第3話 ホットドッグを食べる度に
〇 格式のあるホテルのロビー
華子と陽星は並んで座り、人を待っている。
やがて仕立ての良いスーツの男(大倉芳人)が現れ、華子は陽星を連れて歩み寄る。
華子「(大倉に深々と頭を下げ)このたびは本当にありがとうございます」
大倉、頭を下げたままの華子の右顎へ左手をやり、そのまま左耳へと指を滑らせて髪の中で蠢かす。
。。。
~フラッシュバック~
裸の華子に同じ事を仕掛ける陽星
。。。
華子を弄る大倉とされるがままの華子を、陽星は傍らで睨んでいる。
大倉「君の願いを私が受け入れない事はないだろう? 君が私にそうである様に」
華子「……はい」
大倉、髪の中から左手を抜き華子の左肩をポン!と叩く。
大倉「で、何時だ?」
華子「成田から深夜1時半に」
大倉「(陽星に目を向け)この子とは、ここで別れるのだな。誰かに私の家まで送らせよう」
華子「それでは業務に支障が出ます」
大倉「キミが愛した男はそんな段取りすらできないほど無能なのか?」
華子「……いえ」
大倉「(ペットを愛玩する様に、手を肩からうなじへと遊ばせ)そうだよな。私もそんなつまらない気を回す部下を持った覚えは無い」
華子「申し訳ございません」
大倉「では、キミのペットを紹介してもらおうか」
うなじをいじっている指から引き離れた華子は陽星を前に押し出す。
華子「陽星、ご挨拶を!」
陽星「佐久間陽星と申します。宜しくお願いいたします」
大倉「君は中三だっけ?」
陽星「はい」
大倉「私には君と同い年の結愛という娘がいるんだが……君、保健所の手続きは済んだのかね?」
陽星「はい?!!」
華子「(二人の間に割って入って)転入や転校届けは私が済ませました」
大倉「承子には報告したか?」
華子「勿論、奥様にはご報告申し上げました」
大倉「キミの子では無いと伝えてはいるな?」
華子「奥様から、この子の境遇には深い理解を賜りました」
大倉「承子は私以上に男の子を欲しがっていたから、よく面倒は見るだろう」
その言葉に陽星が口を挟む。
陽星「ひとつ聞いても宜しいでしょうか?」
大倉「構わんが」
陽星「息子さんを持とうとは思わなかったんですか?」
大倉「娘の下に?」
陽星「はい」
大倉「私の知り合いには『自分の優秀な遺伝子を形にするのが社会貢献』と考える輩も少なくは無いが……」
陽星「はい……」
大倉「形にするのは一人で充分と言うのが私の考えだ」
陽星「それは……形にならなければいいと言う事ですか?」
大倉「(陽星の問いには答えず、腕のロジェ・デュブイで時間を確かめ)昼飯にはいい時間だ(と財布から一万円札を抜き取り陽星に手渡す)」
陽星「『適当に済ませて待って置け』と言う事ですか?」
大倉「私のパワーランチに君は不要だ」
踵を返し、華子を伴ってエレベーターへ向かう大倉。
その背中を睨み、陽星は手の中の一万札を握り締める。
〇 『券売機から押し戻されるクシャクシャの一万円札の“コマ”』へカットインする『ベッドの上に押し倒された華子の上を行き来する大倉の背中』のコマ
〇 『ペラペラの肉を噛み締める陽星の苦渋の顔』と『肌を這う大倉の舌』と『虚ろな目で唇が開いてしまった華子の顔』
〇 ホテルのフロント周辺
大倉がクロークへ向かっている隙をついて陽星を多目的トイレへ引き込む華子。
トイレの中で抱き合うと陽星の眉間に皺がよる。
華子「におい、分かるでしょ?」
。。。
~フラッシュバック~
男娼だった頃の陽星。女ドモとの秘め事の数々
。。。
華子「アイツ、シャワーを浴びさせてくれなかったから」
パンツスーツのジッパーを下ろした華子は陽星の手を取り、その中へ導く。
“事後の露出”が指に纏わり付き、陽星の全身が震える。
華子「アイツ! 私が『必ず処理する』のを読んでいるの!」
陽星「……殺す!!」
華子「ええ! この場で私を殺して!! バックの中にナイフがある。心配しないで」
陽星「華子さんじゃなくアイツを殺す!!」
華子「(頭を振って)私の事を許してくれるのなら、アイツに生きながらの地獄を見せて!」
陽星、涙を零しながら歯を食いしばる。
華子「(しゃくり上げながら)ブチ込まれるのなら食いちぎりたかった!!」
陽星、グズグズになった鼻をフン! と鳴らし
陽星「必ず復讐するから! NYでホットドッグを齧って待っててくれ!」
その言葉に華子は陽星の唇にしゃぶりつき
二人はお互いを貪る様にキスを交わした。




