ボス戦
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2日目は21階層まで行き、そこで引き返した。切りよく20階層で終わってくれれば良かったんだけどな。そうもいかないらしい。ダンジョンの階層はランダムらしいし、このダンジョンが簡単であることを祈るしかない。
ただ、俺と貧乏神の予想では、そろそろ変化があるという事である。俺は12層から魔物が増えたんだから、そろそろ魔物が追加されるんじゃないかという事。貧乏神の予想では、そろそろボスが居るんじゃないかと言う事である。
ダンジョンには広さがある。そこそこの広さがあるこのダンジョンではあるが、ダンジョン的には小さい方らしい。そんな感じがするんだそうだ。故に、そろそろボスが出てきてもおかしくないという事らしいんだよな。
我が貧乏神様は、割と知識が豊富である。そのお陰で助かっているのも事実なんだけど、どうしてそこまで知っているのかってのは疑問に思う事はある。まあ、知っているからといって、何か裏があるんじゃないかとかは思っていない。単純に、もうちょっと格が高いカードになるんじゃないかなって思っただけだ。
格が高いカードには、色々と教えていてもおかしくはないとは思うんだよ。それこそ天照大神の様な格の高いカードなんかはそうだよな。知っていても違和感がないというか。貧乏神ってそんなに格が高いわけでもないって自分でも言っているしな。何でそこまで知っているのかだ。まあ、俺にはそこまで関係の無い話でもあるんだけど。
「知っているって良い事だけど、ある程度教えておいてくれないと意味がないとは思うんだよな。……けど、関係の無い事まで教えられても、覚えられるかどうかが解らないんだよなあ」
「人間そんなものさ。知識は邪魔になることは無いけど、覚えられるのかどうかは別問題なのさ。そんな事よりも早く寝るのさ。明日は決戦の時が近いのさ。多分だけど、明日で最下層まで行けるのさ。油断しない様に寝ておくのさ」
「見張りは任せた。……人間は睡眠も取らないといけないからな」
「その辺はカードと違う所さ。同じにされても困るのさ」
「……だな。じゃあお休み。早いうちに起きるから」
「ゆっくりすると良いのさ。疲れは残さない方が良いのさ」
そんな訳で、就寝。寝ると言っても、まだまだ22時くらいなものだ。日付が変わる前に眠ることが出来るって、有難い事だとは思うぞ。……その分早く起きる癖がついてしまっているけど。
そんな訳で、朝。いやまあ、まだまだ真っ暗なんだけどな。5時間睡眠でどうしても目が覚めてしまうんだ。そういう感じに慣れたってのもあるんだけど、暑くて眠れないってのもある。夏なんだ。暑いんだよ。何とかならないかとは思うんだけどな。
「夜中なのに暑い。しっかりと眠れたのは良いけど、2度寝は無理だな。目が覚めすぎてる」
「難儀なものさ。もう少し寝ていても良いのさ。1日中ダンジョンに潜っているのさ。それくらいは疲れている筈なのさ」
「何というか、慣れだな。5時間も眠れば十分だ。それじゃあ、行こうか」
「今日こそ攻略してやるのさ。そろそろボスが近いとは思うのさ」
「そうであってほしいけどな。……良し、行くか」
ダンジョンに潜り始めて3日目。どんどんと慣れていく自分がいる。人間は慣れる生き物だ。どんな環境にだって、慣れることが出来る。……色々と出来るようになっていくとは思うんだよな。この崩壊した世界にも、慣れていくことはある。もっとも、慣れていかないと死ぬだけだとは思うが。
最短ルートで下へ下へと潜っていく。ダンジョンに慣れるという事は、こう言う事も出来るという事だ。大体の階段の位置を覚え、そこに向かって歩いていく。出てくる魔物は蹴散らし、2時間もしない内に昨日の場所まで辿り着いた。
「……良し。探索開始だ。皆で力を合わせていくぞ。命を大事にだ。貧乏神が何とかしてくれるからな。自分の身は自分で守る。俺も何とかする。だから、頑張ろうな」
「油断はしない事さ。もうすぐボス戦さ。それに備えるがいいさ」
ボス戦だって言うが、まだまだ気を抜いてはいけない。ダンジョンがもっと深い可能性もある。いつも通りを心がける事だ。まだまだ慢心する訳にはいかない。
そうして、24階層に足を踏み入れた瞬間に、ビビっと来た。……どうにも最下層にやって来たらしい。同じ森だけど、空気が違う。何というか、張り詰めた雰囲気だ。
「どうやら最下層に来たらしいのさ」
「……だな。空気が変わった。強敵が出てくる気がする」
「まあ、任せておくのさ。1体1なら負けないのさ」
「頼んだ。……取り巻きなんかは出てくるのか?」
「ボスによりけりさ。取り巻きが居ないボスも普通に居るのさ。というか、居るなら嗾けてくるのさ。来ないと言う事は、単体のボスなんじゃないのさ?」
「……なるほど。まあ、偵察くらいはするよな。こっちは気配を追えば良いんだよな?」
「そういう事さ。サクッと倒して、12階層でカードを粘るのさ」
森の中をグレイウルフの誘導に従って進む。どんどんと奥地に行っているんだけど、何処にボスが居るんだろうな。油断はしない様に、って思っていたら、木の枝が飛んできて木に当たる。来たか。
「貧乏神!」
「解っているのさ! こういう時はデバフの使い時なのさ! 弱っておくがいいのさ!」
体長2.5mくらいはありそうな鬼。いや、オーガと言う方が良いのか? よく解らないけど、多分オーガだとは思うんだよな。鬼というと、どうしても人間の様な大きさで、ガタイもそこまでな気がしないでもないんだけど、あの鬼は、もの凄い肩幅をしている。大きな鬼だ。
仮称オーガとしておこうか。なんとなくだけど、日本の鬼とは違う気がする。小鬼とは系統が違う気がする。ゴブリンは見た事がないけど、それに準ずる感じなんじゃないかなとは思うな。
「楽勝なのさ! そこまでの戦闘力ではないのさ。デバフで一気に行動不能に出来たのが大きいさ」
「……楽勝に勝ててしまった。油断はしてはいけないって思っていたんだけどな。ここまで楽勝だとは思わなかった。ボスってもう少し苦戦するのかなってイメージがあったからな」
「戦闘力に差があり過ぎたのさ。さて、宝箱の時間さ」
「ボスといえば宝箱だもんな。さて、確定でアイテムドロップって考えると、良いものが入っていてくれると良いんだけどな。……なんだこれ?」
「何が入っていたのさ?」
「これが何か解るか?」
「金属のインゴットなのは解るのさ。でも、銀色のインゴットなんて、ありふれているのさ」
「だよなあ。銀色の金属で思い当たるものは多くあるし……」
手に入れたのは銀色のインゴットだった。何の金属なのかが今一つ解らない。金属に知識のある種族なら良かったのかもしれないが、生憎、ここには貧乏神と小鬼とグレイウルフしか居ない。金属に関しての知識は、誰も持ち合わせては居なかった。
まあ、戦利品としては良いんじゃないのか? いずれ使えるようになるかもしれないんだし。……鍛冶施設を手に入れないといけないんだろうか。それともスキルでどうにかなるんだろうか。でも、まずはそんな事よりもだ。
「ダンジョンから脱出しないといけないよな? どうすれば良いんだ?」
「近くに転移が出来るものがある筈さ。……ああ、あれさ。あれの上に乗るのさ」
「……如何にもな魔法陣だな。じゃあ乗るけど、全員は乗らないぞ?」
「恐らくはマスターが乗ったら全員連れて行かれるのさ。そうじゃないと色々とおかしな事があるとは思うのさ」
そうか。それじゃあ俺だけ乗るか。乗って暫くすると、光が溢れ出てきた。そして、気が付いたら、階段の横にいた。
「階段の横に出てきたな。カードたちは……。全員いるな」
「やっぱりマスターだけで良かったのさ。これでこのダンジョンは安全だって事が解ったのさ」
「だな。この後は12階層でカードを粘る、でいいんだよな?」
「解体持ちが欲しいのさ。そうじゃないと、誰も解体なんて出来ないのさ」
「だよなあ。俺も肉が欲しいし。保存食には手を付けない方が良いだろうからな。それじゃあ、リンゴも回収しつつ、12階層で粘るか。カードを荒稼ぎしないといけないし。どんどんとカードを入手して、このダンジョンを周回するんだ」
欲しいものが手に入ったら? ダンジョンを周回するのが基本だ。まだ塩の問題は解決していないが、欲しいものは欲しい。どんどんと周回して、カードを確保しておく方が良いとは思う。オークと大猪のカードも欲しいしな。
そんな訳で、周回である。ダンジョンの周回なんて当たり前の事だからな。俺だってそのくらいの事は解る。常識も良い所だ。どんどんと周回して、戦力をかき集めないといけない。集めた戦力で、勢力を作っていくんだよ。




