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しぃんと静まり返った古びた神社。暗く不気味な雰囲気を醸し出すこの場所に足を踏み入れたのは、勾陳と朱雀である。
「怪しい妖気が辺り一面に満ちてやがる・・・。」
「人気も無いし・・・何だか寂しい場所ね。」
きょろきょろと辺りを見廻しながら敷地内を進む俺達の目に映ったのは、少し小さめの社だった。長年手入れされていなかったのだろうか・・・社のあちこちが老朽化してボロボロな状態だ。屋根や手摺等には蜘蛛の巣が張られており、全体に埃も被っている。
「賀茂家の人達からの情報によると、この神社内で妖が出没しているらしいんだが・・・」
敵の妖が隠れ潜んでいないか確認しようと、俺は全神経を集中させていたのだが・・・
「何処からでも掛かって来なさいよ!受けて立つわよ!!」
隣に居た朱雀が突然上空に向かって大声で吼える。
「おい。そんなに大声で叫んだって、素直に現れる訳無いだろ・・・。」
俺が呆れ顔でそう呟くと、朱雀はキッと此方を睨み付けてくる。眼で「五月蠅い!」と威圧してくる。これ以上ツッコむと面倒な事になりそうなので何も言わずに進もうとしていたら―
ドォンッ!ズドドドドォォンッ!!
雷を纏った針が上空から俺達目掛けて襲い掛かって来た。焔と覇気で針を弾いた俺達の前に現れたのは猿の頭、虎の胴体、蛇の尾を持つ“鵺”という妖だった。
「・・・まさか朱雀のさっきの一言で本当に敵が現れるとはな。」
俺が驚いている横で、朱雀は「ふふん!」とドヤ顔を向けてくる。
鵺は俺達をじとりと睨み付けると、一声鋭い咆哮を放つ。そしてその直後、雷をその身に纏いながら俺に向かって飛び掛かって来た。
「ぐっ・・・うおおっっ・・・りゃあああ!!」
覇気を纏い防御する俺に、まるで隕石にぶち当たった様な強烈な衝撃が襲い掛かる。余りの威力に、足下の地面がボコッと大きく凹む。俺は己の体に込めた覇気を鵺に向けて勢い良く放出し、鵺を上空に思い切り殴り飛ばした。朱雀は己の手に焔の刃を出現させると傍にあった木を踏み台にして大きく飛び上がる。そして空中で体勢を崩している鵺を袈裟斬りに焼き斬った。くるりと回転し、更に追い打ちを掛けようと構えた朱雀だったが、鵺の尾の蛇に脇腹を噛まれふらりとよろめいてしまう。その一瞬の隙を突く様に、突然光の矢が俺達目掛けて振って来る。光の矢を受けてしまった朱雀は、苦痛に顔を歪ませながら落下していく。
「朱雀っ!?」
俺は急いで駆け寄って行き、真上から落ちて来る朱雀をキャッチした。
「大丈夫か?」
「だっ、大丈夫よ!こんなの大した傷じゃないし!!」
朱雀は頬を紅潮させ、直ぐにパッと地面に飛び降りた。会話をする2人に向かって雷の針と光の矢が同時に襲い掛かる。俺達は左右にそれぞれ飛び退いてそれを躱していく。俺と朱雀はそのまま駆け抜け鵺を挟む様に接近する。鵺は俺達を払い除けようと自身の体に雷を纏う。
「朱雀、行くぞ!!」
「ええ!!」
その掛け声を合図に、俺達は拳に覇気と焔を込める。そしてその拳をに勢い良くぶつけた。左右から俺達の強烈な拳を受けた鵺は、よろりとよろめいて地面に勢い良くばたりと倒れた。
「ふぅっ。取り敢えず此奴動けない様にしとくか。」
倒れた鵺を縛り上げようと俺が少し屈んだその時―
「何この煙!?」
突然鵺から白い煙が溢れ出し辺り一面を覆ってしまう。煙による影響か、上手く気配を感知出来ない。
「ちぃっ!」
俺は覇気を込めた拳をブンッと勢い良く振り煙を薙ぎ払った。再び開けた視界に鵺の姿は無かった。
「一体何処に行ったのかしら?」
きょろきょろと周辺を見廻し捜すが、鵺は既に神社を去ってしまった様だ。
「ちっ。逃げられちまったか・・・。」
確か如意宝珠の騒動の時も、煙に追跡を妨害されたって聞いたな・・・。鵺も天逆毎の手下って事か・・・。
「もう此処には居ないみたい。かなり大きなダメージを受けていたから暫くは大人しくすると思うけど・・・。これからどうする、勾陳?」
鵺が消えた場所に視線を落としふぅ、と溜め息を吐く朱雀。
「周辺を調べつつ、他の奴等と合流しよう。」
俺の提案に朱雀はこくりと頷く。
鵺から何か情報を聞き出せれば良かったんだが・・・。
そんな後悔が頭を過るが、今となってはどうしようもない。俺は目を閉じ一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。そうやってもやもやした気持ちを払ってから、朱雀と共に神社を後にしたのだった。




