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彼女の心はサイコパス? 慈愛の王女の心の奥

「あなたはマンションのバルコニーで、外で男が人を殺すところを目撃してしまいました。それに気がついた男はこちらを向いて指さして動かしている。男は何をしているのでしょう?」


「えー、見られたから誰にも言うなよっていうジェスチャーじゃない?」


「見られたから次はお前を殺してやるって言ってるのかも知れないですぅ」


「おっかないですね。僕もそんな感じだと思います」


 三人とも答えは似たような傾向だ。


「で、これは何がわかるですか?」


「これはだな、サイコパス診断と言って、答えた人が犯罪者に近い思考を持っているかどうかを確認するためのもんだ」


「犯罪者?」


 リヴが穏やかではない、という顔をした。


「お前らが答えたように次はお前だ、とか誰にも言うなよ、というのは普通の考えなんだ。サイコパスは、こっちを向いて指が動いているのを見て、こっちのマンションの階数を数えている、と答えるんだ」


「つまり、どう言うこと?」


 アイリスはまだ何を言っているのかがわかっていない。


「サイコパスは目撃者を殺すために、すぐ必要な行動が取れるってことさ」


 そこまで言って三人は、ようやく意図を理解したようだ。


「こ、こえーですぅ!」


「ゾッとしました。それは想像できなかったですね」


「犯罪者の心理か……あたしには理解できないわね」


 三人とも怖がっているが、話としてはそれなりに楽しめたようだ。


「他には無いですか?」


 フィアのリクエストに応えて俺は質問を続けることにした。


「じゃあ、続けるぞ。あなたは恨んでいる人物の家に入り、そいつを殺すことに成功した。そしてその家にいたそいつの子供も一緒に殺してしまった。何故だ?」


「子供に殺すところを見られたからじゃない?」


 アイリスの答えは、まさに一般的な考えだ。


「そいつは子供も同罪だと考えたのです。だから殺したのですぅ」


 こいつ、わざとサイコパスぶって答えてないか?

 だがフィアの答えも正解では無い。


「あの世で子供も一緒にしてあげようとしたんじゃないですか?」


 リヴの答えは、ある意味慈愛に満ちているようにも聞こえる。

 しかし──


「……正解だ」


「えっ?」


「リヴの答えが、サイコパスの考えなんだ」


「ええっ!?」


 リヴは驚いている。当てにいくつもりなど無かったのだろう。


「あんた、怖いわ。あの世で一緒にしてあげようって、普通じゃないわよ」


「ぼ、僕はそんなつもりじゃ……」


「漫画でそんな悪役がいたのです。リヴはおっかねー女ですぅ」


「ううっ……」


 リヴは本気で落ち込んでいる。

 自分は犯罪者と同じ思考なのかと、自己嫌悪に陥っているようだ。


「リヴ、これはあくまでテストだから。俺は、リヴらしいと思ったぞ」


「………」


 あらら、フォローも効かないくらい沈んじゃったよ。

 本気で思い詰める必要なんてないのに、リヴも真面目すぎるところがあるからなぁ。


───


 晩御飯を終えてもリヴの顔は晴れなかった。

 部屋に篭った彼女に会いに、俺はドアをノックして中に入る。


「まだ気にしてんのか?」


「……いえ」


 とても気にしてないって顔じゃないな。

 ただの雑談のつもりだったのに、こんなにリヴのことを傷つけることになっちまうなんて。


「……もう一つ心理テストを用意したんだ。答えてみてくれ」


「……すみませんが、今そんな気分じゃ」


 リヴの返事も構わず、俺はテストを伝える。


「あなたはみんなでピクニックに行きます。お昼に食べるため、おにぎりを作ることにしました。具はどうしますか? 1、昆布。2、おかか。3、ツナマヨ。4、梅干し」


「……昆布ですかね」


 乗り気じゃないと言いながらも、ちゃんとリヴは答えてくれる。


「昆布を選んだあなたは、純真で心優しい人です。その心をこれからも大切にしてください」


 俺がそう伝えると、沈んだ顔をしていたリヴが、クスッと笑った。


「蓮さん、僕が昆布って答えるってわかってましたよね」


「どうしてそう思うんだ?」


「だって、昆布は蓮さんの好物じゃないですか」


 そうだ。その中で俺が一番好きなのは昆布だ。だけど。


「別に自分の好きな物を選んでも良かったんだぜ。お前は梅干しの方が好きじゃないか」


 リヴはそうすることもできた。

 それでも、俺の好物を選んでくれた。


「お前が優しい奴だって、みんなわかってるよ」


「……ありがとうございます。すみません、気を使わせてしまって」


 まさか心理テストでここまで拗れるなんてな。

 でも良かった。ようやくリヴがいつもの顔になって。


「……僕も、蓮さんに答えて欲しいテストがあるんです。良いですか?」


「ああ、良いよ」


「……蓮さんにとって、僕を連想する色は次のうちどれですか? 1、赤。2、青。3、白。4、ピンク。5、紫」


「その中なら、やっぱり青だろ」


 なんてったって、リヴのドレスの色だからな。


「で、青は一体どう言う意味なんだ?」


「……僕の事を、大切なパートナーだと思ってくれてることが、わかりました」


「そうか」


 リヴは嬉しそうだ。

 そんなテストで聞かなくても、当たり前のことなのにな。




 蓮が出て行った後、リヴは部屋で一人、先ほどの心理テストに思いを馳せる。


(……ごめんなさい蓮さん。僕も、あなたが青を選んでくれるって、わかってました)


 さっきのは、異性をどのように連想するかを分けるテスト。

 その中で、青が意味するものは──


 恋人にしたい、または結婚したい人。

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