温かい仲間の輪 新たに加わる頼もしき戦士
「やあ、鷹見くん」
「鹿野さん!?」
鹿野さんから連絡があって待ち合わせた公園には本人だけでなく、奥さんと小学生くらいの娘さん、そしてあの日助けた子供と同じくらいの息子さんがいた。
「どうしたんですか、家族お揃いで……」
「この前の話なんだけどな……やっぱり、受けようと思うんだ」
「えっ!?」
俺とリヴは同時に声を上げ驚く。
以前断ったのは家族のためだったはずだが、その家族が今ここにいる。
どういう状況なのだろうか。
「それでなんだけどな……家族にも、君たちのことを教えてあげて欲しいんだ」
鹿野さんのお願い。
彼はいつだって、俺達に誠実であろうとしてくれた。
なら俺達にできることは、同じく誠実であることだ。
蓮とリヴは光を呼び、王女としてのドレス姿と戦うための騎士の姿になる。
鹿野さんの家族から、歓声が沸いた。
「うわぁ……」
「本当に、こんなことあるんだねぇ……」
「スッゲー! かっこいいー!」
三人とも、目が輝いている。
彼女たちは異端を畏怖するのではなく、憧れを抱くかの様な様子だ。
「パパもこの人たちの仲間になるんでしょう?」
娘さんの問いかけに、鹿野さんは頷く。
「……そういうわけだから、俺も仲間に加えてくれるかな?」
「……本当に良いんですか?」
リヴが遠慮がちに聞いた。
契約すれば、鹿野さんから家族と共に過ごす時間を奪うことになる。
でも鹿野さんは、臆さなかった。
「……ああ。俺は君たちと共に戦うよ」
「この人、引退してからはつまらなそうにしててね、心配だったんだよ。もう一度戦える場所があるなら、与えてあげて欲しい。この人は戦っているところが一番素敵だから」
奥さんが鹿野さんの背中を押してくれたんだ。
リヴは俺の顔を見た後、指輪を取り出し、鹿野さんの右手の小指にそっとはめた。
光が、鹿野さんを包む。現れたのは、剣と胸当て。
そして彼は騎士となった。
「パパカッコいい!」
「あんた、似合ってるじゃない」
家族からの声に、鹿野さんは照れている。
「じゃあ、これからよろしく頼むよ」
「……はいっ!」
鹿野さんが差し出した手を、俺たちはしっかりと握った。
強力な仲間が増えたことを、頼もしく思う。
「ねえ、リヴさん。異世界のこと、詳しく教えて?」
「鷹見さん、今日は晩御飯を一緒に食べましょう。ぜひお二人の話を聞かせてください」
娘さんと奥さんの提案に、俺も返事をする。
「それなら、みなさんうちに来ませんか。うちにはリヴの他にも王女がいるんです。紹介させてください」
「他にも王女様がいるの?」
娘さんの目が輝いている。
やっぱり女の子は、お姫様に憧れるものなんだろう。
「それじゃあ、お邪魔させてもらおうか」
こうして今夜は鹿野家のみなさんを、俺の家に案内することになった。
「お邪魔しまーす」
「よく来たですね。ゆっくりして行くです」
鹿野家の四人をフィアが出迎える。
「可愛いー。この人も王女なの?」
「フィアはエクレールの王女ですぅ。良きにはからえです」
娘さんが喜んでいる。
「こんばんはー」
居間ではアイリスと近藤が出迎える。
事情を話して近藤も先に呼んでおいたのだ。
「妻の栞です。こっちは息子の陽貴」
「凛です」
奥さんに続いて、娘さんが自己紹介をした。
「本当に可愛い子ばかりだねぇ。あなたも王女様なの?」
「私はただの高校生です」
苦笑しながら近藤が返事をする。
「いらっしゃいませー。ゆっくりしていってくださーい」
外面モード全開でアイリスが媚びる。
いつか本性を知ったら鹿野さんが驚くに違いない。
「お料理用意しますので、居間でくつろいでいてくださーい」
「アイリス、鹿野さんの計らいでお寿司をご馳走になることになったんだ」
「そうなんですか? 鹿野さん、ありがとうございまーす」
「じゃあ副菜はこちらで用意しますね」
リヴはアイリスと共に台所に向かった。
「あたしもやるよ」
「わたしにもお手伝いさせて」
近藤と鹿野さんの奥さんも向かうが、流石に定員オーバーだ。
「大丈夫です。お客様なのですからゆっくりしてください」
「悪いねぇ。みんな若いのにお料理できるなんて、すごいわぁ」
しばらくして寿司が届いた。
いつも食事をする台所のテーブルでは広さが足りないので、居間のテーブルにさらに他のテーブルを足して、リヴとアイリスが作ってくれたサラダとお吸い物が共に並んだ。
「いただきまーす」
いつも以上に賑やかな食卓。こんなに大人数で食事なんていつ以来だろう。
「美味しい。二人とも料理上手ね~」
「簡単な有り合わせで……恥ずかしいです」
「玉子焼きうめーですぅ」
奥さんが褒めるとリヴは照れくさそうにする。
そしてフィアは相変わらずだ。
鹿野さんは陽貴君にお稲荷さんを勧めてる。
いいお父さんだな。
「ところで、鷹見くんのご両親はどうしたんだい?」
鹿野さんも寿司を頬張りながら、ふと問いかけてきた。
「……今は、海外にいるんです」
「そうか、それは寂しいなあ」
胸の奥にちくりと刺さる言葉。
……寂しくないと言ったら、嘘になる。でも。
「こいつらがいて、賑やかで寂しいと思う暇無いですよ」
リヴが、フィアが、アイリスが、そして近藤も、みんなが満足そうな顔で俺を見た。
「ところで、お兄ちゃんは、誰が一番好きなの?」
「ん?」
凛ちゃんが質問してくる。
これは……友達としてってことだよな。
「みんな大事だよ。一番は選べないなあ」
「そうじゃなくて、女の子として一番好きなのは誰ですか?」
………。
俺は思わず固まった。
「鷹見くん、ごめんねー。この子マセてるから。気にしないで」
鹿野さんがとりなしてくれて、ホッとする。
心臓がドキッとした。
好きな子だなんて……恐れ多い。
だってみんな……王女様なんだから。
「……あたしは蓮さんの事、大好きですよ~?」
「はあっ?」
アイリス? いきなり何言い出すんだ!?
「騎士として、とっても信用してます~」
そう言って、ぺろっと舌を出した。
くそっ、こいつ、俺のことをからかって楽しんでやがる……。
「ぼ、僕も……蓮さんの事、好きですよ! とっても頼りになります!」
リヴが続いて、慌てるように口を挟む。
「……あたしも、鷹見くんのこと好きだよ。これからも一緒に頑張ろうね」
近藤がさらに続いた。
「フィアは……それなりですぅ。これからも騎士としての働きに期待するですぅ」
みんなが微笑みながら、俺を見ている。
今まで一緒に過ごしてきた時間。
それは確かに俺達の間に絆を育んできたんだ。
なら、俺もちゃんと応えないといけない。
「……ありがとうよ」
……でもやっぱり照れくさい。俺はすぐに目線を逸らした。
「……みんな良い関係だな。羨ましいよ」
鹿野さんが微笑ましそうに俺たちを見た。
「これからは、鹿野さんも仲間ですよ」
「俺みたいなおじさんでも大丈夫かい?」
「関係ありませんよ。これからよろしくお願いします」
そう言って、みんなが鹿野さんに頭を下げた。
「ここまで期待されてるんだから、頑張りなさいよ!」
奥さんが鹿野さんに発破をかける。
「精一杯頑張るよ」
「パパがんばれー」
こうして、俺たちに新しい仲間が加わった。
鹿野さん。日本ランク一位にまで上り詰めた元プロボクサーの騎士。
俺達にとって大幅な戦力アップなのは間違いない。
俺も、足を引っ張らないように頑張らないと!




