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美少女王女は俺の彼女? 同級生からの追及

 女の喜ぶ場所なんてわからない。

 俺は楽しい場所イコール遊ぶ場所、という短絡的な考えで、アイリスをゲームセンターに連れてきた。


「うるさいわねここ」


 いくつものコンピューターが電子音を鳴り響かせる屋内。

 慣れていなければそう感じるのも無理は無い。


「場所を変えるか?」


「いいわよ。ここが楽しいと思って連れてきたんでしょ? 案内しなさい」


「案内と言われてもな……あれとかどうだ?」


 俺は女が好きそうな、可愛いぬいぐるみの取れるクレーンゲームを指差した。

 猫を二頭身にしたようなキャラで、三十センチくらいはある。


「これが買えるの?」


「買うんじゃない。お金を入れて、このクレーンで取るんだ」


 俺は百円を投入してクレーンを動かした。

 爪先はぬいぐるみを僅かに動かしたが、それだけで終わってしまった。


「下手くそねー」


「こういうのは一回で取れるようになってないんだよ……多分」


 再度挑戦するが、一回目と大差無い結果に終わってしまう。

 俺もこういうのに慣れているわけじゃない……どうする、諦めるか。


 そんなふうに悩んでいると、見かねた店員が声をかけてきた。


「お客様、これは横から押すと転がりやすいんですよ」


「あ、そうなんですか。ありがとうございます」


 店員に話しかけられた手前、ここで止めるのも憚られる。

 俺はもう一度百円を入れ、今のアドバイスに従ってクレーンを操作する。

 するとアームがぬいぐるみの下へ滑り込み、体は転がり始めた。


「おっ」


 だが惜しいところで、その動きは止まってしまう。


「蓮、もう一回よ!」


「よーし」


 言われるままもう一度お金を入れ、動かす。

 それが最後の一押しとなり、ぬいぐるみは取り出し口へと落ちてきた。


「やった……!」


「取れたわね!」


 思わず二人同時に顔を見合わせ、笑い合う。


「ほら、お前にやるよ」


「ありがと」


 渡そうとしたところで、このままだとアイリスの荷物になってしまうことに気がついた。

 俺は近くに用意された袋に入れ、そのまま自分で持つことにした。


───


「これは何?」


 アイリスが太鼓型のゲームに興味を持った。


「これは音ゲーって言うやつで、音に合わせてここを叩くんだ」


 二人分のお金を入れて、曲の選択画面まで進める。


「知ってる曲あるか?」


 アイリスは結構音楽を聴いている。

 選ばせると、最近人気のある曲を選んだ。


「難易度は……普通でいいか? 簡単でもいいぞ」


「笑わせないで。難しいにしなさい」


 初心者には無茶だと思うが……。

 俺は最初は慣らすことを勧めたが、アイリスは受け入れなかった。


 曲が流れ始め、画面ではアニメーションと共に譜面が流れてくる。

 難しいを選んだだけあって、かなりのスピードだ。


 俺は手と頭の動きが一致せず、何度もミスを繰り返す。

 だがアイリスは、初めてのはずなのに見事その速さについて行っている。

 流石にフルコンボとはならないものの、八割くらいは叩き切ったようだ。


「クリアだドン!」とアイリスを褒める音声が流れる。


「思ったより難しかったわ。ちょっと舐めてたわね」


「いやいや、初めてでここまでできるのは凄いと思うぞ」


 アイリスは謙遜しているそぶりを見せつつも、その顔は得意げだ。

 俺はそんな彼女を少し困らせてやりたいと思った。


「……実はもっと難しくもできるんだぜ。まあ、流石のアイリスでもそれは無茶か」


「聞き捨てならないわね。このアイリスちゃんにかかれば、どれだけ難しくても造作も無いわよ」


 俺の挑発にまんまと乗ってきた。

 こういうところはわかりやすい。


 俺は太鼓の縁を何度も叩き、鬼モードを起動させた。

 譜面は、常人の目では追えない弾丸のような速度で流れてくる。


「ちょっと、何よコレ!」


「わははは!」


 二人仲良くクリア失敗となった。


「今のは間違いだわ! もう一回やるわよ!」


 その後もアイリスは繰り返し挑戦したが、鬼モードには手も足も出ない。

 収まりが効かないので、別のゲームへ案内することにした。


「ほら、あれも面白そうだぞ」


「……納得いかないわ。このあたしが上手くいかないなんて」


 こりゃ、思ったより引きずりそうだ。


 家でもできるようにアプリのダウンロードを用意してやるか。


───


「よおっし、俺の勝ち!」


「くっそ! ほぼ一位キープしてたのに!」


 ゲームセンターの一角。レースゲームの筐体が轟音を立てている。

 横に並んだシートに腰掛けた三人の男子達は、真剣な顔でハンドルを握りしめていた。


「そろそろ別のとこに行こうぜ」


「……ちょっと待て。あいつ、鷹見じゃね?」


 一人が見知った顔を見つけたと思うと、そこには衝撃的な光景があった。

 蓮の隣を、アイドルかと見紛うほどの美少女が歩いているからだ。

 しかも様子を見ると、親しい関係であることが窺える。


「マジかよ……めちゃくちゃ可愛いぞ、あの子」


「まさか……鷹見の彼女かよ?」


「おい、お前ら行くぞ!」


 彼らは、レースゲームを後にして蓮を追いかける。


「鷹見ぃ!」


 声に対し、二人は同時に振り返る。

 少女は近くで見るとますます美少女だったし、その隣にいたのは間違いなく鷹見蓮だった。


「お前らも……ここに来てたのか」


「どういうことだよ、鷹見ぃ! お前には近藤がいるだろうがぁ!」


「それを……こんな可愛い子とデートするなんてぇ!」


 三人の同級生は、血の涙を流している。


「うるせーな! 別に近藤とはそんなんじゃねーって、何回も言ってるだろうが!」


「じゃあ……本命はこの子!?」


「お嬢さん……こいつの彼女さんなんですか?」


「えっとぉ……」


 アイリスは蓮の顔を見て、恥ずかしそうにはにかむ。


「それはぁ……蓮君から言ってほしいっていうかぁ」


 アイリスは蓮にパスを出した。


(おい、なんでそんな曖昧な言葉を出すんだ?)


「……別に、お前たちが思っているような関係じゃないぞ」


 そう話した瞬間、アイリスの表情が曇る。


「……酷いわ、蓮君。あたしとは遊びだったの?」


 小さく肩を震わせ、伏せた瞳に影を落とす。

 その姿は、どこから見ても傷ついた少女だった。


「お、おい鷹見!」


「信じられねぇ。こんな可愛い子の何が不満だお前!」


「最低だなお前! この悪魔!」


 蓮は責め立てられ戸惑っていると、アイリスが泣いたフリをしながら小さく舌を出していることに気がついた。


(悪魔は……俺じゃなくてこいつじゃねーか!)


 三人からの追及は、しばらく続いた。


「覚えてろよ鷹見! お前らのことは学校中に広めとくからな!」


「覚悟しとけよ!」


 そう言い残して、三人は嵐のように去っていった。


「……おい、なんではっきり否定してくれなかったんだ?」


「あんたなんかがこんな美少女を振るなんて、許されるわけないじゃない。生意気なのよ」


 そう言ってアイリスはイタズラっぽく笑う。


 くそ、こいつ絶対楽しんでやがる……。

 週明けに学校に行った時は、かなり面倒くさくなっている事を覚悟する必要がありそうだ。

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