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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season6 ― 氷の輪郭 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season6 ― 氷の輪郭 ―
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第12章 結びの光 ― 完成報告会議 ―

完成とは、終わりではない。

午後の陽射しがカーテン越しにやわらかく差し込む。


ブルームトラベル本社の会議室には、

資料とノートPCの並ぶ静かな緊張感が漂っていた。


青葉(あおば)澪(みお)は、会議卓の端に座りながら、

深く息を整えていた。


あの朝から、まだ数日。


けれど、心のどこかが確かに軽くなっていた。


ドアが開き、アークシステムズのメンバーが入ってくる。


如月(きさらぎ)柊(しゅう)、凪(なぎ)陽翔(はると)、そして環(たまき)。


柊(しゅう)の落ち着いた笑顔、

凪(なぎ)の明るい声、

環(たまき)の静かでまっすぐな眼差し。


「おはようございます。青葉(あおば)さん。」


柊(しゅう)が柔らかく会釈をする。


澪(みお)は小さくうなずき、


「おはようございます。……今日は、よろしくお願いします。」


その声は以前よりも少し丸みを帯びていた。


会議が始まる。


プロジェクターには完成したシステムの最終設計図。


凪(なぎ)が軽やかに説明を進めていく。


「今回のセキュリティ強化は、“防ぐ”だけでなく“支える”設計にしています。

 たとえば、操作ミスや不注意が起こったときでも、人を責めずに回復できるように。」


澪(みお)は、その言葉に小さく眉を動かした。


“人を責めずに”――


それは、かつての自分がいちばん遠ざけていた考えだった。


柊(しゅう)が続ける。


「システムは完成ではなく、ここから“育つ”ものです。

 人が使い、人が直していく。

 だからこそ、私たちは“人の温度”を残しました。」


会議室の空気が、静かに変わった。


言葉の奥にある誠実さが、澪(みお)の胸に、あたたかい光を落とす。


環(たまき)が、ゆっくりと資料を閉じ、まっすぐ澪(みお)を見つめて言った。


「このシステムが、青葉(あおば)さんやブルームトラベルのみなさんの力になりますように。」


澪(みお)は一瞬、息をのんだ。


何も飾らない言葉。


けれどその声の中には、澪(みお)が長いあいだ忘れていた“優しさの余韻”があった。


「……ありがとう。」


その言葉が、自分の口から自然にこぼれた。


凪(なぎ)が少し驚いたように、そしてうれしそうに笑う。


「僕たちも、青葉さんに教わったことがたくさんあります。

 “強さ”の本当の意味を。」


澪(みお)は思わず小さく笑ってしまう。


「そう……それなら、私も報われるわね。」


その瞬間、会議室の空気がやわらかく解けた。


完璧を求めて張り詰めていた空間が、“人の呼吸”を取り戻していく。


――会議が終わり、みんなが立ち上がる。


凪(なぎ)が資料をまとめ、環(たまき)が軽く会釈をした。


「青葉(あおば)さん、朝の光みたいでした。」


澪(みお)はその言葉に、少し目を伏せ、

静かに微笑んだ。


「ありがとう、環(たまき)さん。

 ……あなたたちの光に、少しだけ触れた気がするわ。」


窓の外には、柔らかな午後の光。


その光が、澪(みお)の頬を照らし、

ほんのりと温もりを残していた。

人の手で育っていくものこそ、

本当の意味で守られていく。

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