資の回収も遅れてしまってね。手頃な物資は、他の避難所が持っていったらしいんだよ」
「ん? という事は、避難所である程度の交流がある感じですか?」
「まあ、近くの避難所とは話をしているよ。向こうも食料には余裕が無いって感じらしいけどね」
「それでですが、院長。どうにもこの高沖さんはダンジョンに潜っていたらしく。ある程度の食料が手に入るダンジョンの情報を持ってきてくれました」
「ダンジョンに? ……危ない橋を渡るものだ。最終的には潜らないといけないとは思っていたけど、まだ様子見していたんだよ。でも、そろそろ戦力を見繕って、ダンジョンに行かないといけないかなって話は出ていた訳なんだ。食料が枯渇したら、どうしようもないからね」
「俺も同じ考えでした。まずは自分が食べられるだけの食料を確保しようと。それで、2つのダンジョンを攻略して戻ってきました。その時に、ある程度の戦力も集めましたし、食べ物を確保できる場所も何とか見つけてきた感じです」
「……こう言ってはなんだけど、良いのかい? 命がけで情報を確保してきたんだろう? 僕たちに渡しても良いのかい?」
まあ、疑問に思う事もあるよな。全くの善意なのか。見返りが欲しいのか。そんな事を考えているんだろうとは思う。俺だって怪しいとは思うしな。
でも、全くの善意だ。地球を救った後、どうやって平穏を取り戻すのか。どうやって国を再建するのか。どうやって文明を復活させるのか。その事は考えないといけない訳で。それにはどうしても人口が必要になってくる。
その人口を、自分勝手に捨てたら、地球を救っても、人類が滅亡する可能性があるんだよな。出来る限り生きて貰わないといけない。日本を復活させたければ、日本人を多く生き残らせないといけない。そのくらいのことは俺だって考えるさ。




