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葛の葉奇譚  作者: 椿
第6章:妖怪屋敷
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3

 「おぉ、やっぱでけぇな。」

 僕達は屋敷の前に辿り着くと、改めて問題の屋敷を見上げてみる。聳え立つこの建物から怪しい妖気が溢れ出しているのがピリピリと感じられる。

 「皆、唐傘小僧を捜すのを手伝ってくれるかい?」

 僕が紙人形の式神達を呼び出してお願いすると、式神達は一斉に飛び立ち屋敷の中へと入って行った。

 「よし、行こう。」

 僕の言葉に皆は力強く頷く。皆の準備が出来ているのを確認すると、僕は扉をゆっくりと開き、皆を連れて中へと入って行った。

 「うわぁ・・・。何か暗くて、肌寒くて・・・凄く不気味な所だなぁ。」

 楓君はハクの腕をギュッと掴み、少し怯えた様子で辺りをきょろきょろと見廻す。

 「取り敢えず、奥に進んでみようか。」

 奥へと続く暗い廊下を、僕達は慎重に進んで行く。しぃんと静かな廊下に、ぎしぎしと僕達の足音が響き渡る。すると、式神の1人がある扉の前に居るのが目に入った。

 「此処に手掛かりが有るみたい。」

 僕の1言に、皆も気を引き締める。

 「よし。この部屋から順番に調べていこうぜ。」 

 壮吾はそう言うと、様子を窺いながら静かに部屋の扉を開けた。皆でそろりと部屋の中を覗いてみると、部屋の真ん中にある物がぽつんと置かれていた。

 「あれは・・・日本人形・・・ですよね?」

 部屋の真ん中からじっと此方を見据えるおかっぱ頭の日本人形が気になりつつも、僕達は部屋の中の調査を開始した。押し入れの中や床下収納等、隠れられそうな場所を中心に皆で捜してみるが、この部屋には唐傘小僧は居ない様だ。

 「このお人形、此処に置いたままじゃ誰かに蹴られちゃうかもしれないよね。」

 ハクが机の上に移そうと日本人形に手を伸ばす。その手が軽く触れたその瞬間、人形は突然目を大きくカッと見開いた。

 「ギャアアアアアアアアア!」

 余りに大きな叫び声に、僕達は思わず耳を塞いでしまう。 

 「ちょっ、この人形何でいきなり叫び出したんだ!?吃驚するじゃねーか!?」

 耳を塞いだまま問い掛ける壮吾の質問に対し、人形は答えようとする気配は無く雄叫びを挙げ続ける。人形の中で増幅する邪悪な妖気を祓う為に僕が印を結ぼうとすると、人形は叫ぶのをぴたりと止めた。

 「叫び声・・・止まったね。落ち着いたのかな?」

 一つ目小僧が僕の後ろから様子を窺う様にまじまじと人形を見つめる。

 「この人形怖いよ。早くこの部屋から出よう!」

 楓君の言葉に、僕達は人形からゆっくりと離れ、部屋を後にしようとする。すると、沈黙していた人形の髪の毛がブワァッと逆立ち、僕達に向かって勢い良く飛び掛かって来た。

 「皆伏せて!」

 僕は一言そう叫ぶと、青い焔を人形目掛けて思い切りぶつけた。青い焔は人形を巻き込んで爆発し、部屋の壁まで吹き飛ばした。

 「今の内に移動しよう。」

 急いで部屋を出た僕達は、次の部屋を調べようと廊下を進み始める。しかし、後方からダンダンという大きい音が聞こえ、全員が立ち止まる。

 「何の音でしょうか?」

 皆が振り返った視線の先には先程の人形が鋭い牙と眼光の物凄い形相をして此方に向かって走って来る姿があった。身の危険を感じた僕達は、人形から逃げようと必死に廊下を走った。

 「やばいよ!?あれ追い付かれたら絶対酷い目に遭うよ!?」

 涙目になって走りながら語る楓君の言葉に、一同こくりと頷く。怖い顔をしながら腕をしっかりと振って綺麗なフォームで走る人形の姿は、正直とても気味が悪い。人形は猛スピードで僕達を追い駆け、少しずつ距離を詰めてくる。

 「浄き光よ、闇を滅し給へ。急急如律令!」

 僕はくるりと後方に向きを変えながら、印を結び破魔の術を発動する。破魔の光が人形を覆い、邪悪な妖気を祓っていく。破魔の術を受けた人形はその場で静止し、ぱたりと倒れてしまう。

 「ぴぃ!妖気が消えた。晴支、この人形もう襲って来ないよね?」

 恐る恐る見つめながら問い掛ける家鳴に、僕は「うん、大丈夫。」と声を掛けた。

 「妖気を祓ったから、もう人形は動かないと思う。」

 しぃんと沈黙し微動だにしない人形をちらりと一瞥するが、皆この不気味な人形に近付こうとせず、ある程度距離を取る。

 「この気味悪い人形にはもう関わりたくないし・・・早く次の部屋を調べようぜ。」

 壮吾の提案に一同は賛成の意を示す。

 ・・・次の部屋にはこんな訳の分からない怪異が居ません様に。

 切実にそう祈りながら、僕達は次の部屋の扉を開けた。



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