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病院を出た後、僕達は家鳴達を連れて葛の葉庵に戻って来た。
「晴支、壮吾。おかえ・・・」
店に入ると、六合が此方に振り返り出迎えようとしてくれた。しかし、大量の家鳴を見て、驚きで固まってしまう。すると家鳴達がそんな六合に向かって、ぴょんと飛びついたり、周りを取り囲んだりする。六合は目を大きく見開き、口をパクパクさせながらあたふたと動揺する。
「ぷ・・・くく・・・六合・・・お前は本当に期待を裏切らないな・・・。」
信楽先生は、家鳴にびっくりした六合の姿がツボに入ったらしく、くすくすと笑っている。暫くは笑いが治まらないかもしれない・・・。
「お帰り。おや、信楽も来ていたのか。・・・随分楽しそうだな。」
貴人がひょこっと現れ、笑い続ける信楽先生を冷めた目で見つめる。
「ワァ、六合が家鳴まみれになってますヨ!アハハ!!」
白虎も現れ、家鳴に群がられている六合の姿をからかう。玄関でわいわい賑わっていると、他のメンバー達も集まって来た。
「この家鳴達、一体どうしたんだい?」
家鳴達を見つめながら尋ねる太裳。皆に、旧校舎での出来事を話そうと口を開きかけた瞬間―
「たぁぬきぃのお~じさぁん!!」
「うぐぉ!?」
ハクが物凄い勢いで強烈なタックルを信楽先生にお見舞いする。ハクのタックルを食らった信楽先生は、変な声を上げながら、何とか踏ん張る。
「晴支、壮吾、お帰り!なぁ、一緒に遊ぼう!!たぬきのおじさんも!!な!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、かまってアピールをするハク。そんな彼を、信楽先生はひょいっと抱えると自分の肩に乗せる。
「中々元気な歓迎だな、ハク。」
そう呟くと、信楽先生はハクを肩車したまま勢い良くぐるぐる回り始める。信楽先生は、此処に来るといつもハクの遊び相手をしてくれるのだ。だからハクも先生にとても懐いている。
「キャハハハ!」
回転肩車がとても楽しいらしく、ハクは嬉しそうにキャッキャッと笑う。そんなハクの様子を見て羨ましく思ったのか、家鳴達は回転している信楽先生に飛びついていく。彼らは「ぴゃっぴゃっ」と楽しそうに笑いながら、先生にしがみ付いている。
ひとしきり騒いで楽しんだ後、僕達は葛の葉庵の皆に家鳴達のことや旧校舎の事件について詳しく説明した。
「なるほど。うちで良ければ、此処に居てくれて構わないと思うが・・・皆はどうだ?」
貴人が皆に問い掛けると、皆異論は無いと力強く頷いてくれた。晴れて葛の葉庵の一員になることが決まった家鳴達は、嬉しそうに「ぴぃ!」と叫びながらぴょんぴょん飛び跳ねる。
「これからよろしくね。」
僕が手を差し出すと、家鳴り達は僕の周りに集まって元気よく握手をしてくれた。彼らの居場所を用意できて、本当に良かった。
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「家鳴、すまないが冷蔵庫から卵を取って来てくれないか?」
朝御飯の準備をしている六合が、家鳴達にお願いをする。家鳴達はピッと敬礼をすると、冷蔵庫からサッと卵を持って来る。
「有難う。」
「ぴぃ♪」
六合がお礼を言って頭を優しく撫でると、家鳴達は嬉しそうに目を細める。
家鳴達が来てから数日が経ったが、彼らは葛の葉庵での暮らしに直ぐに馴染み、元気に動き回っている。葛の葉庵の仕事や、家事もよく手伝ってくれるので、皆とても感謝している。時々、白虎やハクと一緒に悪戯をして六合に叱られることもあるが、毎日楽しそうに生活している。此処を気に入ってもらえて、僕も嬉しい。
「晴支、お早う!一緒に下に行こうよ!!」
「ぴぃ!お早う!今日も良い天気だよ、晴支!!」
ハクと家鳴達がパッと寄り添ってきて挨拶をしてくれる。
「お早う、ハク、家鳴。今日も宜しくね。」
僕が微笑みかけると、ハクや家鳴達もにこっと笑い返してくれた。
「さぁ、皆の所に行こうか。」
僕は彼らを手招きすると、皆の居る食堂に一緒に降りて行った。