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晴支達が激しい闘いを繰り広げていた頃、私は狒々達の目を掻い潜って隠れ家の中に潜入していた。囮役として市街地を歩いていた最中に狒々達の隠れ家についての連絡を受けた私は、被害者の女性達を救い出す為に急いでやって来たのだ。
しっかし、だだっ広い廃墟だねぇ。狒々達もそこかしこで見張っているから、鬱陶しいことこの上ないよ、全く。
ふぅっ、と1つ溜め息を吐き、付近をうろついている狒々達の様子を確認してみる。真っ直ぐ続いている廊下を挟んで扉が並んでいる。じっと観察する中で、ある扉の前に見張りが集中していることに気が付き、目を留める。
もしかしたら、被害者の女性達があそこに居るかもしれない。ちょいとあの部屋を調べてみようかねぇ。
私は床に手を当てると、冷気を地面に伝える。そして地面を伝う冷気は狒々達を飲み込み凍て付かせる。
扉の前まで素早く近付き、開けようとしたその時、右後方の通路から現れた狒々に見つかり、襲い掛かられる。追い払おうと構えた私の目の前で、突然狒々の体が発火する。
「太陰、大丈夫?」
声のする方に振り向くと、私の下へ駆け寄ってくる朱雀の姿があった。
「有難う、朱雀。助かったよ。」
「えっ、いやっ、別にお礼言われる程大したことはしてないしっ。」
私が助けてもらった礼を言うと、朱雀は照れた様に頬を赤らめ、ぷいっとそっぽを向いてしまう。朱雀なりの喜びの表現を可愛らしく感じ、思わずクスッと微笑んでしまう。
「ちょっ、何笑ってんのよ!?此処を調べるんでしょ!行くわよ!!」
照れ隠しなのか、誤魔化す様に扉の取っ手を掴み、勢い良く開ける。中には被害者と思われる女性達が座っていた。突然やって来た私達のことを「何者だろう?」と怯える様に見つめてくる。
「あっ、太陰さんと朱雀さん!お2人も来てくれたんですねぇ!」
天后が両手をブンブン振って喜ぶ。紫苑ちゃんも私達を見て会釈をしてくれる。紫苑ちゃんが妖に襲われたと聞いて心配していたけれど、元気そうで良かった。安心したよ。私達は天后達の傍に行き、彼女達に今までの状況を説明してもらった。
「そうかい。晴支は部屋を出て、この廃墟の中を調べに行ったんだね。」
「騰蛇と勾陳は多分晴支の所に行ってると思うけど・・・。大声で怒鳴り合いながら勢い良く走って行くのを、私此処に来る途中で見かけたわ。」
あの2人は何時でも何処でも喧嘩ばっかりだねぇ・・・。本当に飽きないんだから・・・全くもう・・・。
「まぁ、貴人達も合流していると思うし・・・向こうは彼らに任せようかねぇ。私達は被害者の女性達を此処から避難させてあげよう。紫苑ちゃんも、私達が居るから、もう大丈夫だよ。」
私は紫苑ちゃんを安心させる為にぽんぽんと頭を撫でる。きっと怖い思いをしただろう・・・。可哀想に・・・。
「はいっ、有難う御座います。」
紫苑ちゃんは明るい声でそう答え、にっこりと微笑む。
「さぁ、急いで此処から出るよ。皆、付いておいで。」
私達は被害者の女性達を誘導し、廃墟の外へと向かって歩き出す。紫苑ちゃんはやはり晴支のことが心配なのか、歩き出す前に一度後ろを振り返る。
狒々達に見つからない様、慎重かつ迅速に動かなければ・・・。
私達は周囲を警戒しつつ出来る限り速く移動出来る様に避難のサポートをしていく。見張りの狒々達の攻撃があるのではないかと警戒していたが、狒々達は殆ど見当たらない。
さっきの大きな音に奴らの注意が向いたのかね。晴支達が暴れてくれている御蔭で、安全に避難誘導が出来そうだ。
私は今のチャンスを逃すまいと、皆を引き連れ暗い廃屋の中を進んで行った。




