↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/144

学校一の美少女と二人きりの夜

「女子の部屋に行こうぜ」


 晩飯が終わりくつろいでいたところ、同室の男子が提案した。

 皆がそれに同調し、部屋を抜け出した。


 目指すは南條のいる部屋、らしい。

 今日の自由行動に加えて、さらに彼女とお近づきになろうと野郎どもは下心を抱えて出掛けて行く。


「鷹見も行こうぜ」


「俺はいいや。部屋で休んでる」


 布団の上で横になりながら、今日一日に思いをふける。


 目を閉じれば、まぶたに浮かぶのは京都の街の素晴らしさ──ではない。

 今日起こった王女との戦闘のこと。


 また勝てた。

 みんなで力を合わせたおかげだ。


 もし負けていたら……。

 あの危ない場面、どうすれば防ぐことができた?


 考えなければならない。

 最悪を回避するために。


 次も勝てる保証など、どこにも無いのだから。


「寝てるの?」


 声に対して目を開けると、隣で南條が横になってこちらを見つめている。


「うわあっ!?」


 驚いて、俺は彼女から離れるように飛び起きた。


「あはは、驚き過ぎ〜」


「南條、何で? みんながそっちに向かったはずだけど……」


「あー、抜けてきちゃった。何で鷹見は来なかったの?」


 南條は上下共グレーのスウェット姿だ。

 メイクは落ち、飾り気は無い。


 なのに、妙な色気を感じる。


(こいつ、すっぴんでも可愛すぎんだろ……)


 内心そんなことを考えていることを悟られないよう、平静を装って答える。


「深い理由はないよ。何となくさ」


「えー、ノリ悪いぞ」


 イタズラっぽく俺の脇腹を指で突き、くすぐったさに俺は腰をよじる。


「京都、楽しかったね。でも広すぎ。まだ見たいものあったのに回り切れないよ」


「そうだな。俺は、嵐山にも行ってみたかった」


 しばらく二人で、京都について語り合った。


 他にも見て回りたかった場所。

 食べたかった物。

 お土産に何を買ったかなど。


 南條とこんなに距離が近いのは、初めてだ。


 話していて、楽しい。

 正直俺とは人種が違うというか、合わないと思っていたけど、それはただの偏見だったのかもしれない。


(……でも何で、わざわざ俺のところに来たんだ?)


──南條って、鷹見のこと好きらしいよ。


(……いやいや、そんな訳ないってあいつらに笑われたじゃないか)


 下心を出すな。


──ちょっと仲良くしただけで何勘違いしてんの? キモっ。


 そんな風に思わせてしまうかもしれないだろ。


「ねえ鷹見」


「えっ?」


「ありがとうね」


 ……何が?

 別に礼を言われるようなことはしていないが。


「春に弟たちのこと、助けてくれたでしょ」


「ああ、あれか……」


 もう随分前の話だ。

 お礼ならその時に言ってくれたじゃないか。


「それでも、改めてお礼を言いたかったの」


「弟君たち、元気か?」


「元気元気。元気すぎて大変だよ」


 兄弟のことを話す南條は、とても良い顔をしている。

 きっと、お互いのことが大好きなんだ。


「……ふと思うことがあるの。あの時鷹見が助けてくれなかったら、この二人はここにいなかったかもしれないんだって」


「……そうか」


「だから、鷹見は私の恩人。大切な人だよ」


 そんな風に言われるなんて思ってなくて、何だかこそばゆい。


「……さっき、あんたのことが好きな子を知ってるって、言ったよね」


「……ああ、言ってたな」


「教えてあげようか……?」


 その言葉に、俺の胸はぎゅっと締め付けられる。


 俺のことを好きな子がいる。

 きっとからかわれている訳じゃなく、本当なんだ。


 その子にもし告白されたら、俺は返事をしなくてはならない。


 なら、俺は……。


「……いや、いいかな」


「えっ? 何で!?」


 南條は驚いている。

 予想していなかったという顔だ。


「……俺、付き合うとかよくわかんないし、もし告白されてもどうすればいいかわからないや。そんなの、その子に失礼だろ」


「……そんなの、とりあえず付き合ってみてから考えれば良くない?」


 南條の顔は不服そうだ。


「とりあえず付き合うっていうのが、失礼だと思う。そんな気持ちでその子に会いたくないんだ」


 彼女は何かを考え込んでいる。

 というより、頭を抱え込んでいるような。


「……はー、真面目すぎ。そんなに深く考えなくて良いのに」


「ごめんな」


 もしかしたら南條は、その子に仲立ちを頼まれていたのかもしれない。

 だとしたら悪いことをしてしまったと思う。


「わかったよ……でもその子、きっと諦めないと思うよ」


「そうか……」


 そんなに俺のことを好きでいてくれるのか。


 どんな子なんだろう。

 俺なんかのどこが、そんなに良いんだろう。


 ……でも、今付き合うとか考えられないのは本心だ。


 今日みたいに、あいつらに何かがあれば俺は駆けつけなくてはならない。


 もしかしたら、付き合ってもその子には我慢をさせてしまうかも知れない。

 そんなのは……やっぱりその子に悪いから。


「……明日は一緒に回れないね。でも、タイミングがあったらまた写真撮ろーよ」


「そうだな」


 USJはあらかじめどのアトラクションを回るかチケットで決まっている。

 今日みたいに急に一緒に回ると決めることはできない。


「ていうか、今写真撮ろっか。顔こっちに寄せて」


「こ、これくらいで良いか?」


 俺たちは、この旅行中初めて二人きりで写真を撮った。

 今日撮った中で一番、俺の顔が緊張しているのがわかる。


「あはは、笑うの下手すぎ」


「うるせー」


 二人で笑い合っていると、出かけていたルームメイトが部屋に戻ってきた。


「あー、鷹見、何お前抜け駆けしてんだ!」


「ずるいぞ!」


 俺は複数人から同時に枕をぶつけられた。


「ちょっ、やめろよお前ら!」


「もっと枕持ってこい! 戦争だ!」


「あはは!」


 南條が笑う。


 そこで行われた枕投げは、教師に「うるさい!」と怒られるまで、しばらく続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。