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共闘の約束 戦いは新たなるステージへ

「あなた方の力を見せて頂きました」


 シルエナは最初から今まで、まるで動じない。

 これが予定調和されていたかのように。


 こいつ、初めから俺たちを倒す気は無かったってことか?


「あんた、何がしたかったんだ? 今の戦い、まるで俺たちを導いているようだった」


「勝手ながら、見定めさせて頂いたのです。あなた方が、わたくしたちの力として足り得る者たちなのかを」


 俺たちが、こいつらの力になれるかだって?


「気に入らないわね。あんた、上からあたしたちを試してたってわけ?」


 アイリスの言葉には反感が現れている。


「気を悪くされたのであれば申し訳ありません。わたくしたちは求めているのです。力を合わせてクイーンズクレストを乗り越えることができる同志を」


 つまり、手を組む価値があるかどうかを確認していたってことか?


「ご存知だと思いますが、世界には三大勢力が存在しており、生半可な戦力では太刀打ちすることはできません。彼女たちの軍門に降らないのであれば、我々も徒党を組む必要があるのです」


 シルエナは言葉を続ける。


「わたくしは、まず日本で背中を預けられる同志を集めることにしました。この北海道で勝ち残ってきたあなた方にも、白羽の矢を立てたというわけです」


「……ってことは、お前は北海道の外から来たですか?」


「その通りです。わたくし達は、東京から来ました」


 フィアの質問により、彼女たちの正体が明らかになる。

 本州で勝ち続けてきた猛者。それがシルエナたちだったのだ。


「……それで、俺たちはあんたのお眼鏡に叶ったのか?」


「はい。危ういところは感じましたが、わたくしの求める水準には達していると言って良いでしょう」


「……やっぱり上からじゃない。なんだかムカつくわね」


 この話が始まってから、アイリスの不機嫌は続いている。


「そう怒るなよ、お嬢ちゃん。あんたの植物呪文、イカしてたぜ?」


「あら、あんたわかってるわね」


 煌夜の言葉によって機嫌を直す。

 こいつ、結構単純だな。


「あなたは僕たちが力を発揮できるように導いていたんですね」


 リヴの言葉をきっかけにして、俺は今起こった戦いを脳内で振り返った。


 たった一戦で、近藤のガントレット、俺のサークレット、フィアとリヴには新呪文が身についた。

 しかもリヴは二つだ。


「鷹見蓮。あなたに欠けているものは見つかりましたか?」


 シルエナの問いに、俺は唇を噛み締める。

 そして、自分の抱えてきた問題に正面から向き合った。


「……俺は弱い。だから必死で強くなろうとしてきた。そうじゃないと、こいつらのそばにいられないような気がして」


「……そんなわけありません!」


 リヴが力強く否定する。

 だが俺は構わず言葉を続ける。


「でももしかしたら、強がるだけじゃなく、もっと頼っても良いのかって考えたら……リヴが新しい呪文で力を貸してくれたんだ」


「……正解です。あなたは、人を頼るということが随分下手なようですね」


 シルエナは静かに、満足そうに笑った。


「クイーンズクレストは、どれだけ騎士が強かろうと、王女が強かろうと、それだけではダメなのです。一人で戦おうとする者には限界が訪れる」


 確かに、それを俺はこの戦いで痛感した。


「王女は騎士を、騎士は王女を信じる。それこそがこの戦いの力の源。信頼こそが、お互いを成長させる鍵なのです」


 思えばソルブレイドが発現した時も、リヴに戦いを任せるという信頼を預けた時だった。

 今まで俺に新しい力が宿った時も、きっと彼女が俺のことを信じていてくれていたんだ。


「もし、あたしたちがあなたの求める水準に満たなかったらどうしてたんですか?」


「その時は、容赦なく宝玉を砕かせて頂く予定でした」


 近藤の疑問に、にべもなく答える。


 何度か本気でやられると感じた。

 シルエナのお眼鏡に叶わなければ、今頃俺は騎士としての力を奪われて倒れていたんだろう。


「まずはこの国内の統一を。三大勢力への挑戦はそれからです。わたくしは信頼できる同志集めを続けます。皆様も力を蓄え、時期がくれば共に戦ってください」


 共闘を約束して、シルエナたちは去っていった。


 結局、彼女がこの戦いで使った呪文は一つだけ。

 四人目の騎士もまともに戦っていない。

 本気で来られていたら、俺達は負けていたかも知れない。


「……世界には、まだまだ強い王女たちがいるんだろうな」


 あんなに強い王女でも徒党を求めている。

 これからの戦い、それだけキツくなってくるってわけか。


 でも、みんなの顔には不安は無い。

 まだ実感が湧かないのかも知れない。


 でもきっと、それだけじゃない。

 まだまだ俺たちは強くなれるって、信じているから。


 俺とリヴは、どちらともなく自然と笑い合っていた。

 フィアも、近藤も、満ち足りた顔をしていた。


 しかし、ただ一人。

 アイリスだけが最後まで浮かない表情を変えなかったことに、俺は気づいていなかった。

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